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第18話 拒絶
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さすが侯爵令嬢。ひと目で上質とわかるドレスや煌びやかなティアラ、時間もお金もかけているのが分かる。
話しかけられたものの名指しをされていない為に誰も返事をしない。
身分の低い者から高い者への声掛けは基本無礼であるからだ。
(あまりにも騒がしかったからよね)
ラズリーはシュンとする。
話しかけないようにという約束ではあったが、このうるささでは一言注意もしたくなるだろう。そこは素直に反省する。
「コランダム子爵令嬢、場を弁えて頂戴」
「申し訳ございません」
大勢いる中でラズリーを矢面に立たせるところは悪意しかないが、ラズリーは自分達が悪いのだと素直に謝罪をする。
「このような人の多い場で学園にいる時のような振る舞いをするなんて、本当に育ちが悪いのね」
その悪意のある言葉に、一部は反感を、一部は驚愕を覚える。
「お言葉ですがレディ、それは少し言い過ぎではないかと」
グルミアが溜まらず口を出す。
「あなたはどなた? 許可もなく話しかけて来るなんて、何て無礼者かしら」
「これは失礼。私はグルミアと申します。差し出がましいとは思いましたが、あまりにもコランダム子爵令嬢に対して失礼な言い方でしたので」
グルミアは悪いとは思っていない表情で真面目な口調で述べる。
「平民が口を挟まないで頂戴。わたくしはコランダム子爵令嬢と話をしているの」
家名を名乗らない事で平民とされ言葉を遮断されてしまった。
いまだファルクの膝から下ろしてもらえていないラズリーは、そのままの姿勢で目を合わせるようになる。
「恥も外聞もないの? このような所でそのような事をしていて」
「これはファルクが離してくれなくてですね」
「まぁ人のせいにするなんて」
明らかにファルクが抱えているのだけれど、何故そうなるのか。
そして声も大きい。
他の人に知らしめようとしているのがありありとわかる声量だ。
「白々しい事を言わずに立ち去ってください。あなたは俺達に許可なく近づかないように約束してますよね」
ファルクがラズリーを庇うように抱き直す。
「わたくしは侯爵令嬢として注意を促しているのです。人前でそのような事をする者に注意をする事はおかしいですか?」
「おかしいですよ、お帰り下さい」
再度グルミアが不機嫌そうに口を出す。
「言うなればお節介ですし、わざわざ大声で言う程の事ですか? 悪意しか感じられませんねぇ」
グルミアは嫌そうな顔で、今度は引かずに寧ろ前になり出る。
「体裁を取り繕う為に引こうと思いましたが、もう我慢なりませんね。接触禁止を言われて近づいてきたのですから、お覚悟を。人にマナーを説く前にまずは約束を守られては? オリビア=フィード侯爵令嬢」
「さっきから偉そうな態度、あなたは一体何なのです」
「俺の友人だよ」
ピリピリした空気の中、リアムが口を挟んできた。
皆の視線が一斉に集まる。
「揉めていると連絡があったから来たんだけど、グルミアも俺の到着を待ってくれればよかったのに」
「すまない、あまりにも胸糞悪くてな」
グルミアがおおよそ王族に掛けるべきでない口調で言い訳をする。
しかしリアムの後ろにいるストレイドは何も言わない。
(二人には接点があったのね)
そんな事を知らなかったラズリーがキョトンとしていると、不意にリアムと目が合う。
「また巻き込まれてしまったね、君はそういう星の元に生まれてしまったのかな」
苦笑しつつそう言われ、何と答えていいかわからない。
「君が悪いと言いたいわけじゃない。そういう人を惹きつけてしまう性質なのかもしれないって事さ」
持って生まれた性というものだろうか。努力で何とかなるといいのだけど。
「さてオリビア嬢は何を一人騒ぎ立てていたのかな? 楽しく歓談する皆の元に突撃してまで、訴えたい事とは一体何なのだろうね」
リアムが話を始めた辺りでファルクがラズリーを隣へと座らせ直した。
主君の前ではきちんとしようという事だろう。
またグルミアが何かを呟いているのが、ラズリーの耳に微かに聞こえてくる。
(あれ? もしかして魔法?)
