44 / 54
44話 覚悟を決めて
しおりを挟む
すでに何回剣を振ったか分からない。
ただひたすら剣を振り続けて悪魔達を殺し続けた。
俺はあいつの所へ行かなくてはいけない。
黒い翼を生やす堕天使のところへ。
今も尚ハーシュは、騎士や冒険者達に攻撃を仕掛け続けている。
ハーシュの攻撃を防げる者は誰もいない。
これ以上攻撃を続ければ、さらに死人が増えるだろう。
だから俺が必ずハーシュを止める。
俺はそれだけを考えて、ただひたすらに剣を振り続けた。
◇◆◇
1人は馬に乗り、他の4人は全力で走りながら戦場を背に逃げていた。
「誰が悪魔達となんか戦うかよ! あんな戦い勝てるわけねぇだろ!」
「逃げてよかったね。死んだら洒落にならない」
「お前達は正しい判断をした。あのゴミ達を使えば私達は無事逃げきれるだろう」
馬に乗って駆けながらそう余裕そうに話をするのは、他でもない戦場で戦っているはずの国王だ。
そして国王を追いかけるように走るのは、国を守るべき立場にある勇者達だった。
そう、国王と勇者達はあの戦場から逃げていたのだ。
ライの悪い予感は当たっていたようだ。
冒険者達や騎士が命をかけて戦う中、5人はただひたすら逃げ続けていた。
自分達だけが助かればいいと、そう考えて。
「でもこれからどこに向かう?」
「同盟を結んでいる国にでも向かえばいいだろ。そうすれば、向こうがどうにかしてくれるはずだ」
「確かにそうですわね。あの弱者達に任せておけば、私達は確実に勝つ為の準備を進められますわ」
国王とドラウロ達は、皆顔に最悪な笑みを浮かべて走り続けた。
己だけでも生きれれば良いと、そう考えながら。
◇◆◇
「ハーシュ……」
俺はすでにハーシュの目の前まで来ていた。
剣と服は黒色の悪魔の血で染まっている。
ハーシュは俺の姿を確認すると、巨大な矢を作り出して放ってきた。
それを俺は転がるようにして躱すと、俺の背後にいた悪魔に突き刺さった。
しかし矢はそれでも止まらず、悪魔の体を貫通して硬い鎧で身を包む騎士の胸に突き刺さり、ようやく止まった。
騎士の胸からは血が大量に噴き出し、力を失っていき横に倒れ込んだ。
俺はハーシュを救うと言った。
救うと誓った。
だけど……今は救うことを考えるべきではないのかもしれない。
俺はハーシュの救い方を知らない。
だったら今考える事はただ一つ。
ハーシュをどのようにして止めるかだ。
多分どれだけ声をかけたり攻撃をしたりしても、我を失っているハーシュが止まることはないだろう。
俺は一体どうやってハーシュを止めれば良い……。
そして俺は脳内には最悪な事が自然と浮かび上がった。
ハーシュをこの手で殺すこと。
そんな最悪な選択を脳から弾き出す為に、頭を大きく左右に振った。
だがそれでも、殺すという選択肢が頭の中に浮かび上がってしまう。
もしかしたら俺は、心のどこかでハーシュを殺すことが一番の良策だと思っているのかもしれない。
このままハーシュをどうにも出来なければ、恐らく人を殺し続ける。
もしかしたらハーシュを殺すことが、ハーシュを救う事に繋がるかもしれない。
この暴走はハーシュのせいでは全くない。
だがもしハーシュが正気に戻ったとしても、自分をずっと責め続けるはずだ。
だったらそうならない為にも、今ここでハーシュを止めるべきではないのだろうか。
俺達は圧倒的不利な状況にいる。
さっきよりも戦況は悪化し、後方にいる騎士達が破られれば、間違いなくそのまま王都は落とされる。
王都が落とされれば、勝利を信じて騎士や冒険者達を待っている民はどうなる。
少しでも勝つ可能性を上げるとすれば、ハーシュをどうにかしなければならない……。
俺は血を流し戦う者達を見回した後、ゆっくりとハーシュの方を向き目を合わせた。
