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2 海の国の聖人候補
310 イスの街
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310
のんびりした沿海州からやってくると、イスの喧騒には目眩すら覚える。
毎日がお祭り騒ぎのような、ごったで乱雑で、明るく活気に満ち溢れた街だ。
「なんというか……やっぱりスゴい街だね、ここは」
私は馬車の中から、久しぶりにシド帝国随一の商業地の最近の様子を眺めた。
道行く人は皆小走りでどこかへ急いでいて、あちこちで商談なのか喧嘩なのか分からない大声が飛び交い、荷車は常に猛スピードで行き交っている。
広い通りも人だらけで、それぞれに大きな荷物を抱え、買いに来たのか売りに来たのか、とにかく皆商いのための何かを探し、どこかを目指している。
(ああ、イスだなぁ……)
おじさまには、1週間前、一時帰国する事を伝えた。
私には専属飛行士アタタガ・フライがいる事を知っているおじさまは、急な帰国にも驚かなかった。
(実際は《無限回廊の扉》があるから、もっとお手軽なんだけどね)
だが、私の名はまだまだイスでは有名なままらしく、また騒動でも起こされたら困るとでも思ったのか、マリス邸からサイデム商会までの移動用に馬車まで用意してくれた。
その馬車で移動しながら見るイスの街は、以前より更に活気に溢れ、街も明らかに拡大していた。
サイデムおじさまの名も更に高まり、イスの取引額は増える一方だそうだ。街にもサイデム商会と付き合いのある事を誇らしげに書き記した看板の店がいくつも見えた。
そして、キッペイの報告通り、街にはちょいちょいラーメンらしきモノを売る店が出来始めていた。
行列があるほどの店はないが、人はそれなりに入っている様子だ。
(これは、実際食べてみたいところね……)
私がこっそり抜け出して、イスのラーメン屋探訪に出かける算段を考えていると、窓から見える景色が変わり、人の流れが少し落ち着いてきた。どうやら、高級店ひしめくイスの目抜き通り〝ヘステスト大通り〟へ入ったようだ。
おじさまは、今日は店に詰めているというので、サイデム商会へ向かう。
店前で馬車を降りると、既にキッペイが迎えに出ていた。
「お久しぶりでございます。お待ちしておりました。では、早速こちらへ……」
あえて私の名を出さず、そのまま混雑する店内を目立たないように案内するキッペイ。
私も目深に帽子を被った姿で、足早に移動する。
おじさまの執務室に入った時には、ミッションクリアの安堵感で大きなため息をついてしまった。
全くもって気が疲れることだ。
おじさまは相変わらず書類に埋もれて、千手観音の如き仕事ぶり。遠い沿海州から戻ってきた(わけじゃないけど)というのに、こっちを見もしない。
「相変わらずねぇ……」
私はおじさまの仕事が落ち着くのを待つ間に、今回の目的である料理の仕上げを部屋付きの小さなキッチンで始めることにした。
キッペイはおじさまの手伝いに戻ったので、助手はいつもの通りソーヤだ。
今回は味噌ラーメンもバージョンアップ、牛骨の出汁と魚介の出汁のダブルスープに、3種類の味噌をブレンドし、具材も数種の食感の良い野菜をたっぷり乗せてある。
ダブルスープで旨味は確実に上がっている上、複数の味噌でコクも増した。そして、その全てを異世界産で賄うことができるようになった。
「これは……感服です。素晴らしい味を作り上げられましたね。
このとろみすら感じる濃厚さ、今までのスープの中でも最も強い味が致しますのに、次から次へと飲みたくなる不思議な魔力がございます。そして呑み下すのがもったいないとさえ思える、この芳醇な味噌とバターの香り……極められましたね、メイロードさま!」
スープの味見をしたソーヤも満足げだ。
今まで、ずっと味見役を続けてきたソーヤの評価なら、きっとそうなのだと思える。今日は自信の一杯を出すことができるだろう。
そして、もうひとつ、懸案の一杯も出すつもりだ。
(おじさまの評価が楽しみね)
私は麺を茹でるための大量のお湯を用意しながら、でも食事がラーメンだけで終わらないよう、色々と栄養のある副菜の準備をしながら、おじさまのお仕事がひと段落するのを待ちつつ、ソーヤとスープ談義に花を咲かせていた。