はっきりとは聞こえなかったが、何某かの魔法を唱えていたようだ。
王宮内には魔法が使用できないように結界が張られているが、それは攻撃に転ずるような魔法を防ぐもの。全てがその限りではない。
一体何の魔法を使用したのか。
「コランダム子爵令嬢が人目も憚らず、トワレ伯爵令息に触れていたから咎めただけですわ」
「それが何か悪いのかい?」
リアムはしれっとして聞き返す。
「婚約者の段階でそのような触れ合いなどあり得ません。このような大勢の人の前でなんて」
「程度はあると思うけれど、肩や腰に手を回すくらいは夫婦であればある事だよ」
夫婦であれば多少の接触はあり得る。
「まだ婚約者でしょう。それに彼女はデビュタントです」
デビュタントは未婚の令嬢がなるので、それに参加しているラズリーはまだ新成人になり立て。
婚姻が認められるのは今日の社交界デビューを終えてからだ。
「そうデビュタントだ。でもすべての過程を終えた今、彼女はもう成人だよ。つまりもう婚姻も出来る」
そう言われ恥ずかしそうにラズリーは俯いた。
「先程書類上の受理は済ませた。君らはもう正式な夫婦だ、末永くお幸せに」
リアムが祝福の拍手を二人に送る。
話しかけられたものの名指しをされていない為に誰も返事をしない。
身分の低い者から高い者への声掛けは基本無礼であるからだ。
(あまりにも騒がしかったからよね)
ラズリーはシュンとする。
話しかけないようにという約束ではあったが、このうるささでは一言注意もしたくなるだろう。そこは素直に反省する。
「コランダム子爵令嬢、場を弁えて頂戴」
「申し訳ございません」
大勢いる中でラズリーを矢面に立たせるところは悪意しかないが、ラズリーは自分達が悪いのだと素直に謝罪をする。
「このような人の多い場で学園にいる時のような振る舞いをするなんて、本当に育ちが悪いのね」
その悪意のある言葉に、一部は反感を、一部は驚愕を覚える。
「お言葉ですがレディ、それは少し言い過ぎではないかと」
グルミアが溜まらず口を出す。
「あなたはどなた? 許可もなく話しかけて来るなんて、何て無礼者かしら」
「これは失礼。私はグルミアと申します。差し出がましいとは思いましたが、あまりにもコランダム子爵令嬢に対して失礼な言い方でしたので」
グルミアは悪いとは思っていない表情で真面目な口調で述べる。
「平民が口を挟まないで頂戴。わたくしはコランダム子爵令嬢と話をしているの」
家名を名乗らない事で平民とされ言葉を遮断されてしまった。
いまだファルクの膝から下ろしてもらえていないラズリーは、そのままの姿勢で目を合わせるようになる。
「恥も外聞もないの? このような所でそのような事をしていて」
「これはファルクが離してくれなくてですね」
「まぁ人のせいにするなんて」
明らかにファルクが抱えているのだけれど、何故そうなるのか。
そして声も大きい。
他の人に知らしめようとしているのがありありとわかる声量だ。
「白々しい事を言わずに立ち去ってください。あなたは俺達に許可なく近づかないように約束してますよね」
ファルクがラズリーを庇うように抱き直す。
「わたくしは侯爵令嬢として注意を促しているのです。人前でそのような事をする者に注意をする事はおかしいですか?」
「おかしいですよ、お帰り下さい」
再度グルミアが不機嫌そうに口を出す。
「言うなればお節介ですし、わざわざ大声で言う程の事ですか? 悪意しか感じられませんねぇ」
グルミアは嫌そうな顔で、今度は引かずに寧ろ前になり出る。
「体裁を取り繕う為に引こうと思いましたが、もう我慢なりませんね。接触禁止を言われて近づいてきたのですから、お覚悟を。人にマナーを説く前にまずは約束を守られては? オリビア=フィード侯爵令嬢」
「さっきから偉そうな態度、あなたは一体何なのです」
「俺の友人だよ」
ピリピリした空気の中、リアムが口を挟んできた。
皆の視線が一斉に集まる。
「揉めていると連絡があったから来たんだけど、グルミアも俺の到着を待ってくれればよかったのに」
「すまない、あまりにも胸糞悪くてな」
グルミアがおおよそ王族に掛けるべきでない口調で言い訳をする。
しかしリアムの後ろにいるストレイドは何も言わない。
(二人には接点があったのね)
そんな事を知らなかったラズリーがキョトンとしていると、不意にリアムと目が合う。
「また巻き込まれてしまったね、君はそういう星の元に生まれてしまったのかな」
苦笑しつつそう言われ、何と答えていいかわからない。
「君が悪いと言いたいわけじゃない。そういう人を惹きつけてしまう性質なのかもしれないって事さ」
持って生まれた性というものだろうか。努力で何とかなるといいのだけど。
「さてオリビア嬢は何を一人騒ぎ立てていたのかな? 楽しく歓談する皆の元に突撃してまで、訴えたい事とは一体何なのだろうね」
リアムが話を始めた辺りでファルクがラズリーを隣へと座らせ直した。
主君の前ではきちんとしようという事だろう。
またグルミアが何かを呟いているのが、ラズリーの耳に微かに聞こえてくる。
(あれ? もしかして魔法?)
はっきりとは聞こえなかったが、何某かの魔法を唱えていたようだ。
王宮内には魔法が使用できないように結界が張られているが、それは攻撃に転ずるような魔法を防ぐもの。全てがその限りではない。
一体何の魔法を使用したのか。
「コランダム子爵令嬢が人目も憚らず、トワレ伯爵令息に触れていたから咎めただけですわ」
「それが何か悪いのかい?」
リアムはしれっとして聞き返す。
「婚約者の段階でそのような触れ合いなどあり得ません。このような大勢の人の前でなんて」
「程度はあると思うけれど、肩や腰に手を回すくらいは夫婦であればある事だよ」
夫婦であれば多少の接触はあり得る。
「まだ婚約者でしょう。それに彼女はデビュタントです」
デビュタントは未婚の令嬢がなるので、それに参加しているラズリーはまだ新成人になり立て。
婚姻が認められるのは今日の社交界デビューを終えてからだ。
「そうデビュタントだ。でもすべての過程を終えた今、彼女はもう成人だよ。つまりもう婚姻も出来る」
そう言われ恥ずかしそうにラズリーは俯いた。
「先程書類上の受理は済ませた。君らはもう正式な夫婦だ、末永くお幸せに」
リアムが祝福の拍手を二人に送る。
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