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第38話 別れの日(リヴィオ視点)
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エカテリーナ様とローシュの婚約解消の日となった。
カルロス様はどうやって国王を説得したのだろうか。
陛下は渋々ながら、という表情をしており心からの納得してはいなさそうだが、ここまで来たら後には引けないだろう。
この場での発言権がない俺は、ただエカテリーナ様達のやり取りを聞くしか出来ないが、なかなか辛い……というか腹立たしい。
ローシュの勝手な持論とエカテリーナ様の思いに、ただ唇を噛み締めて耐えるばかりだ。
だが、これを乗り越えればきっとエカテリーナ様は解放される。
(もうすぐ、もうすぐだ)
嬉しいという反面、別れが近づいていることに心が沈む。
だが俺の気持ちとはまるで違い、ローシュの言葉は煽る様なものばかりで、悲嘆に暮れてばかりはいられなかった。
(この期に及んでも反省の色はないのだな)
賠償する気もなく更に記憶を失った事すらも、エカテリーナ様の非だと言うその神経が、信じられない。
(本当にこの男は、同じ人間なのか? 言葉が話せるだけの別生物ではないのだろうか。エカテリーナ様の為に何かをしてあげたいという思いは浮かばないのか?)
あれだけお世話になって、あれだけの迷惑をかけてのこの言い草。
怒りと、そして自分は今まで一体何をしてきたのかと考えて、落ち込んだ。
結局自分がローシュの為に行なったことなど何一つ彼には響いていないし、言った事の欠片も伝わっていない。
彼の心にはそういったものは、全く残らなかったのだ。
あれだけ共に過ごし話をしてきたローシュには、話は出来るのに話が通じない。
(エカテリーナ様、申し訳ありません)
忸怩たる思いに目が向けられない。
今後自分はどうやって償うべきか、これからは側にいることも叶わなくなる。
その中でいかにして動けばいいか……そんな事を考えている時、驚くべき言葉が聞こえてきた。
「リヴィオとポエットを私の元へ」
空耳? それとも聞き間違いか。
咄嗟の声も出ず、目を丸くしているうちにとんとん拍子で話が進む。
こちらの意思など関係なく了承されていった。
口を挟むことなど許されない俺とポエットは、互いに顔を見合わせるばかりだ。
信じられない気持ちのまま、その後話し合いは終わる。
俺は些か夢見心地で王城を去る準備をした。
最後にローシュと何を話しただろうか。
何も心に残っていないのだから、多分大した話はしていない。
ここで気づく。
自分が気持ちを向けないの者の話など、耳から抜けていくだけで引っかかることなどないのだと。
彼にとって俺は不要な人物だ。
慰謝料を払わずに済むという事で、喜んで差し出されたのもあるだろう、執着などするはずないか。
後任の者に引き継ぐことは何かあるだろうかと考えていたが、「あなたはローシュ様からの信頼をとうの昔に失っていますので、何も聞くことはありません」と拒絶された。
それならそれでいい。
余計な仕事をしなくて済むならば寧ろ楽だ。
俺にとっても彼は重要な人物ではなくなったし。
侍女のリルハもエカテリーナ様との繋がりが薄くなることに、安堵した様子であった。
「ローシュ様の事はお任せください。その代わりエカテリーナ様の事をくれぐれもよろしくお願いしますね」
殊勝な事を言われるが、その言葉の中にやや含みがあるのは口調でわかる。
彼女はローシュ様に近づくことを望んでいたと、ポエットより話は聞いている。
その為エカテリーナ様から離れることをリルハは歓迎しているようだ。
彼女の側で働いて、色々と見てきただろうに。
もの好きとはどこにでもいるようだ。
最早ローシュに関わる事はないから、これ以上彼女と会う事もないだろう。
再びエカテリーナ様の元に現れない事を願う。
ブルックリン侯爵家の者も彼女の変わり身の早さに呆れ、嫌悪を抱く者も多い。もしも今後戻りたい、帰りたいとなっても歓迎する事はないだろう。
王子という肩書に惑わされて少し可哀想ではあるが、自分で選んだ道なのだから最後まで頑張ってほしい。
遠くで見る憧れと近くで見る現実の違いに打ちのめされて悲しい結末を迎えない事を祈るのみだ。
まぁポエットがあれだけ説得したのに強行した彼女だから、それ相応の覚悟は持っている……はず。
それよりも俺は俺自身の今後を新たに考えなくてはならない。
何せブルックリン侯爵家に仕える騎士の一人だと思っていたのに、とんでもない難題が降りかかってきたのだから。
憧れと現実は違う。
婿入りなんて分不相応な問題が来るなんて思いもしなかった。
カルロス様はどうやって国王を説得したのだろうか。
陛下は渋々ながら、という表情をしており心からの納得してはいなさそうだが、ここまで来たら後には引けないだろう。
この場での発言権がない俺は、ただエカテリーナ様達のやり取りを聞くしか出来ないが、なかなか辛い……というか腹立たしい。
ローシュの勝手な持論とエカテリーナ様の思いに、ただ唇を噛み締めて耐えるばかりだ。
だが、これを乗り越えればきっとエカテリーナ様は解放される。
(もうすぐ、もうすぐだ)
嬉しいという反面、別れが近づいていることに心が沈む。
だが俺の気持ちとはまるで違い、ローシュの言葉は煽る様なものばかりで、悲嘆に暮れてばかりはいられなかった。
(この期に及んでも反省の色はないのだな)
賠償する気もなく更に記憶を失った事すらも、エカテリーナ様の非だと言うその神経が、信じられない。
(本当にこの男は、同じ人間なのか? 言葉が話せるだけの別生物ではないのだろうか。エカテリーナ様の為に何かをしてあげたいという思いは浮かばないのか?)
