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第15話 約束
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翌日、アリーナとルールーは事の顛末を聞いて驚いた。
「わぁ……何だか凄くややこしくて、大変な事になっていたのね、最後まで一緒に居れば良かったわ」
「そんなにラズリーに執着していたとは思わなかった。皆の前で否定されていたのに、図太いのか、厚顔無恥なのか。許せない」
二人はよしよしとラズリーを撫で、甘やかす。
「リアム様が釘を刺してくれたし、もう大丈夫よ」
即刻国へ送り返そうとファルクは躍起になっていたが、ラズリーがそれを止め、リアムも一応保留としてくれた。
今後ラズリーと関わらない事を約束させ、問題を起こしたら粛々と対応すると伝えている。
(関わらなければそれでいいだけだから)
相容れない存在だが、だからといって破滅させたいとまでは思わなかった。
婚約を解消された後の、不安な気持ちのままで他国へと来たのだから、ストレスが溜まっていたのだろうと結論付けたのである。
そんな状態である中で、こんな短期間で国に戻ってしまったら、ますますオリビアの立場はないだろう。
自分のせいで他者が酷い目に合うのは忍びなかった。
「ラズリーは優しすぎるわよ。そもそもあなたは絡まれただけで、何もしていないのに」
「そうよ。巻き込まれただけなのだから、突き放して良かったのよ。それにその手の輩が大人しくしているとは思えないけど」
二人もファルク同様オリビアに対して相当嫌悪を抱いている。
(甘いかもしれないけど、何とか考えを改めて貰えないかしら)
折角知識があるのだから、きちんと学べばきっと優秀な薬師になれるはずだ。
そうしたら救われる人も増える、そこにラズリーは期待していた。
(直情的で真っ直ぐなところは皆にも似ているのよね)
オリビアはある意味真っ直ぐ過ぎる故に、自信家なのだろう。
自己肯定感の低いラズリーは自信満々な所だけは少し羨ましかった。
(これ以上オリビア様が何もしなければ、大丈夫なはず)
ラズリーもこれ以上周りに心配をかけるのは、本意ではない。
ずっと守られてばかりも辛い、なので自分も変わらなくては。
「心配してくれてありがとう。それで改めて二人に相談があるんだけど――」
ラズリーの相談を聞き、二人は笑顔になる。
「是非協力させてもらうわ!」
「当日が楽しみね、でもその日だけでいいの?」
ルールーは少し物足りなさそうな顔をする。
「とりあえずはね。その後は様子を見てお願いしたいな」
「もちろん。ラズリーの頼みならいいわよ」
可愛くお願いされ、ルールーは満面の笑みで頷いた。
「私も楽しみ~」
アリーナがラズリーの髪を撫でながらウキウキしている。
「帰ったらお母様とお父様にもお話するね」
ラズリーは頬を染め、照れ臭そうである。
◇◇◇
「オリビア嬢は特に変わりないかな?」
リアムの言葉にストレイドは答える。
「そうですね。あれからは特に何もなく」
あの時から数ヶ月経ったが、あれから絡んでくる事はない。
寧ろ静か過ぎるとも思えた。
「まぁ他の生徒達と馴染んでいるようだし、興味がそちらに逸れたのかもね」
「いずれもラズリーをやっかむ者達ですが」
ファルクはムスッとしている。もうすぐ大事なイベントがあるし、余計な事にかかずらいたくないのだ。
「まぁ、それでも直接来ない限りはこちらも干渉しない約束だからね。ラズリーのところにアリーナ嬢とルールー嬢が常にいるようになったし、今のところ何も起こらないだろう」
リアムの方から護衛をつけようかと提案したのだが、それは却下された。そんな窮屈な思いをさせたくないし、異性なら尚更嫌だとファルクがごねたのだ。
