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3 魔法学校の聖人候補
403 貴族の権利の活用法
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403
「ちょっとちょっと! これも食べてよ。めっちゃうまいから!!」
ほっこりしているみんなに、笑いながら今度はザイクが料理を指差す。
「これ、この白身の魚にかかっている緑のやつなんだけどさ。俺の故郷の山菜〝キキロウ〟っていうやつなんだけど、いい香りだろう?それに、甘みがあるんだよ。そのままサラダでも食べるんだけど、これと塩気を合わせると魚と相性抜群でさ。ほら、試してよ!」
ザイクは山を背にした海辺の町の出身で、その山で採れる〝キキロウ〟という山菜は、爽やかな香りとわずかな甘みを持ち、地元では日常食だが、他の地方では採れないため、知る人は少ない山菜だ。
「本当に、爽やかな香りですね。この美しい緑のソースは、甘みと辛味が複雑に絡み合っていて、本当に美味しいですね」
サンス嬢、美味しそうにソースを味わいながら、こんがり焼かれた魚の小さな切り身を口に運んだ。
「この色が綺麗よね。食欲をそそる香りに、この甘辛味!美味しい!」
「ああ、これももっと食べたいですね」
「へぇ、魚にこんな食べ方もあるんだな」
こちらは〝白身魚ソテーの〝キキロウ〟ソース添え〟山菜の持つ爽やかさが映える一品だ。
そう、今日のお茶会の最初に、皆んなの地元の食材を取り入れる。
これが、今回のアイディアだ。
人は自分がよく知っていることには饒舌になるものだ。増してそこに思い出や郷土愛が加われば、臆することなくそれを語ってくれる。
それが、お互いの出自や環境を知ることになり、短い時間でお互いへの理解を深めることにつながる。一気に距離を詰めるには、悪くない方法だろう。
(まぁ、かなり無理はしたけど、あるモノは使わなくちゃね)
お茶会の準備期間は10日ほど。私はまずセーヤとソーヤに、出席者の出身地を調べてもらった。
そして、速攻でイスに連絡し、サイデムおじさまに〝天舟〟を借りた。
以前、首都パレスへの移動に使ったことのあるこの魔石を使った移動設備は、貴族しか所有を許されていない。作るための費用も高額なため、持っている貴族はそう多くないと言われている、なかなかの貴重品だ。
それをおじさまは貴族になると、すぐに建造し始め、既に3隻を完成させている。なんでも、5隻以上になると、軍部からの圧力が掛かるらしく、あと2隻で打ち止めだと残念そうにしていた。
「弱い立場の一貴族に持たせすぎるのは、軍事的に問題なんだとさ。まぁ、一代限りの男爵だ。こんなもんだろうよ。まぁ、5隻揃えば、特急の輸送網もある程度作れる算段だしな。
我慢するさ、いまはな」
最初からおじさまは自分の移動のためではなく、新しい高速輸送網を作ることを考えて〝天舟〟の建造をしている。これまでの3隻も徐々に大型化させてきており、これからおじさまが造る〝天舟〟は、これまでに類をみない輸送力を持った巨大なものになるそうだ。
貴族の特権である〝天舟所有も、仕事を効率化する手段でしかないところが、いかにもサイデムおじさまらしい。
「いいだろう、一隻貸してやるよ。メイロードの貸してくれたアタタガ・フライにも世話になったしな」
そう言って許可してもらい1週間借りた〝天舟〟にアタタガ・フライを加え、国中に散って食材を集めてきたのだ。
〝天舟〟とアタタガの移動箱には、あらかじめ《無限回廊の扉》を設置しておいたので、私は地図を作ってソーヤとアタタガに行き先を伝え、到着したら知らせてもらい現地調査と調達、という作業を繰り返し、素材を手に入れた。
