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43話 堕天使へ
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凄まじい音と衝撃が走り、その場にいた者たちは何が起こったのか理解できず、ただ呆然としていた。
何が起こった……?
俺に視界は地面から少しずつ上がっていく。
……マジかよ……。
俺が見ている光景を簡単に伝えるならば、悲惨。
ただそれだけだ。
胴体から千切れた手足がそこら中に散らばり、血で染まった頭部が転がったりもしている。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なんだよこれぇ!!!」
「まだ死にたくない!」
すでに戦場はパニック状態だ。
急な出来事なだけに、冒険者達は剣を落としながら後方に逃げ、騎士達の陣形も崩れてしまっている。
だがどうしてだろうか。
俺はこの場の惨劇が全く気にならない。
足元に転がる頭部さえも。
俺の体は動かない。
恐怖のせいではない。
目の前にいる人物に動揺しているのだ。
その人物こそ、一瞬にしてこの場を惨劇を招いた犯人だ。
その人物の名は、ハーシュ。
「流石だな。闇の神フネアス」
宙に浮いているグラデラは、変わり果てたハーシュに凶悪な笑みを向けた。
ハーシュの瞳は紫に染まり、背中からは巨大な翼が生えていた。
黒の翼を生やすその姿は堕天使そのものだ。
「貴様ぁ……! フネアスの魂に何をしたぁ!」
ヘルラレンは見た事がない程激昂し、水で生成した剣をグラデラに向かって放った。
一直線に向かっていき首に刺さる。
直前で剣は弾き飛ばされた。
「グラデラ様には触れさせない」
「水の神ヘルラレン。お前の相手は俺たちで十分だ」
両手に剣を握る悪魔はヘルラレンに向かって斬りかかる。
「ちっ! 上級悪魔か!」
すでに俺の周りでは戦闘が始まっていた。
ジューザラスも上級悪魔2体を相手にしているようで、苦戦を強いられている。
「お前案外強いね。そういえば顔見たことあるな」
「黙れサファリ。戦いに集中しろ」
「うるさいなぁ。別に良いじゃん集中しなくても」
「おいおいおい……! 俺を相手にしておいて悪魔同士で喧嘩ってよぉ……本気で死にてぇらしいなぁ!
あぁ!?」
ジェネラル達もリリルを含めて6人で2体の上級悪魔を相手にしている。
だがそれでもだいぶキツそうだ。
だが俺の体は動かない。
目の前で翼を広げるハーシュも、俺をジッと見つめたまま動こうとしない。
「今考えたら……おかしい……」
体を元のサイズに戻し、グラと共に下級悪魔狩りをするシェラレイを見ながら、ルーレルはそう静かに呟いた。
「何がおかしいんだ?」
「上級悪魔は全て封印していたはず……。それなのに……勇者のハーシュが連れ去られて……グラデラが復活した……」
「……つまり下級悪魔しかいないのにハーシュが連れ去られるのはおかしいってことか?」
「そう……」
「じゃあどうやってハーシュは連れ去られ――」
「答えは簡単だ」
俺の言葉を遮るようにして、突如としてハーシュの隣に一体の老人悪魔が現れた。
髭を生やして顔も皺ついている。
それであるのにも関わらず、他の悪魔と雰囲気が別格だ。
一歩行動を間違えたら死ぬ。
直感的にそう感じた。
ルーレルも同じことを感じたのか、老人悪魔が現れた瞬間から全く動かず一筋の汗を流した。
「お前は……レレファス……」
「この悪魔を知ってるのか?」
「こいつは……上級悪魔の中で1番強い……」
「ほう。知っているのか」
「私もお前達を封印した……。それなのに……どうして……」
「どうして闇の神の魂が攫われ、私達が復活しているのか、と聞きたいか?」
レレファスと呼ばれた悪魔は顎髭を撫でながら、小さく笑った。
「フフフフ……。理由は簡単だ。私達が封印されていなかったのだよ」
「……! そんなわけない……! だってちゃんと……」
「ちゃんと封印した? 確かにそうだな。封印されたのは7体だけだがな」
その言葉を聞いた途端、ルーレルの顔は絶望へと変わった。
ルーレルの中で全ての理由が解けたのだ。
何故ハーシュが連れ去られ、上級悪魔達が復活し、グラデラも復活してしまったのか。
この謎の答えは、神たちのミスから始まったのだ。
ルーレルは今までに見た事がない程焦っていた。
シェラレイとの戦いでも一切焦らなかったルーレルが、今、汗を流して焦っているのだ。
「光剣の薔薇」
俺の視界に幾つもの光が集まっていき、無数の剣を形作る。
そしてルーレルが手を前に出すと、それに従うかのように剣達はレレファスに向かっていく。
だが……。
「結局はこんなものか」
剣を引き抜き横に一閃すると、高速で動いていた剣はちりじりになり消えていった。
「フネアス。やれ」
グラデラからハーシュに向けて指示が飛ぶ。
その指示に一切反抗することはなく、ハーシュは俺達に向けて巨大な闇の球体を放ってきた。
ようやくそこで体が動き、俺は剣を引き抜いた。
俺の剣とルーレルの剣が球体に触れて、少し動きが止まる。
なんだよこれ……!
