スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

34話 抱きしめる

　は……？
　ヘルラレンは……何を言ってるんだ……？

　「ヘルラレン……それは一体どういうことだ……？」

　俺の疑問と同じことを、グラは震える声をなんとか抑えるようにして、そうヘルラレンに向かって言った。
　そして、ヘルラレンの言葉に反応したのはグラだけではなかった。

　「シーミナ……いるの……？」
　「そんなわけねぇだろ。あいつは……あいつらは確かにあの時……消滅したんだからな」

　ルーレルが微かに抱いた希望をジューザラスは切り捨てるように言い放つと、俺を見続けるヘルラレンに数歩近づいた。

　「テメェ……結局何が言いてぇんだ」
　「何ってどういうことかな？」
　「そのままの意味だろ！　シーミナとフネアスはあ・の・時・消滅した！　それなのにシーミナの魂があるだぁ？　ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ！」

　ジューザラスは今までにない程の怒りをあらわにして、表情を変えずに立っているヘルラレンの胸ぐらを思い切り掴んだ。

　「私は何もふざけてないよ。本当にあるんだ。ライの中にね」

　俺の中にシーミナの魂が……？
　
　俺は自分の胸に手を当ててみる。
　しかし、そんなことをしたところで特別何かが分かるわけでもない。
　ただ1つ分かるのは、心臓が鼓動してライという俺・が生きているということだけだ。
　
　俺の魂が反射の神シーミナの魂……。
　つまり……俺がシーミナの生まれ変わりってことか？

　「ジューザラス様……手を離した方が……」
　「ルーレルは黙ってろ！」

　ルーレルは2人の争いを止めに入ろうとするが、鋭い声で怒鳴られてしまい体を大きく震わせた。

　「ライがグラの攻撃を跳ね返したことは分かる。だけどなぁ！　どうしてそれがシーミナに繋がるんだ！　あいつは消滅してもうどこにもいな――」
　「だからねジューザラス。シーミナはいるんだよ。だからね、いい加減手を離してもらおうかな」

　あ……ちょっとこれはまずいんじゃないか？
　今にも2人が戦いを始めそうな雰囲気だし……。
　
　グラはどうするのか気になり視線を移してみるが、グラは下を向いてしまっていて動く様子がない。
　ルーレルも怯えてしまい止めることが出来なさそうだ。

　こうなったら俺が止めに入るしかないか……。
　でもまた意味の分からないことが起こって、2人を傷つけてしまったら――。

　「お前……シーミナか……？」

　しかし、そんな俺の不安もグラの一言により意味のないもののとなった。

　「テメェまで……」
　「余は確かに見えた。シーミナがはっきりと」
　「クソッ……」

　ジューザラスは未だ理解ができてない表情をしながらも、ヘルラレンの胸ぐらから手を離して向き合った。

　「グラティオラスまで言い出しやがったんだ。もう信じるしかねぇだろ。だからよ、一体どういう事なのか俺にわかりやすく説明してくれよ」
　「ふふふ、いいよー。結論から言うと、ライはシーミナの生まれ変わりって事だね」
　「はぁ……急な展開過ぎて何にもついていけねぇ」
　「今のライにはシーミナの時の記憶はない。だけど、シーミナの魂であることは間違いないよ」

　俺が……反射の神シーミナの生まれ変わり……。
　ということは、俺は遠い昔にこの4人と会ったことがあるってことだよな……。
　なんか不思議だな。
　記憶はないけど昔一緒にいたって。
　もし昔の記憶が戻っていたら、今の俺はどんな風に思ったのかな。
　記憶が戻ったら俺は俺でなくなるかもしれないけど、そうしたらグラ達は喜――。

　そんなことを考えて、どうにかして昔のことを思い出そうとしていたら横から突然抱きしめられた。
　
　「え？　グラ……？」
　「おい、今一体何をしようとしていた」
　「何って……昔の記憶を思い出そうと――」
　
　俺がそこまで言いかけたところで、グラは抱きしめる力を少し強くした。

　「グラ……？」
　「余達がシーミナに再会出来たことは奇跡だ。そして今、こうして昔できなかった事をする事が出来ている。だが、今余が抱きしめているのは誰だ」
　「えっと……それはどういう……」
　「誰だ」
　「ライ……サーベルズ？」
　「そうだ。お前はライ・サーベルズ。反射の神シーミナではない。余達はシーミナといるわけではなく、ライといる。今も、これからも。だからライはずっとライでいてくれ」
　
　ああ……温かい。
　抱きしめてもらうって、こんなにいい事なんだな……。

　どうだ？　
　シーミナ。
　これが抱きしめてもらうって事だ。
　温かいな。

　俺はシーミナに言葉を送りながら、目の前にいる神をそっと抱きしめ返した。