ハーシュには数え切れない程の恩がある。
それを今、返すんだ。
覚悟を決めろ、ライ・サーベルズ。
深く息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
握っていた剣をもう一度持ち直し、ハーシュに向けて構えた。
「ハーシュ、今から君を殺す」
そう俺はハーシュに向けて言葉を発し、地面を強く踏み込んだ。
◇◆◇
頭から流れる血を腕で拭き、消えかかる光剣をルーレルはもう一度金の光で照らした。
「もう諦めて殺されるがいい。お前はどうやっても私には勝てん」
「それは……無理……。私は……戦う……」
「そうか。なら死ね」
レレファスは音も立てず背後に回り込むと、首を狙って剣を一振りした。
それをルーレルは間一髪のところで反応し、姿勢を低くし剣を躱すとレレファスの腹部に向けて光球を打ち出した。
「小賢しい真似を」
だがそれでも当たることはなく、背後に下がりながら光球を斬り裂いた。
レレファスは剣術において、ルーレルの技術力を遥かに凌駕している。
ルーレルが有利に立てるとすれば、光を自由に操る事なのだがそれも全て対応されてしまう。
今のままだと勝率は無いと言っても良いくらいだ。
それをルーレルは自覚している。
だがそれでも別の方法が分からないのだ。
持久戦に持ち込んだとしても、先に体力を切らしてしまうのはルーレルで間違いない。
体術も出来ないわけではないが、今使ったところで余計に不利になるだけだ。
シェラレイに助けを求めようとも、向こうも向こうで下級悪魔に手一杯のようだ。
下級悪魔でも数で来られたらどうすることもできない。
自分でこの絶望的な状況をどうにかするしかないのだ。
光の力で押し切るしかないか。
でももしかしたら、力切れを起こすかもしれない。
そうなれば……しばらく戦えない。
やっぱり剣だけで――。
しかしルーレルは頭を左右に振った。
そんな考えはダメだ。
今のこの状況を変えるには、力の出し惜しみをしてはいけない。
このままだと最悪負けてしまう可能性がある。
どうにかして持ち堪えないと……!
「光剣の薔薇……乱光桜……光雲の乱……」
力の乱用はあまり良い事ではない。
光剣は丸一日使い続けても問題はないが、光剣の薔薇、乱光桜、光雲の乱は力の消耗が大きい。
あと十回も使えば立っていられなくなってしまうかもしれない。
それでも使わないと勝てないから。
他のみんなが全力で戦ってるのに、私だけ手を抜くなんて絶対許されない……!
無数の光の剣に加え、一枚一枚がナイフのような切れ味を持つ花弁や轟音を響かせ金の光を放つ雲が、レレファスを目掛けて襲っていった。
それに合わせてルーレルも駆け出す。
光剣の束が襲い掛かるが、それでも崩れる事なく一本一本捌いていく。
だがそれだけ隙ができる。
ルーレルは間合いに入り込み、鋭い剣の先を向けた。
「甘いな」
それでもレレファスは動じる事なく、飛んでくる光剣を躱しながら、自分に向けられた剣の対応をしようとする。
だがそれでいい。
ルーレルはすかさず目を閉じた。
戦場で瞬き以外で目を閉じるなどあり得ない。
目を閉じる事など、自ら死ににいっているようなものだ。
しかし目を閉じた理由がそれ以外だとすれば――。
突如、ルーレルの体は目が潰れる程の光を発し始めた。
「なんだと……!」
そんな光をレレファスは至近距離から直視してしまった。
ただで済むわけがない。
「むぅ……! 何も見えん……!」
今の一瞬にしてレレファスの視力を奪ったのだ。
しかしその分代償は大きい。
「うぅ……」
ルーレルの足はふらふらとよろけ始め、剣を杖のようにして地面に膝をついた。
だがこれはチャンスでもある。
レレファスは視力を失っているのだ。
今はもう隙しかない。
「行け……」