重すぎるだろ……」
全く、押し返せない……!
俺とルーレルの体は後ろへと押されていき、そのまま押し負け後方に吹き飛ばされた。
「いたっ!」
俺は悪魔と戦闘をしていた騎士に直撃し、地面を蹴られた石のように転がった。
あれは本当にハーシュなのか……?
俺はあいつを……ハーシュを救えるのか……?
ハーシュと目があった時、俺は直感的に思ってしまった。
この目はハーシュの目ではないと。
もうあの頃の俺を守ってくれていた時の目ではないと。
だからといって救うのを諦めるのか?
それは絶対にない。
何故なら神達はまだ誰も諦めていない。
グラだってまだ――。
「……!」
俺の視界にはグラが映った。
さっきと変わらず、下級悪魔達を殺し続けている。
しかしその目には光がない。
ただ任された仕事をこなす人形のようだ。
「危ない!」
そのグラの異変を悪魔達は見逃さなかった。
背後から3体の上級悪魔が接近していたのだ。
こんな戦場で俺の声が届く訳がない。
悪魔達はそのまま静かに接近して、一本の剣を先をグラの背中に向けた。
悪魔は不気味に笑う。
そしてその剣はグラに突き立てられる――はずだった。
あれ……?
一瞬どうなったのか分からなかった。
だが徐々に脳が理解していった。
上級悪魔達の全身が破裂して、その場から跡形もなく消え去ったということを。
「所詮は上級悪魔だな。この程度で死ぬとは」
グラは一瞬にして上級悪魔を3体殺したのだ。
その事実にレレファスさえも、目を見開いて驚いている。
「久しぶりだなグラデラ。そしてさようなら」
グラは地面を強く踏み込み、グラデラの目の前まで一瞬で移動した。
「名前が似た者同士仲良くしようじゃないか」
「それは死んでも了承できない提案だな」
グラはグラデラの首を掴むと、空中で一回転してその勢いで地面に叩きつけた。
ようやくグラとグラデラの戦いが始まった。
多分グラデラを倒せるのはグラしかいない。
それに俺もあまりグラを気にしている余裕がない。
「ハーシュ……!」
どうにかしてハーシュの暴走を止めなくてはいけない。
でもどうやって?
俺にはハーシュを救い出す方法が分からない。
俺がどれだけ救い出す方法を考えていようと、ハーシュの暴走は一向に止まらない。
俺にぶつけてきた巨大な紫の球体を、今度は10個作り出すと、それを騎士や冒険者達に向けて全て放った。
その紫の球体は地面に衝突すると、さっきとは違い落雷のように強い光を放つと、轟音を放ちながら弾け飛んでいった。
その爆発に飲み込まれたものは、まるで雷にでも打たれたかのようの痙攣すると、白目を剥いて倒れた。
それにしても俺達は押され過ぎている。
上級悪魔を相手にしているのはジューザラス達で、騎士達や冒険者は下級悪魔しか相手にしていなかった筈だ。
確かに数では負けているが、ドラウロ達がいればここまで押されるはずがない。
なのにどうして――。
だがそこで俺は気付いた。
さっきから勇者達の姿が見えない。
それに国王の姿も。
まさか逃げたのか……?
俺の脳裏にはそんな最悪なことが浮かび上がった。
もしそれが事実であるなら、これ程押されてしまっているのも理由がつく。
勝つことは出来るのか……?
俺はハーシュを救い出す事しか考えてしなかったが、悪魔達が勝利してしまえば元も子もない。
だったら俺は今何をすべきか。
そんな事はすでに決まっている。
勇者として守るべきものを守り、ライ・サーベルズとしてハーシュを助ける。
剣を握り直し、背後から殺そうとしていた下級悪魔を容赦なく斬る。
さらに俺は近くにいた悪魔を斬ると、また別の悪魔に向かって剣を振った。
俺は勇者だ。
守るべきものを忘れるな。
そして悪魔を殺すために剣を振り続けながら、翼を生やす堕天使へと足を進めた。
何が起こった……?
