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15話 悲しい神は反射する
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反射の神シーミナか……。
そんな神もいるんだな。
「この神がどうかしたのか?」
グラは絵に手を当てたまま全く離そうとしない。
グラとこの神は、何か深い関係があったのか?
他のページは面白そうに読んでいただけなのに、この神だけ全然反応が違う。
なんというか……少し悲しそうだ。
顔は微笑んでいるのに、目が泣いているというか、なんというか……。
「シーミナは悲しい神だった」
グラは突如口を開き、俺に話し始めた。
「悲しい神?」
「あぁ……。シーミナはここに書かれている通り、反射の神で余は弟のように可愛がっていた。そして、余にも引けを取らない強さの神のはずだった」
はずだった、という言葉に俺は引っかかった。
つまり、なんらかの原因があって弱くなったってことか?
でもグラが最初に言っていた、悲しい神ってどういう意味なんだろう。
「余は破壊と創造の力をうまく扱うことが出来る」
「それが担当みたいなんだから、扱えるのは当たり前なんじゃないのか?」
「そう。本来は扱えるのは当たり前だ。だが、シーミナはそれが出来なかった。常に反射を発動している状態で、自分で抑えられていなかった」
「グラが常に破壊を発動している感じか?」
「その通りだ」
それは大変そうだな……。
でも、ずっと反射が使えるんだったら攻撃を受けることはなくないか?
反射だったら全て跳ね返してしまうんだし。
最強だな。
「反射を常に発動しているということは、攻撃を全く受けない。だが、誰にも触れられることが出来ない」
「それは……」
「悲しい神だろ。一生誰にも触れることも、触れられることもできない。だからシーミナは、抱きしめられたことがない」
グラの顔から微笑みが消え、少しめくったページをめくり俺に見せてきた。
闇の神フネアス……なんか誰かに似てるなぁ……。
誰だっけ?
「だが、どうにかしてシーミナの力が抑えれるように、闇の神フネアスは考え続けた。色々考え、何度もシーミナに抱きしめに行った。だが……何百回、何千回と試そうと、フネアスが触れることは出来なかった」
誰にも触れることの出来ない苦しさは、俺には到底わからない。
喜び合って肩を組んだりハイタッチしたり、握手をしたりちょっかいをかけたり。
そうしたことが全て出来なくなるなんて、ただただ苦しく、寂しい。
「それで今もシーミナはいるのか」
俺に質問にグラは縦に首を振らず、ゆっくりと横に振った。
「シーミナは……もういない。それに、フネアスも……」
「そんな……」
「何百年も前、シーミナの反射の力が暴走してしまい、誰も手を付けられない状況になった。余やヘルラレン、ジューザラスも駆けつけて力を抑えようとしたがどうすることも出来なかった。だが、フネアスは違った」
グラは話を続けたまま、開いていた本を静かに閉じた。
「皆は近寄れずにいた。余も含めてな。でもフネアスは違った。誰も近寄れずにいたシーミナに走って駆け寄り、抱きついた」
「でも、反射されるんだろ?」
「勿論反射される。だが、シーミナは何度も何度も抱きしめにいき、そして弾き飛ばされた。体はボロボロになり、皆は必死に止めたが、それでもフネアスは諦めなかった」
グラの瞳に映るのは、悲しみな悔しさ、そして怒りだった。
「そして、反射の力をに耐えきれず、シーミナの体は崩壊を始めた。だが、それでもフネアスは諦めなかった。ぼろぼろになった体を奮い立たせ、その場から駆け出しシーミナに抱きついた」
「でも……反射されちまうんだろ?」
「確かにフネアスは反射された。だが、弾き飛ばされることもなかった」
「反射されたのに、弾き飛ばされなかった……」
「不思議でしかない。フネアスの体はシーミナに触れられていなかった。だが、弾き飛ばされない。つまりフネアスは、あの強力な反射の力を抑え込んでいたってことだ」
反射の力を抑えることは、3大神でさえすることが出来なかったことだ。
それを1人でしてしまった闇の神フネアスが、無事でいられるわけもなかった。
「シーミナの崩壊は止まることなかった。そして、フネアスの崩壊も始まってしまい、シーミナとフネアスはその場から姿を消した」
グラは閉じた分厚い本を手に持つと、すぐ後ろにあった本棚にしまった。
「余は神界でも人間界でも最強の神と謳われているが、余は弱い。2人の神も救えないで最強な訳がない。余は弱い神だ。あの時、余も崩壊するのが怖いなどと思ってしまったからな」
今のグラの瞳には、怒りだけが残っている。
助けることが出来なかった自分に、怖がってしまった自分自身に向けた怒り。
「余のような神が最強神と呼ばれるなど、なんか馬鹿げているな」
グラは暗い雰囲気にならないように気を使ったのか、俺に笑顔を向けてきた。
だが、その顔は全く笑えていない。
グラのその怒りの瞳と悲しそうな顔を見て、俺は何もいうことが出来なかった。
そんな神もいるんだな。
「この神がどうかしたのか?」
グラは絵に手を当てたまま全く離そうとしない。
グラとこの神は、何か深い関係があったのか?