それならば自分達が守るとアリーナとルールーが名乗り出てくれる。
本人達もそれが良いと言うし、アリーナ達の父親も了承している。
「大事な友人を守れるくらいの腕前はありますので。何かあれば自分達で責任を持ちます」
両父とも娘に信頼を寄せているようであった。
そう言うのならとリアムも様子見とさせてもらう。何かあればすぐに手を貸すと口添えて。
(どうせならアリーナ嬢とルールー嬢はそのまま女性騎士として就職してくれないかな)
女性の起用は少ないし、今度のイベントが落ち着いたら提案してみようと思う。少し過激な性格だが、無闇矢鱈に突っかかってはいかないだろう。
優秀な人材は他に流れる前に確保しておきたい。
「それにしてもオリビア嬢は、この国に送られた理由を忘れているのだろうか」
セラフィム国での事を反省させるために送られたはずなのに、そうとは全く思っていない。
「忘れているか、何とも思ってはいないのではないでしょうか。似たようなトラブルを起こしているのだから。せめて元婚約者の方と、その方を支えた令嬢が幸せになっている事を祈るだけです」
ストレイドは祈る様に手を合わせる。
もしもラズリーが普通の子爵令嬢であれば、オリビアの行動で本当に婚約解消に追い込まれ、潰れていた可能性もある。
そう考えればラズリーで良かった点もある。
「俺の目の届く所で良かったよ。そのような悲しい事が起きる前に、未然に防げたし」
リアムの目に付く範囲だったからオリビアを糾弾できた。これが話も知らず、被害者が泣き寝入りとなる事態であったら、罪もない令息令嬢が被害に合う可能性が高かったわけで。
「変に身分が高いと色々厄介だよね」
「まぁそうですね」
この国のトップの血筋であるリアムがいうには、言い得て妙な事ではあるが、人当たりの好いリアムを悪く言うものは少ない。
寧ろ人当たりが良過ぎて舐められるから、気性の荒いファルクや躊躇いのないストレイドがつけられているわけで、ラズリーと実はそこまで大差ない、気の優しい人だと思われている。
「わぁ……何だか凄くややこしくて、大変な事になっていたのね、最後まで一緒に居れば良かったわ」
「そんなにラズリーに執着していたとは思わなかった。皆の前で否定されていたのに、図太いのか、厚顔無恥なのか。許せない」
二人はよしよしとラズリーを撫で、甘やかす。
「リアム様が釘を刺してくれたし、もう大丈夫よ」
即刻国へ送り返そうとファルクは躍起になっていたが、ラズリーがそれを止め、リアムも一応保留としてくれた。
今後ラズリーと関わらない事を約束させ、問題を起こしたら粛々と対応すると伝えている。
(関わらなければそれでいいだけだから)
相容れない存在だが、だからといって破滅させたいとまでは思わなかった。
婚約を解消された後の、不安な気持ちのままで他国へと来たのだから、ストレスが溜まっていたのだろうと結論付けたのである。
そんな状態である中で、こんな短期間で国に戻ってしまったら、ますますオリビアの立場はないだろう。
自分のせいで他者が酷い目に合うのは忍びなかった。
「ラズリーは優しすぎるわよ。そもそもあなたは絡まれただけで、何もしていないのに」
「そうよ。巻き込まれただけなのだから、突き放して良かったのよ。それにその手の輩が大人しくしているとは思えないけど」
二人もファルク同様オリビアに対して相当嫌悪を抱いている。
(甘いかもしれないけど、何とか考えを改めて貰えないかしら)
折角知識があるのだから、きちんと学べばきっと優秀な薬師になれるはずだ。
そうしたら救われる人も増える、そこにラズリーは期待していた。
(直情的で真っ直ぐなところは皆にも似ているのよね)
オリビアはある意味真っ直ぐ過ぎる故に、自信家なのだろう。
自己肯定感の低いラズリーは自信満々な所だけは少し羨ましかった。
(これ以上オリビア様が何もしなければ、大丈夫なはず)