俺に視界は地面から少しずつ上がっていく。
……マジかよ……。
俺が見ている光景を簡単に伝えるならば、悲惨。
ただそれだけだ。
胴体から千切れた手足がそこら中に散らばり、血で染まった頭部が転がったりもしている。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なんだよこれぇ!!!」
「まだ死にたくない!」
すでに戦場はパニック状態だ。
急な出来事なだけに、冒険者達は剣を落としながら後方に逃げ、騎士達の陣形も崩れてしまっている。
だがどうしてだろうか。
俺はこの場の惨劇が全く気にならない。
足元に転がる頭部さえも。
俺の体は動かない。
恐怖のせいではない。
目の前にいる人物に動揺しているのだ。
その人物こそ、一瞬にしてこの場を惨劇を招いた犯人だ。
その人物の名は、ハーシュ。
「流石だな。闇の神フネアス」
宙に浮いているグラデラは、変わり果てたハーシュに凶悪な笑みを向けた。
ハーシュの瞳は紫に染まり、背中からは巨大な翼が生えていた。
黒の翼を生やすその姿は堕天使そのものだ。
「貴様ぁ……! フネアスの魂に何をしたぁ!」
ヘルラレンは見た事がない程激昂し、水で生成した剣をグラデラに向かって放った。
一直線に向かっていき首に刺さる。
直前で剣は弾き飛ばされた。
「グラデラ様には触れさせない」
「水の神ヘルラレン。お前の相手は俺たちで十分だ」
両手に剣を握る悪魔はヘルラレンに向かって斬りかかる。
「ちっ! 上級悪魔か!」
すでに俺の周りでは戦闘が始まっていた。
ジューザラスも上級悪魔2体を相手にしているようで、苦戦を強いられている。
「お前案外強いね。そういえば顔見たことあるな」
「黙れサファリ。戦いに集中しろ」
「うるさいなぁ。別に良いじゃん集中しなくても」
「おいおいおい……! 俺を相手にしておいて悪魔同士で喧嘩ってよぉ……本気で死にてぇらしいなぁ!
あぁ!?」
ジェネラル達もリリルを含めて6人で2体の上級悪魔を相手にしている。
だがそれでもだいぶキツそうだ。
だが俺の体は動かない。
目の前で翼を広げるハーシュも、俺をジッと見つめたまま動こうとしない。
「今考えたら……おかしい……」
体を元のサイズに戻し、グラと共に下級悪魔狩りをするシェラレイを見ながら、ルーレルはそう静かに呟いた。
「何がおかしいんだ?」
「上級悪魔は全て封印していたはず……。それなのに……勇者のハーシュが連れ去られて……グラデラが復活した……」
「……つまり下級悪魔しかいないのにハーシュが連れ去られるのはおかしいってことか?」
「そう……」
「じゃあどうやってハーシュは連れ去られ――」
「答えは簡単だ」
俺の言葉を遮るようにして、突如としてハーシュの隣に一体の老人悪魔が現れた。
髭を生やして顔も皺ついている。
それであるのにも関わらず、他の悪魔と雰囲気が別格だ。
一歩行動を間違えたら死ぬ。
直感的にそう感じた。
ルーレルも同じことを感じたのか、老人悪魔が現れた瞬間から全く動かず一筋の汗を流した。
「お前は……レレファス……」
「この悪魔を知ってるのか?」
「こいつは……上級悪魔の中で1番強い……」
「ほう。知っているのか」
「私もお前達を封印した……。それなのに……どうして……」
「どうして闇の神の魂が攫われ、私達が復活しているのか、と聞きたいか?」
レレファスと呼ばれた悪魔は顎髭を撫でながら、小さく笑った。
「フフフフ……。理由は簡単だ。私達が封印されていなかったのだよ」
「……! そんなわけない……! だってちゃんと……」
「ちゃんと封印した? 確かにそうだな。封印されたのは7体だけだがな」
その言葉を聞いた途端、ルーレルの顔は絶望へと変わった。
ルーレルの中で全ての理由が解けたのだ。
何故ハーシュが連れ去られ、上級悪魔達が復活し、グラデラも復活してしまったのか。
この謎の答えは、神たちのミスから始まったのだ。
ルーレルは今までに見た事がない程焦っていた。
シェラレイとの戦いでも一切焦らなかったルーレルが、今、汗を流して焦っているのだ。
「光剣の薔薇」
俺の視界に幾つもの光が集まっていき、無数の剣を形作る。
そしてルーレルが手を前に出すと、それに従うかのように剣達はレレファスに向かっていく。
だが……。
「結局はこんなものか」
剣を引き抜き横に一閃すると、高速で動いていた剣はちりじりになり消えていった。
「フネアス。やれ」
グラデラからハーシュに向けて指示が飛ぶ。
その指示に一切反抗することはなく、ハーシュは俺達に向けて巨大な闇の球体を放ってきた。
ようやくそこで体が動き、俺は剣を引き抜いた。
俺の剣とルーレルの剣が球体に触れて、少し動きが止まる。
なんだよこれ……!