忙しくはあったが色々な地方を旅できるのは楽しかったし、現地に《無限回廊の扉》を見つからないよう設置してきたので、かなり色々な場所へ楽に移動できるようになったのも嬉しい。これからも、この美味しい地方名産は活用させてもらうつもりだ。
こうやって集めてきた食材で、私が特急でレシピを作成し、郷土色の強いひと口オードブルが並ぶこのひと皿を作り上げたのだ。
トルルの一品は、砕いた名産の〝アムの実〟をはじめとする木ノ実の蜂蜜漬けを細かく砕いたものをパイと軽いクリームの層に入れ込んだ〝木の実のミルフィーユ地物の蜂蜜風味〟
「これはアムの実も美味しいんだけど、この蜂蜜も美味しいの。私の町の周囲にだけ咲いている〝アムリネール〟っていう綺麗な花の蜜なの。いい香りでしょ?」
美味しそうに一口サイズのミルフィーユを頬張りながら、トルルも自慢げだ。
「スッキリした甘みの蜂蜜だね。ナッツもうまいな」
「香りもいいよね。木の実との相性が抜群」
「パイのサクサクにナッツのコリコリに蜂蜜とクリームのねっとり感。美味しい!」
そして、次はオーライリの街〝イス〟の味だ。
串に刺された黄色と白のキューブの間には緑の鮮やかなキュウリのような野菜。
〝熟成チーズとモッツアレラチーズの野菜ピクルス添え〟だ。
オーライリはそれを美味しそうに食べてから、それはそれは自慢げに語り始めた。
「これはチーズというものです。乳製品の巨大基地になってきているイスでも、まだチーズは高級品なのですけど、そのまま食しても、他の素材と合わせてもとても美味しいので、徐々に広まってきているの。これは、時間をかけて熟成させたものと、新鮮な牛乳で作る2つのチーズ。このピクルスというハーブと酢で漬け込んだ野菜は保存も良くて美味しいので、最近普及してきているわ。どうどう?美味しいでしょう!」
自慢げなオーライリに、みんなも賛同して頷く。
「これは、黄色いのはすごく濃厚で、白いのはサッパリしていて、どちらも美味しいよ」
「イスでもまだ普及の途中じゃ、私たちの街にはまだまだ伝わっては来ないでしょうね。残念!」
「牛乳だって、魔法学校に入って初めて飲んだもんな、俺……」
話は盛り上がり、お茶も進む。
「じゃ、次のこれはサンスさんに関連するのかな……」
スプーンに乗った三色のゼリー状のものを見たクローナ・サンス嬢は少し悲しげな表情でこう言った。
「ごめんなさい。私、それを食べたことはないの」
「ちょっとちょっと! これも食べてよ。めっちゃうまいから!!」
ほっこりしているみんなに、笑いながら今度はザイクが料理を指差す。
「これ、この白身の魚にかかっている緑のやつなんだけどさ。俺の故郷の山菜〝キキロウ〟っていうやつなんだけど、いい香りだろう?それに、甘みがあるんだよ。そのままサラダでも食べるんだけど、これと塩気を合わせると魚と相性抜群でさ。ほら、試してよ!」
ザイクは山を背にした海辺の町の出身で、その山で採れる〝キキロウ〟という山菜は、爽やかな香りとわずかな甘みを持ち、地元では日常食だが、他の地方では採れないため、知る人は少ない山菜だ。
「本当に、爽やかな香りですね。この美しい緑のソースは、甘みと辛味が複雑に絡み合っていて、本当に美味しいですね」
サンス嬢、美味しそうにソースを味わいながら、こんがり焼かれた魚の小さな切り身を口に運んだ。
「この色が綺麗よね。食欲をそそる香りに、この甘辛味!美味しい!」
「ああ、これももっと食べたいですね」
「へぇ、魚にこんな食べ方もあるんだな」
こちらは〝白身魚ソテーの〝キキロウ〟ソース添え〟山菜の持つ爽やかさが映える一品だ。
そう、今日のお茶会の最初に、皆んなの地元の食材を取り入れる。
これが、今回のアイディアだ。
人は自分がよく知っていることには饒舌になるものだ。増してそこに思い出や郷土愛が加われば、臆することなくそれを語ってくれる。