ラズリーもこれ以上周りに心配をかけるのは、本意ではない。
ずっと守られてばかりも辛い、なので自分も変わらなくては。
「心配してくれてありがとう。それで改めて二人に相談があるんだけど――」
ラズリーの相談を聞き、二人は笑顔になる。
「是非協力させてもらうわ!」
「当日が楽しみね、でもその日だけでいいの?」
ルールーは少し物足りなさそうな顔をする。
「とりあえずはね。その後は様子を見てお願いしたいな」
「もちろん。ラズリーの頼みならいいわよ」
可愛くお願いされ、ルールーは満面の笑みで頷いた。
「私も楽しみ~」
アリーナがラズリーの髪を撫でながらウキウキしている。
「帰ったらお母様とお父様にもお話するね」
ラズリーは頬を染め、照れ臭そうである。
◇◇◇
「オリビア嬢は特に変わりないかな?」
リアムの言葉にストレイドは答える。
「そうですね。あれからは特に何もなく」
あの時から数ヶ月経ったが、あれから絡んでくる事はない。
寧ろ静か過ぎるとも思えた。
「まぁ他の生徒達と馴染んでいるようだし、興味がそちらに逸れたのかもね」
「いずれもラズリーをやっかむ者達ですが」
ファルクはムスッとしている。もうすぐ大事なイベントがあるし、余計な事にかかずらいたくないのだ。
「まぁ、それでも直接来ない限りはこちらも干渉しない約束だからね。ラズリーのところにアリーナ嬢とルールー嬢が常にいるようになったし、今のところ何も起こらないだろう」
リアムの方から護衛をつけようかと提案したのだが、それは却下された。そんな窮屈な思いをさせたくないし、異性なら尚更嫌だとファルクがごねたのだ。
それならば自分達が守るとアリーナとルールーが名乗り出てくれる。
本人達もそれが良いと言うし、アリーナ達の父親も了承している。
「大事な友人を守れるくらいの腕前はありますので。何かあれば自分達で責任を持ちます」
両父とも娘に信頼を寄せているようであった。
そう言うのならとリアムも様子見とさせてもらう。何かあればすぐに手を貸すと口添えて。
(どうせならアリーナ嬢とルールー嬢はそのまま女性騎士として就職してくれないかな)
女性の起用は少ないし、今度のイベントが落ち着いたら提案してみようと思う。少し過激な性格だが、無闇矢鱈に突っかかってはいかないだろう。
優秀な人材は他に流れる前に確保しておきたい。
「それにしてもオリビア嬢は、この国に送られた理由を忘れているのだろうか」
セラフィム国での事を反省させるために送られたはずなのに、そうとは全く思っていない。
「忘れているか、何とも思ってはいないのではないでしょうか。似たようなトラブルを起こしているのだから。せめて元婚約者の方と、その方を支えた令嬢が幸せになっている事を祈るだけです」
ストレイドは祈る様に手を合わせる。
もしもラズリーが普通の子爵令嬢であれば、オリビアの行動で本当に婚約解消に追い込まれ、潰れていた可能性もある。
そう考えればラズリーで良かった点もある。
「俺の目の届く所で良かったよ。そのような悲しい事が起きる前に、未然に防げたし」
リアムの目に付く範囲だったからオリビアを糾弾できた。これが話も知らず、被害者が泣き寝入りとなる事態であったら、罪もない令息令嬢が被害に合う可能性が高かったわけで。
「変に身分が高いと色々厄介だよね」
「まぁそうですね」
この国のトップの血筋であるリアムがいうには、言い得て妙な事ではあるが、人当たりの好いリアムを悪く言うものは少ない。
寧ろ人当たりが良過ぎて舐められるから、気性の荒いファルクや躊躇いのないストレイドがつけられているわけで、ラズリーと実はそこまで大差ない、気の優しい人だと思われている。
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