ルーレルの指示と共に、ゆっくりと舞っていた花弁が暴風に吹かれるか如くレレファス目掛けて舞って行った。
遠くから見れば美しい花弁だ。
でもそれに触れてみれば、ただの凶器でしかない。
それはゆらゆらと舞っていき、目を抑えるレレファスを包み込んだ。
刹那、花弁が触れた場所から黒の血が飛び散った。
頭、首、腹、背、腕、足……ありとあらゆる所から血が流れ出していく。
「なんだこれは!」
目を抑えているのと逆の腕で剣を振っていた。
だが振ったところで花弁は消えず、余計に舞っていくだけだ。
「落ちろ……」
ルーレルの声に応えるかのように、上空で待機していた雲が激しい光を一瞬放った。
それと同時に、辺り一体に激しい轟音を響かせた。
通常の稲妻よりもさらに光の強い稲妻がレレファス目掛けて落ちていく。
地面を抉り、砂や岩が宙を舞う。
ルーレルは確認に向かおうとするが、足に力を入れることが出来ずその場に倒れ込んでしまった。
だがあれが直撃して、死なずとも余裕で立てる者はまずいない。
あのグラティオラスさえ、しばらく感電してしまっていたのだから。
危ないところだった。
ルーレルはなんとか腕に力を入れて座り直し、口から流れる血を拭き取った。
上級悪魔の中で1番強いだけある。
前よりもさらに強くなっていた。
だけどこれで私も別の所へ向かうことが出来る。
戦況をどうにかして変えないと――。
「どこに行く」
「……え……?」
「まだ私との勝負はついていないぞ」
ルーレルは見るはずのない光景を見てしまった。
「どうして……」
そこに立っていたのだ。
立てるはずがないのに、そいつは立っていたのだ。
それもふらつく事なく、余裕そうな表情で。
「このレレファスを甘く見るな」
どうやってこいつを……倒せばいい。
ルーレルに希望などすでに残されておらず、今あるのは絶望だけだった。
ただひたすら剣を振り続けて悪魔達を殺し続けた。
俺はあいつの所へ行かなくてはいけない。
黒い翼を生やす堕天使のところへ。
今も尚ハーシュは、騎士や冒険者達に攻撃を仕掛け続けている。
ハーシュの攻撃を防げる者は誰もいない。
これ以上攻撃を続ければ、さらに死人が増えるだろう。
だから俺が必ずハーシュを止める。
俺はそれだけを考えて、ただひたすらに剣を振り続けた。
◇◆◇
1人は馬に乗り、他の4人は全力で走りながら戦場を背に逃げていた。
「誰が悪魔達となんか戦うかよ! あんな戦い勝てるわけねぇだろ!」
「逃げてよかったね。死んだら洒落にならない」
「お前達は正しい判断をした。あのゴミ達を使えば私達は無事逃げきれるだろう」
馬に乗って駆けながらそう余裕そうに話をするのは、他でもない戦場で戦っているはずの国王だ。
そして国王を追いかけるように走るのは、国を守るべき立場にある勇者達だった。
そう、国王と勇者達はあの戦場から逃げていたのだ。
ライの悪い予感は当たっていたようだ。
冒険者達や騎士が命をかけて戦う中、5人はただひたすら逃げ続けていた。
自分達だけが助かればいいと、そう考えて。
「でもこれからどこに向かう?」
「同盟を結んでいる国にでも向かえばいいだろ。そうすれば、向こうがどうにかしてくれるはずだ」
「確かにそうですわね。あの弱者達に任せておけば、私達は確実に勝つ為の準備を進められますわ」
国王とドラウロ達は、皆顔に最悪な笑みを浮かべて走り続けた。
己だけでも生きれれば良いと、そう考えながら。
◇◆◇
「ハーシュ……」
俺はすでにハーシュの目の前まで来ていた。
剣と服は黒色の悪魔の血で染まっている。
ハーシュは俺の姿を確認すると、巨大な矢を作り出して放ってきた。
それを俺は転がるようにして躱すと、俺の背後にいた悪魔に突き刺さった。