他のページは面白そうに読んでいただけなのに、この神だけ全然反応が違う。
なんというか……少し悲しそうだ。
顔は微笑んでいるのに、目が泣いているというか、なんというか……。
「シーミナは悲しい神だった」
グラは突如口を開き、俺に話し始めた。
「悲しい神?」
「あぁ……。シーミナはここに書かれている通り、反射の神で余は弟のように可愛がっていた。そして、余にも引けを取らない強さの神のはずだった」
はずだった、という言葉に俺は引っかかった。
つまり、なんらかの原因があって弱くなったってことか?
でもグラが最初に言っていた、悲しい神ってどういう意味なんだろう。
「余は破壊と創造の力をうまく扱うことが出来る」
「それが担当みたいなんだから、扱えるのは当たり前なんじゃないのか?」
「そう。本来は扱えるのは当たり前だ。だが、シーミナはそれが出来なかった。常に反射を発動している状態で、自分で抑えられていなかった」
「グラが常に破壊を発動している感じか?」
「その通りだ」
それは大変そうだな……。
でも、ずっと反射が使えるんだったら攻撃を受けることはなくないか?
反射だったら全て跳ね返してしまうんだし。
最強だな。
「反射を常に発動しているということは、攻撃を全く受けない。だが、誰にも触れられることが出来ない」
「それは……」
「悲しい神だろ。一生誰にも触れることも、触れられることもできない。だからシーミナは、抱きしめられたことがない」
グラの顔から微笑みが消え、少しめくったページをめくり俺に見せてきた。
闇の神フネアス……なんか誰かに似てるなぁ……。
誰だっけ?
「だが、どうにかしてシーミナの力が抑えれるように、闇の神フネアスは考え続けた。色々考え、何度もシーミナに抱きしめに行った。だが……何百回、何千回と試そうと、フネアスが触れることは出来なかった」
誰にも触れることの出来ない苦しさは、俺には到底わからない。
喜び合って肩を組んだりハイタッチしたり、握手をしたりちょっかいをかけたり。
そうしたことが全て出来なくなるなんて、ただただ苦しく、寂しい。
「それで今もシーミナはいるのか」
俺に質問にグラは縦に首を振らず、ゆっくりと横に振った。
「シーミナは……もういない。それに、フネアスも……」
「そんな……」
「何百年も前、シーミナの反射の力が暴走してしまい、誰も手を付けられない状況になった。余やヘルラレン、ジューザラスも駆けつけて力を抑えようとしたがどうすることも出来なかった。だが、フネアスは違った」
グラは話を続けたまま、開いていた本を静かに閉じた。
「皆は近寄れずにいた。余も含めてな。でもフネアスは違った。誰も近寄れずにいたシーミナに走って駆け寄り、抱きついた」
「でも、反射されるんだろ?」
「勿論反射される。だが、シーミナは何度も何度も抱きしめにいき、そして弾き飛ばされた。体はボロボロになり、皆は必死に止めたが、それでもフネアスは諦めなかった」
グラの瞳に映るのは、悲しみな悔しさ、そして怒りだった。
「そして、反射の力をに耐えきれず、シーミナの体は崩壊を始めた。だが、それでもフネアスは諦めなかった。ぼろぼろになった体を奮い立たせ、その場から駆け出しシーミナに抱きついた」
「でも……反射されちまうんだろ?」
「確かにフネアスは反射された。だが、弾き飛ばされることもなかった」
「反射されたのに、弾き飛ばされなかった……」
「不思議でしかない。フネアスの体はシーミナに触れられていなかった。だが、弾き飛ばされない。つまりフネアスは、あの強力な反射の力を抑え込んでいたってことだ」
反射の力を抑えることは、3大神でさえすることが出来なかったことだ。
それを1人でしてしまった闇の神フネアスが、無事でいられるわけもなかった。
「シーミナの崩壊は止まることなかった。そして、フネアスの崩壊も始まってしまい、シーミナとフネアスはその場から姿を消した」
グラは閉じた分厚い本を手に持つと、すぐ後ろにあった本棚にしまった。
「余は神界でも人間界でも最強の神と謳われているが、余は弱い。2人の神も救えないで最強な訳がない。余は弱い神だ。あの時、余も崩壊するのが怖いなどと思ってしまったからな」
今のグラの瞳には、怒りだけが残っている。
助けることが出来なかった自分に、怖がってしまった自分自身に向けた怒り。
「余のような神が最強神と呼ばれるなど、なんか馬鹿げているな」
グラは暗い雰囲気にならないように気を使ったのか、俺に笑顔を向けてきた。
だが、その顔は全く笑えていない。
グラのその怒りの瞳と悲しそうな顔を見て、俺は何もいうことが出来なかった。
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