あれだけお世話になって、あれだけの迷惑をかけてのこの言い草。
怒りと、そして自分は今まで一体何をしてきたのかと考えて、落ち込んだ。
結局自分がローシュの為に行なったことなど何一つ彼には響いていないし、言った事の欠片も伝わっていない。
彼の心にはそういったものは、全く残らなかったのだ。
あれだけ共に過ごし話をしてきたローシュには、話は出来るのに話が通じない。
(エカテリーナ様、申し訳ありません)
忸怩たる思いに目が向けられない。
今後自分はどうやって償うべきか、これからは側にいることも叶わなくなる。
その中でいかにして動けばいいか……そんな事を考えている時、驚くべき言葉が聞こえてきた。
「リヴィオとポエットを私の元へ」
空耳? それとも聞き間違いか。
咄嗟の声も出ず、目を丸くしているうちにとんとん拍子で話が進む。
こちらの意思など関係なく了承されていった。
口を挟むことなど許されない俺とポエットは、互いに顔を見合わせるばかりだ。
信じられない気持ちのまま、その後話し合いは終わる。
俺は些か夢見心地で王城を去る準備をした。
最後にローシュと何を話しただろうか。
何も心に残っていないのだから、多分大した話はしていない。
ここで気づく。
自分が気持ちを向けないの者の話など、耳から抜けていくだけで引っかかることなどないのだと。
彼にとって俺は不要な人物だ。
慰謝料を払わずに済むという事で、喜んで差し出されたのもあるだろう、執着などするはずないか。
後任の者に引き継ぐことは何かあるだろうかと考えていたが、「あなたはローシュ様からの信頼をとうの昔に失っていますので、何も聞くことはありません」と拒絶された。
それならそれでいい。
余計な仕事をしなくて済むならば寧ろ楽だ。
俺にとっても彼は重要な人物ではなくなったし。
侍女のリルハもエカテリーナ様との繋がりが薄くなることに、安堵した様子であった。
「ローシュ様の事はお任せください。その代わりエカテリーナ様の事をくれぐれもよろしくお願いしますね」
殊勝な事を言われるが、その言葉の中にやや含みがあるのは口調でわかる。
彼女はローシュ様に近づくことを望んでいたと、ポエットより話は聞いている。
その為エカテリーナ様から離れることをリルハは歓迎しているようだ。
彼女の側で働いて、色々と見てきただろうに。
もの好きとはどこにでもいるようだ。
最早ローシュに関わる事はないから、これ以上彼女と会う事もないだろう。
再びエカテリーナ様の元に現れない事を願う。
ブルックリン侯爵家の者も彼女の変わり身の早さに呆れ、嫌悪を抱く者も多い。もしも今後戻りたい、帰りたいとなっても歓迎する事はないだろう。
王子という肩書に惑わされて少し可哀想ではあるが、自分で選んだ道なのだから最後まで頑張ってほしい。
遠くで見る憧れと近くで見る現実の違いに打ちのめされて悲しい結末を迎えない事を祈るのみだ。
まぁポエットがあれだけ説得したのに強行した彼女だから、それ相応の覚悟は持っている……はず。
それよりも俺は俺自身の今後を新たに考えなくてはならない。
何せブルックリン侯爵家に仕える騎士の一人だと思っていたのに、とんでもない難題が降りかかってきたのだから。
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