しかし矢はそれでも止まらず、悪魔の体を貫通して硬い鎧で身を包む騎士の胸に突き刺さり、ようやく止まった。
騎士の胸からは血が大量に噴き出し、力を失っていき横に倒れ込んだ。
俺はハーシュを救うと言った。
救うと誓った。
だけど……今は救うことを考えるべきではないのかもしれない。
俺はハーシュの救い方を知らない。
だったら今考える事はただ一つ。
ハーシュをどのようにして止めるかだ。
多分どれだけ声をかけたり攻撃をしたりしても、我を失っているハーシュが止まることはないだろう。
俺は一体どうやってハーシュを止めれば良い……。
そして俺は脳内には最悪な事が自然と浮かび上がった。
ハーシュをこの手で殺すこと。
そんな最悪な選択を脳から弾き出す為に、頭を大きく左右に振った。
だがそれでも、殺すという選択肢が頭の中に浮かび上がってしまう。
もしかしたら俺は、心のどこかでハーシュを殺すことが一番の良策だと思っているのかもしれない。
このままハーシュをどうにも出来なければ、恐らく人を殺し続ける。
もしかしたらハーシュを殺すことが、ハーシュを救う事に繋がるかもしれない。
この暴走はハーシュのせいでは全くない。
だがもしハーシュが正気に戻ったとしても、自分をずっと責め続けるはずだ。
だったらそうならない為にも、今ここでハーシュを止めるべきではないのだろうか。
俺達は圧倒的不利な状況にいる。
さっきよりも戦況は悪化し、後方にいる騎士達が破られれば、間違いなくそのまま王都は落とされる。
王都が落とされれば、勝利を信じて騎士や冒険者達を待っている民はどうなる。
少しでも勝つ可能性を上げるとすれば、ハーシュをどうにかしなければならない……。
俺は血を流し戦う者達を見回した後、ゆっくりとハーシュの方を向き目を合わせた。
ハーシュには数え切れない程の恩がある。
それを今、返すんだ。
覚悟を決めろ、ライ・サーベルズ。
深く息を吸って、ゆっくりと吐き出した。
握っていた剣をもう一度持ち直し、ハーシュに向けて構えた。
「ハーシュ、今から君を殺す」
そう俺はハーシュに向けて言葉を発し、地面を強く踏み込んだ。
◇◆◇
頭から流れる血を腕で拭き、消えかかる光剣をルーレルはもう一度金の光で照らした。
「もう諦めて殺されるがいい。お前はどうやっても私には勝てん」
「それは……無理……。私は……戦う……」
「そうか。なら死ね」
レレファスは音も立てず背後に回り込むと、首を狙って剣を一振りした。
それをルーレルは間一髪のところで反応し、姿勢を低くし剣を躱すとレレファスの腹部に向けて光球を打ち出した。
「小賢しい真似を」
だがそれでも当たることはなく、背後に下がりながら光球を斬り裂いた。
レレファスは剣術において、ルーレルの技術力を遥かに凌駕している。
ルーレルが有利に立てるとすれば、光を自由に操る事なのだがそれも全て対応されてしまう。
今のままだと勝率は無いと言っても良いくらいだ。
それをルーレルは自覚している。
だがそれでも別の方法が分からないのだ。
持久戦に持ち込んだとしても、先に体力を切らしてしまうのはルーレルで間違いない。
体術も出来ないわけではないが、今使ったところで余計に不利になるだけだ。
シェラレイに助けを求めようとも、向こうも向こうで下級悪魔に手一杯のようだ。
下級悪魔でも数で来られたらどうすることもできない。
自分でこの絶望的な状況をどうにかするしかないのだ。
光の力で押し切るしかないか。
でももしかしたら、力切れを起こすかもしれない。
そうなれば……しばらく戦えない。
やっぱり剣だけで――。
しかしルーレルは頭を左右に振った。
そんな考えはダメだ。
今のこの状況を変えるには、力の出し惜しみをしてはいけない。
このままだと最悪負けてしまう可能性がある。
どうにかして持ち堪えないと……!
