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2 海の国の聖人候補
257 大事な傷薬
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257
冒険者ギルドの状況について、爽やかな柑橘系のフルーツジュースを頂きながら、引き続きお伺いする。
(甘味の強いオレンジにすだちとレモンを混ぜたような感じで、気候にも合ういい飲み物なんだけど、正直も少し冷やして、できれば氷も入れてやれば3倍マシで美味しいと思う。惜しい!)
私がちょっと残念な気分になっている間も話は進む。
「今のアキツは、採取専門の冒険者にはどうにも旨味が少ないので、買取が少なくて、本当に困っています。
町から近い場所は住民でも補えますが、魔物の出る山岳地域や無人島となりますと、採取品だけでは、危険度に見合いませんからね」
自らも長く冒険者であったアーセル幹事は、冒険者の心理もよく理解しており、なるべく買取額を上げることで採取依頼の達成率向上を図ってはいるそうだが、なかなか思ったような成果に結び付いていないらしい。
「一番必要とされているのは、なんなのでしょう?」
「ああ、それは、こちらの材料です」
見せてくれたのは、濃い緑色をしたクリーム状の軟膏らしきものが入った瓶だった。
「これは〝傷消し膏〟または〝イワムシ軟膏〟とも呼ばれております。沿海州では必需品の薬なのですが、これの主な材料であるイワムシ草が、常に不足しておりまして……」
漁師が多いこの国では、針などで切り傷を作る人たちがとても多い。しかも、傷を作っても仕事は続けなくてはならないため、普通の薬や包帯を使うわけにもいかない。
〝傷消し膏〟には、患部に塗ることで、傷を覆い水を弾く作用がある。しかも傷の治りも早くなるという、水仕事の多いこの国の人には必需品とも言える薬で、昔からの常備薬だ。
イワムシ草はこれの主成分のひとつで、炎症を抑え水を弾く性質を持っている。だが、名前の通り植物でありながら、虫のように移動してしまうため、決まった群生地がなく、しかも日の当たる高所の崖などを好むため、採取には危険が伴う。
栽培できないかという試みも、長年に渡って色々な人が取り組んできたが、生態について謎な部分が多く、未だ繁殖に成功した例はないそうだ。
「イワムシ草が高騰すれば、〝傷消し膏〟の価格も跳ね上がり、庶民はとても苦しむことになります。まだ、備蓄が多少はございますものの、それもいつまで保つのか……」
私はソーヤの方を振り返って頼みごとをした。
「ソーヤ、イワムシ草採取の依頼札を取って、依頼を受けてきてくれる?」
「かしこまりました!」
ソーヤはすぐに行動してくれた。
「よろしいのですか?1級の冒険者の方が受けられるような依頼ではありませんよ」
アーセル幹事は恐縮しきりだ。
「採取がうまくいくかどうかは分かりませんが、特に期限もない依頼ですし、近いうちにこの国のあちこちをみて回る予定ですので、見つけられましたら、必ず採ってきます。
国では〝アイテム・ハンター〟にスカウトされたこともあるんですよ。
私には採取の才能があるみたいなので、多少はお役に立てると思います」
私の言葉にアーセル幹事は相好を崩して、喜んでくれた。
「さすがは姐さんの見込まれたお方だ。相手のためになる必要なことを、なんのためらいもなく実行される。気負いもなく、ごく普通に……」
そして改めて頭を下げられた。
「イワムシ草はこの国の多くの他の薬にも使われるとても重要な素材です。私共もなくなることのないよう努力致しますが、どうぞ必要量確保のため、お力添えをお願い致します」
私にしてみれば、行き掛けの駄賃というか、《鑑定》強化のための散歩のついでなのだが、久しぶりに採取をしてみるのも面白い。
できればイワムシ草の生態を突き止めて、繁殖の道も探ってみたいものだ。
(では、初めてのアキツ小旅行の準備といきますか)
冒険者ギルドの状況について、爽やかな柑橘系のフルーツジュースを頂きながら、引き続きお伺いする。
(甘味の強いオレンジにすだちとレモンを混ぜたような感じで、気候にも合ういい飲み物なんだけど、正直も少し冷やして、できれば氷も入れてやれば3倍マシで美味しいと思う。惜しい!)
私がちょっと残念な気分になっている間も話は進む。
「今のアキツは、採取専門の冒険者にはどうにも旨味が少ないので、買取が少なくて、本当に困っています。
町から近い場所は住民でも補えますが、魔物の出る山岳地域や無人島となりますと、採取品だけでは、危険度に見合いませんからね」
自らも長く冒険者であったアーセル幹事は、冒険者の心理もよく理解しており、なるべく買取額を上げることで採取依頼の達成率向上を図ってはいるそうだが、なかなか思ったような成果に結び付いていないらしい。
「一番必要とされているのは、なんなのでしょう?」
「ああ、それは、こちらの材料です」
見せてくれたのは、濃い緑色をしたクリーム状の軟膏らしきものが入った瓶だった。
「これは〝傷消し膏〟または〝イワムシ軟膏〟とも呼ばれております。沿海州では必需品の薬なのですが、これの主な材料であるイワムシ草が、常に不足しておりまして……」
漁師が多いこの国では、針などで切り傷を作る人たちがとても多い。しかも、傷を作っても仕事は続けなくてはならないため、普通の薬や包帯を使うわけにもいかない。
〝傷消し膏〟には、患部に塗ることで、傷を覆い水を弾く作用がある。しかも傷の治りも早くなるという、水仕事の多いこの国の人には必需品とも言える薬で、昔からの常備薬だ。
イワムシ草はこれの主成分のひとつで、炎症を抑え水を弾く性質を持っている。だが、名前の通り植物でありながら、虫のように移動してしまうため、決まった群生地がなく、しかも日の当たる高所の崖などを好むため、採取には危険が伴う。
栽培できないかという試みも、長年に渡って色々な人が取り組んできたが、生態について謎な部分が多く、未だ繁殖に成功した例はないそうだ。
「イワムシ草が高騰すれば、〝傷消し膏〟の価格も跳ね上がり、庶民はとても苦しむことになります。まだ、備蓄が多少はございますものの、それもいつまで保つのか……」
私はソーヤの方を振り返って頼みごとをした。
「ソーヤ、イワムシ草採取の依頼札を取って、依頼を受けてきてくれる?」
「かしこまりました!」
ソーヤはすぐに行動してくれた。
「よろしいのですか?1級の冒険者の方が受けられるような依頼ではありませんよ」
アーセル幹事は恐縮しきりだ。
「採取がうまくいくかどうかは分かりませんが、特に期限もない依頼ですし、近いうちにこの国のあちこちをみて回る予定ですので、見つけられましたら、必ず採ってきます。
国では〝アイテム・ハンター〟にスカウトされたこともあるんですよ。
私には採取の才能があるみたいなので、多少はお役に立てると思います」
私の言葉にアーセル幹事は相好を崩して、喜んでくれた。
「さすがは姐さんの見込まれたお方だ。相手のためになる必要なことを、なんのためらいもなく実行される。気負いもなく、ごく普通に……」
そして改めて頭を下げられた。
「イワムシ草はこの国の多くの他の薬にも使われるとても重要な素材です。私共もなくなることのないよう努力致しますが、どうぞ必要量確保のため、お力添えをお願い致します」
私にしてみれば、行き掛けの駄賃というか、《鑑定》強化のための散歩のついでなのだが、久しぶりに採取をしてみるのも面白い。
できればイワムシ草の生態を突き止めて、繁殖の道も探ってみたいものだ。
(では、初めてのアキツ小旅行の準備といきますか)
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