重すぎるだろ……」
全く、押し返せない……!
俺とルーレルの体は後ろへと押されていき、そのまま押し負け後方に吹き飛ばされた。
「いたっ!」
俺は悪魔と戦闘をしていた騎士に直撃し、地面を蹴られた石のように転がった。
あれは本当にハーシュなのか……?
俺はあいつを……ハーシュを救えるのか……?
ハーシュと目があった時、俺は直感的に思ってしまった。
この目はハーシュの目ではないと。
もうあの頃の俺を守ってくれていた時の目ではないと。
だからといって救うのを諦めるのか?
それは絶対にない。
何故なら神達はまだ誰も諦めていない。
グラだってまだ――。
「……!」
俺の視界にはグラが映った。
さっきと変わらず、下級悪魔達を殺し続けている。
しかしその目には光がない。
ただ任された仕事をこなす人形のようだ。
「危ない!」
そのグラの異変を悪魔達は見逃さなかった。
背後から3体の上級悪魔が接近していたのだ。
こんな戦場で俺の声が届く訳がない。
悪魔達はそのまま静かに接近して、一本の剣を先をグラの背中に向けた。
悪魔は不気味に笑う。
そしてその剣はグラに突き立てられる――はずだった。
あれ……?
一瞬どうなったのか分からなかった。
だが徐々に脳が理解していった。
上級悪魔達の全身が破裂して、その場から跡形もなく消え去ったということを。
「所詮は上級悪魔だな。この程度で死ぬとは」
グラは一瞬にして上級悪魔を3体殺したのだ。
その事実にレレファスさえも、目を見開いて驚いている。
「久しぶりだなグラデラ。そしてさようなら」
グラは地面を強く踏み込み、グラデラの目の前まで一瞬で移動した。
「名前が似た者同士仲良くしようじゃないか」
「それは死んでも了承できない提案だな」
グラはグラデラの首を掴むと、空中で一回転してその勢いで地面に叩きつけた。
ようやくグラとグラデラの戦いが始まった。
多分グラデラを倒せるのはグラしかいない。
それに俺もあまりグラを気にしている余裕がない。
「ハーシュ……!」
どうにかしてハーシュの暴走を止めなくてはいけない。
でもどうやって?
俺にはハーシュを救い出す方法が分からない。
俺がどれだけ救い出す方法を考えていようと、ハーシュの暴走は一向に止まらない。
俺にぶつけてきた巨大な紫の球体を、今度は10個作り出すと、それを騎士や冒険者達に向けて全て放った。
その紫の球体は地面に衝突すると、さっきとは違い落雷のように強い光を放つと、轟音を放ちながら弾け飛んでいった。
その爆発に飲み込まれたものは、まるで雷にでも打たれたかのようの痙攣すると、白目を剥いて倒れた。
それにしても俺達は押され過ぎている。
上級悪魔を相手にしているのはジューザラス達で、騎士達や冒険者は下級悪魔しか相手にしていなかった筈だ。
確かに数では負けているが、ドラウロ達がいればここまで押されるはずがない。
なのにどうして――。
だがそこで俺は気付いた。
さっきから勇者達の姿が見えない。
それに国王の姿も。
まさか逃げたのか……?
俺の脳裏にはそんな最悪なことが浮かび上がった。
もしそれが事実であるなら、これ程押されてしまっているのも理由がつく。
勝つことは出来るのか……?
俺はハーシュを救い出す事しか考えてしなかったが、悪魔達が勝利してしまえば元も子もない。
だったら俺は今何をすべきか。
そんな事はすでに決まっている。
勇者として守るべきものを守り、ライ・サーベルズとしてハーシュを助ける。
剣を握り直し、背後から殺そうとしていた下級悪魔を容赦なく斬る。
さらに俺は近くにいた悪魔を斬ると、また別の悪魔に向かって剣を振った。
俺は勇者だ。
守るべきものを忘れるな。
そして悪魔を殺すために剣を振り続けながら、翼を生やす堕天使へと足を進めた。
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