のんびりした沿海州からやってくると、イスの喧騒には目眩すら覚える。
毎日がお祭り騒ぎのような、ごったで乱雑で、明るく活気に満ち溢れた街だ。
「なんというか……やっぱりスゴい街だね、ここは」
私は馬車の中から、久しぶりにシド帝国随一の商業地の最近の様子を眺めた。
道行く人は皆小走りでどこかへ急いでいて、あちこちで商談なのか喧嘩なのか分からない大声が飛び交い、荷車は常に猛スピードで行き交っている。
広い通りも人だらけで、それぞれに大きな荷物を抱え、買いに来たのか売りに来たのか、とにかく皆商いのための何かを探し、どこかを目指している。
(ああ、イスだなぁ……)
おじさまには、1週間前、一時帰国する事を伝えた。
私には専属飛行士アタタガ・フライがいる事を知っているおじさまは、急な帰国にも驚かなかった。
(実際は《無限回廊の扉》があるから、もっとお手軽なんだけどね)
だが、私の名はまだまだイスでは有名なままらしく、また騒動でも起こされたら困るとでも思ったのか、マリス邸からサイデム商会までの移動用に馬車まで用意してくれた。
その馬車で移動しながら見るイスの街は、以前より更に活気に溢れ、街も明らかに拡大していた。
サイデムおじさまの名も更に高まり、イスの取引額は増える一方だそうだ。街にもサイデム商会と付き合いのある事を誇らしげに書き記した看板の店がいくつも見えた。
そして、キッペイの報告通り、街にはちょいちょいラーメンらしきモノを売る店が出来始めていた。
行列があるほどの店はないが、人はそれなりに入っている様子だ。
(これは、実際食べてみたいところね……)
私がこっそり抜け出して、イスのラーメン屋探訪に出かける算段を考えていると、窓から見える景色が変わり、人の流れが少し落ち着いてきた。どうやら、高級店ひしめくイスの目抜き通り〝ヘステスト大通り〟へ入ったようだ。
おじさまは、今日は店に詰めているというので、サイデム商会へ向かう。
店前で馬車を降りると、既にキッペイが迎えに出ていた。
「お久しぶりでございます。お待ちしておりました。では、早速こちらへ……」
あえて私の名を出さず、そのまま混雑する店内を目立たないように案内するキッペイ。
私も目深に帽子を被った姿で、足早に移動する。
おじさまの執務室に入った時には、ミッションクリアの安堵感で大きなため息をついてしまった。
全くもって気が疲れることだ。
おじさまは相変わらず書類に埋もれて、千手観音の如き仕事ぶり。遠い沿海州から戻ってきた(わけじゃないけど)というのに、こっちを見もしない。
「相変わらずねぇ……」
私はおじさまの仕事が落ち着くのを待つ間に、今回の目的である料理の仕上げを部屋付きの小さなキッチンで始めることにした。
キッペイはおじさまの手伝いに戻ったので、助手はいつもの通りソーヤだ。
今回は味噌ラーメンもバージョンアップ、牛骨の出汁と魚介の出汁のダブルスープに、3種類の味噌をブレンドし、具材も数種の食感の良い野菜をたっぷり乗せてある。
ダブルスープで旨味は確実に上がっている上、複数の味噌でコクも増した。そして、その全てを異世界産で賄うことができるようになった。
「これは……感服です。素晴らしい味を作り上げられましたね。
このとろみすら感じる濃厚さ、今までのスープの中でも最も強い味が致しますのに、次から次へと飲みたくなる不思議な魔力がございます。そして呑み下すのがもったいないとさえ思える、この芳醇な味噌とバターの香り……極められましたね、メイロードさま!」
スープの味見をしたソーヤも満足げだ。
今まで、ずっと味見役を続けてきたソーヤの評価なら、きっとそうなのだと思える。今日は自信の一杯を出すことができるだろう。
そして、もうひとつ、懸案の一杯も出すつもりだ。
(おじさまの評価が楽しみね)
私は麺を茹でるための大量のお湯を用意しながら、でも食事がラーメンだけで終わらないよう、色々と栄養のある副菜の準備をしながら、おじさまのお仕事がひと段落するのを待ちつつ、ソーヤとスープ談義に花を咲かせていた。
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