上 下
14 / 54

14話 図書館に行って

しおりを挟む
 「ここが余の家か」
 「てめぇだけの家じゃねぇわ」

  俺たちは買った家の前に立ち、その大きさに足を止めていた。
 あの後宿に戻って話し合い、どんな家にするか決めたのだ。
 今現在5人で、もしかしたらこれから増えるかもしれないという可能性があり、そこそこ大きな家を買うことになった。
 この家は20ほど部屋数があり、一つ一つの部屋が大きいため、今はどれだけ使っても全然余るはずだ。
 しかし、その分金額は高かった。

 「この家っていくらしたんだっけ?」
 「48万セリンだけど」
 「は!?」
 「高い……」

 4人は俺の顔を見ながら唖然としている。
 前もって伝えておいたはずなんだけどな。
 これからは、最低2回は確認するようにしないといけないな。

 「でも、今更気にしたって仕方がない。早く中に入ろ」

 俺は扉に手をかけて開いた。
 変な音を立てることなくスムーズに開き、家の中を明らかにした。
 この家は2階建てになっていて、奥の方の階段がある。
 
 4人は俺に続いて入ってきて、それぞれ感心する声を上げた。

 俺はリビングに移動すると、そこは大人数でパーティーが出来るほど広い大きさだった。

 「ここ俺の部屋な」
 「いや、ここはリビングだから」
 「あぁ! 文句あんのか!」

 流石にこの部屋をジューザラスに渡すわけにはいかない。
 この次に大きい部屋を渡すか……。

 「おい。この家は何もないぞ。これでは余が暮らせないではないか」

 当然ながら、この家に家具はまだ一つも置いていない。
 そのため、これから買いに行かなくてはいけないのだ。
 
 でも、まだ1万セリン以上残ってるから、高すぎる家具を買わない以外お金に困ることはない。

 「余、寝たい」
 「家具買いに行くか」

 そうして俺たちは、それぞれ分かれて家具を買いに行くことになった。





 「余はまず、寝具を買いに行こうと思う」
 「ダメだ。俺たちの担当は椅子とか机だ」
 「むぅー」

 俺はグラと2人で家具を買いに来ていた。
 さっきからグラは、絶対に必要のない物ばかり買おうとするから、抑えるのに苦労してしまう。
 
 「ん? あそこはなんだ?」
 
 グラは急に立ち止まり指を指していた。
 指された場所を見ると、そこは俺が暇な時に行っていた図書館だった。

 「あそこは図書館だ。行きたいのか?」
 「余が載ってる本はあるか?」
 「結構あるんじゃないか?」
 「早く入ろう」

 グラは俺を置いていき、凄い笑顔で図書館に入って行ってしまった。
 
 あいつもしかして、グラティオラスは男って書かれてること忘れてるのか?
 だとしたら、なんか可哀想だな。
 でも、仕方ないか。
 結局は人間の想像なんだし。
 もし機嫌が悪くなってたら、なんとかして宥めるしかないよなぁ……。

 俺はグラの機嫌の直し方を色々考えながら、後を追って図書館に入った。

 


 うげっ、もう本を見つけてやがる。
 
 グラは本を机に置きながらページをめくっていて、少し機嫌が悪そうだ。
 
 「もう見つけたのか」

 俺はグラに近づいて声をかけた。
 本から俺に視線向けると、少し眉間に皺を寄せた。

 「この本に余が男って書いてあるぞ」
 「それ俺がこの前言っただろ? もしかして忘れたのか?」
 「忘れた」
 
 覚えていてくれたら、機嫌の悪さが軽減されたかもしれないのに……。
 
 グラは俺から視線を本に戻し、何かブツブツ文句を言いながらページをめくっていった。
 俺も適当に読んだから、ほとんど内容を忘れてしまっていた。

 こうやって意識して読んだら、結構色々な神がいるんだな。

 天の神や霧の神、陽の神、守の神など沢山いる。
 所々意味がよくわからない神がいるが、気にするのはやめよう。

 「あ……」

 グラはぽつりと声をこぼし、ページが捲る手が止まった。

 「どうした?」

 そこのページには変わったことはなく、他のページと同じように神の説明が書かれているだけだった。

 その神の名は……

 「シーミナ……」
 
 グラは昔を思い出すように目を細めて微笑むと、その神の絵に手を当てた。
 そのページの左上には、反射の神と書かれていた。
 
しおりを挟む

処理中です...