「光剣の薔薇……乱光桜……光雲の乱……」
力の乱用はあまり良い事ではない。
光剣は丸一日使い続けても問題はないが、光剣の薔薇、乱光桜、光雲の乱は力の消耗が大きい。
あと十回も使えば立っていられなくなってしまうかもしれない。
それでも使わないと勝てないから。
他のみんなが全力で戦ってるのに、私だけ手を抜くなんて絶対許されない……!
無数の光の剣に加え、一枚一枚がナイフのような切れ味を持つ花弁や轟音を響かせ金の光を放つ雲が、レレファスを目掛けて襲っていった。
それに合わせてルーレルも駆け出す。
光剣の束が襲い掛かるが、それでも崩れる事なく一本一本捌いていく。
だがそれだけ隙ができる。
ルーレルは間合いに入り込み、鋭い剣の先を向けた。
「甘いな」
それでもレレファスは動じる事なく、飛んでくる光剣を躱しながら、自分に向けられた剣の対応をしようとする。
だがそれでいい。
ルーレルはすかさず目を閉じた。
戦場で瞬き以外で目を閉じるなどあり得ない。
目を閉じる事など、自ら死ににいっているようなものだ。
しかし目を閉じた理由がそれ以外だとすれば――。
突如、ルーレルの体は目が潰れる程の光を発し始めた。
「なんだと……!」
そんな光をレレファスは至近距離から直視してしまった。
ただで済むわけがない。
「むぅ……! 何も見えん……!」
今の一瞬にしてレレファスの視力を奪ったのだ。
しかしその分代償は大きい。
「うぅ……」
ルーレルの足はふらふらとよろけ始め、剣を杖のようにして地面に膝をついた。
だがこれはチャンスでもある。
レレファスは視力を失っているのだ。
今はもう隙しかない。
「行け……」
ルーレルの指示と共に、ゆっくりと舞っていた花弁が暴風に吹かれるか如くレレファス目掛けて舞って行った。
遠くから見れば美しい花弁だ。
でもそれに触れてみれば、ただの凶器でしかない。
それはゆらゆらと舞っていき、目を抑えるレレファスを包み込んだ。
刹那、花弁が触れた場所から黒の血が飛び散った。
頭、首、腹、背、腕、足……ありとあらゆる所から血が流れ出していく。
「なんだこれは!」
目を抑えているのと逆の腕で剣を振っていた。
だが振ったところで花弁は消えず、余計に舞っていくだけだ。
「落ちろ……」
ルーレルの声に応えるかのように、上空で待機していた雲が激しい光を一瞬放った。
それと同時に、辺り一体に激しい轟音を響かせた。
通常の稲妻よりもさらに光の強い稲妻がレレファス目掛けて落ちていく。
地面を抉り、砂や岩が宙を舞う。
ルーレルは確認に向かおうとするが、足に力を入れることが出来ずその場に倒れ込んでしまった。
だがあれが直撃して、死なずとも余裕で立てる者はまずいない。
あのグラティオラスさえ、しばらく感電してしまっていたのだから。
危ないところだった。
ルーレルはなんとか腕に力を入れて座り直し、口から流れる血を拭き取った。
上級悪魔の中で1番強いだけある。
前よりもさらに強くなっていた。
だけどこれで私も別の所へ向かうことが出来る。
戦況をどうにかして変えないと――。
「どこに行く」
「……え……?」
「まだ私との勝負はついていないぞ」
ルーレルは見るはずのない光景を見てしまった。
「どうして……」
そこに立っていたのだ。
立てるはずがないのに、そいつは立っていたのだ。
それもふらつく事なく、余裕そうな表情で。
「このレレファスを甘く見るな」
どうやってこいつを……倒せばいい。
ルーレルに希望などすでに残されておらず、今あるのは絶望だけだった。
0
あなたにおすすめの小説
二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる
日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」
冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。
一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。
「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」
そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。
これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。
7/25男性向けHOTランキング1位
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる