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第16話 着々と
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ペイルと過ごすようになると、私に対する周囲の雰囲気が変わってきたように思える。
温かいような柔らかい雰囲気になり、徐々にだけれど好意的な話も増えた。
そして挨拶や話しかけてくれる者も少なからず現れる。
(ペイルが側にいるだけでだいぶ皆の対応が変わったわね)
ペイルといると私自身も笑顔が増えるからかもしれないわ。
だってローシュの所に行くひと手間がなくなったもの。
女友達がいるならそっちに聞くのは自然な事よね。
ペイルと話をしたり勉強を教えて貰ったりすると、以前の私に近い振る舞いが出来るようになってきたわ。
さすがにクラスの勉強についていける程覚えるというのは不自然だと思ったので、個別の授業を受けたいと希望した。
その辺りは王家が学園に話をして、特別扱いを通させたわ。
周囲の目がないというのは気持ちも楽だし、先生も優しい。
個別の授業という事でクラスメートはいないものの、侍女のポエットが特別に同席しているから、寂しくもない。
リヴィオとペイルと離れてしまった事は悲しいわ。
それでも昼食の時は二人揃って誘いに来てくれるので、その時がとても待ち遠しかった。
「リヴィオ、最近のローシュ様は元気にしているかしら?」
最早一緒のランチなども取らないし、手紙のやり取りもないのでこうしてリヴィオに教えてもらうのが日課だ。
彼もまたローシュとは距離が出来ているが、それでも彼は一応ローシュの護衛なので、全く話をしないわけではない。
「そうですね。生徒会の仕事を再開されたそうです、というか会長に連れて行かれ、仕事をしろと言われてました」
「そうなの?」
というか今まで生徒会の仕事していなかったのか。
さては心労で休んでた事を理由にサボっていたのね、あんなに元気にクラスメートと話をしていたのに。
記憶のない私には声がかからないのはわかるけど、ローシュは元気なんだから仕事をする義務がある。
今まで私がしていたから出来るとは思ってはいないけれど。
(どこに何があるかも知らないだろうなぁ)
散々私を使っていい顔していたのだから、本当は役に立たない事を知られてぜひ怒られてほしい。
若しくは怒られなくてもぜひ彼の自由時間を奪って欲しい。
今まで遊んでいた分、しっかりと学園に貢献してほしいものだ。
「復学してからはエカテリーナ様を支えるのに忙しいだろうからと遠慮していたそうなのですが、ローシュ様が全く世話をしていない事が発覚した為に、お怒りになったそうです。今までの溜まった仕事と、そしてエカテリーナ様の請け負っていた仕事もさせるのだそうです。婚約者の責任として」
会長素敵、愛しているわ。
私の事を考えてくれて、しかもローシュに真っ当に仕事をさせようと動いてくれるなんて。
(甘やかさなくていいですからね、会長!)
散々私が甘やかしてきたのも悪いとわかっているので、記憶が戻ったらぜひお礼と謝罪をしに行こう。
記憶がないのを理由に仕事も免除してくれてるようだもの。
近々手土産を持って顔を出したいが……
「私は生徒会の一員だったの?」
今まで誰も言葉にしてなかったので、初めて聞いたかのように振る舞う。
「はい。ですがその事についてはあまり気になされなくて良いかと。落ち着いたら会長がお話をしに来たいと言っていましたので、エカテリーナ様はその時までお待ち下さい」
急に二人抜けた事だし、恐らく忙しくてこちらに手がまわらないのだろう。
そんな中無理に行くことは出来ないし、声もかかってないのに行くほど不遜でもない。
記憶喪失の振りもなかなか楽ではなく、教えてもらった事から逸脱しないように動かなければいけないのだ。
(早く自由になりたいわ)
ここらでそろそろ婚約解消になるような大きな出来事が来ることを切に祈る。
温かいような柔らかい雰囲気になり、徐々にだけれど好意的な話も増えた。
そして挨拶や話しかけてくれる者も少なからず現れる。
(ペイルが側にいるだけでだいぶ皆の対応が変わったわね)
ペイルといると私自身も笑顔が増えるからかもしれないわ。
だってローシュの所に行くひと手間がなくなったもの。
女友達がいるならそっちに聞くのは自然な事よね。
ペイルと話をしたり勉強を教えて貰ったりすると、以前の私に近い振る舞いが出来るようになってきたわ。
さすがにクラスの勉強についていける程覚えるというのは不自然だと思ったので、個別の授業を受けたいと希望した。
その辺りは王家が学園に話をして、特別扱いを通させたわ。
周囲の目がないというのは気持ちも楽だし、先生も優しい。
個別の授業という事でクラスメートはいないものの、侍女のポエットが特別に同席しているから、寂しくもない。
リヴィオとペイルと離れてしまった事は悲しいわ。
それでも昼食の時は二人揃って誘いに来てくれるので、その時がとても待ち遠しかった。
「リヴィオ、最近のローシュ様は元気にしているかしら?」
最早一緒のランチなども取らないし、手紙のやり取りもないのでこうしてリヴィオに教えてもらうのが日課だ。
彼もまたローシュとは距離が出来ているが、それでも彼は一応ローシュの護衛なので、全く話をしないわけではない。
「そうですね。生徒会の仕事を再開されたそうです、というか会長に連れて行かれ、仕事をしろと言われてました」
「そうなの?」
というか今まで生徒会の仕事していなかったのか。
さては心労で休んでた事を理由にサボっていたのね、あんなに元気にクラスメートと話をしていたのに。
記憶のない私には声がかからないのはわかるけど、ローシュは元気なんだから仕事をする義務がある。
今まで私がしていたから出来るとは思ってはいないけれど。
(どこに何があるかも知らないだろうなぁ)
散々私を使っていい顔していたのだから、本当は役に立たない事を知られてぜひ怒られてほしい。
若しくは怒られなくてもぜひ彼の自由時間を奪って欲しい。
今まで遊んでいた分、しっかりと学園に貢献してほしいものだ。
「復学してからはエカテリーナ様を支えるのに忙しいだろうからと遠慮していたそうなのですが、ローシュ様が全く世話をしていない事が発覚した為に、お怒りになったそうです。今までの溜まった仕事と、そしてエカテリーナ様の請け負っていた仕事もさせるのだそうです。婚約者の責任として」
会長素敵、愛しているわ。
私の事を考えてくれて、しかもローシュに真っ当に仕事をさせようと動いてくれるなんて。
(甘やかさなくていいですからね、会長!)
散々私が甘やかしてきたのも悪いとわかっているので、記憶が戻ったらぜひお礼と謝罪をしに行こう。
記憶がないのを理由に仕事も免除してくれてるようだもの。
近々手土産を持って顔を出したいが……
「私は生徒会の一員だったの?」
今まで誰も言葉にしてなかったので、初めて聞いたかのように振る舞う。
「はい。ですがその事についてはあまり気になされなくて良いかと。落ち着いたら会長がお話をしに来たいと言っていましたので、エカテリーナ様はその時までお待ち下さい」
急に二人抜けた事だし、恐らく忙しくてこちらに手がまわらないのだろう。
そんな中無理に行くことは出来ないし、声もかかってないのに行くほど不遜でもない。
記憶喪失の振りもなかなか楽ではなく、教えてもらった事から逸脱しないように動かなければいけないのだ。
(早く自由になりたいわ)
ここらでそろそろ婚約解消になるような大きな出来事が来ることを切に祈る。
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