それが、お互いの出自や環境を知ることになり、短い時間でお互いへの理解を深めることにつながる。一気に距離を詰めるには、悪くない方法だろう。
(まぁ、かなり無理はしたけど、あるモノは使わなくちゃね)
お茶会の準備期間は10日ほど。私はまずセーヤとソーヤに、出席者の出身地を調べてもらった。
そして、速攻でイスに連絡し、サイデムおじさまに〝天舟〟を借りた。
以前、首都パレスへの移動に使ったことのあるこの魔石を使った移動設備は、貴族しか所有を許されていない。作るための費用も高額なため、持っている貴族はそう多くないと言われている、なかなかの貴重品だ。
それをおじさまは貴族になると、すぐに建造し始め、既に3隻を完成させている。なんでも、5隻以上になると、軍部からの圧力が掛かるらしく、あと2隻で打ち止めだと残念そうにしていた。
「弱い立場の一貴族に持たせすぎるのは、軍事的に問題なんだとさ。まぁ、一代限りの男爵だ。こんなもんだろうよ。まぁ、5隻揃えば、特急の輸送網もある程度作れる算段だしな。
我慢するさ、いまはな」
最初からおじさまは自分の移動のためではなく、新しい高速輸送網を作ることを考えて〝天舟〟の建造をしている。これまでの3隻も徐々に大型化させてきており、これからおじさまが造る〝天舟〟は、これまでに類をみない輸送力を持った巨大なものになるそうだ。
貴族の特権である〝天舟所有も、仕事を効率化する手段でしかないところが、いかにもサイデムおじさまらしい。
「いいだろう、一隻貸してやるよ。メイロードの貸してくれたアタタガ・フライにも世話になったしな」
そう言って許可してもらい1週間借りた〝天舟〟にアタタガ・フライを加え、国中に散って食材を集めてきたのだ。
〝天舟〟とアタタガの移動箱には、あらかじめ《無限回廊の扉》を設置しておいたので、私は地図を作ってソーヤとアタタガに行き先を伝え、到着したら知らせてもらい現地調査と調達、という作業を繰り返し、素材を手に入れた。
忙しくはあったが色々な地方を旅できるのは楽しかったし、現地に《無限回廊の扉》を見つからないよう設置してきたので、かなり色々な場所へ楽に移動できるようになったのも嬉しい。これからも、この美味しい地方名産は活用させてもらうつもりだ。
こうやって集めてきた食材で、私が特急でレシピを作成し、郷土色の強いひと口オードブルが並ぶこのひと皿を作り上げたのだ。
トルルの一品は、砕いた名産の〝アムの実〟をはじめとする木ノ実の蜂蜜漬けを細かく砕いたものをパイと軽いクリームの層に入れ込んだ〝木の実のミルフィーユ地物の蜂蜜風味〟
「これはアムの実も美味しいんだけど、この蜂蜜も美味しいの。私の町の周囲にだけ咲いている〝アムリネール〟っていう綺麗な花の蜜なの。いい香りでしょ?」
美味しそうに一口サイズのミルフィーユを頬張りながら、トルルも自慢げだ。
「スッキリした甘みの蜂蜜だね。ナッツもうまいな」
「香りもいいよね。木の実との相性が抜群」
「パイのサクサクにナッツのコリコリに蜂蜜とクリームのねっとり感。美味しい!」
そして、次はオーライリの街〝イス〟の味だ。
串に刺された黄色と白のキューブの間には緑の鮮やかなキュウリのような野菜。
〝熟成チーズとモッツアレラチーズの野菜ピクルス添え〟だ。
オーライリはそれを美味しそうに食べてから、それはそれは自慢げに語り始めた。
「これはチーズというものです。乳製品の巨大基地になってきているイスでも、まだチーズは高級品なのですけど、そのまま食しても、他の素材と合わせてもとても美味しいので、徐々に広まってきているの。これは、時間をかけて熟成させたものと、新鮮な牛乳で作る2つのチーズ。このピクルスというハーブと酢で漬け込んだ野菜は保存も良くて美味しいので、最近普及してきているわ。どうどう?美味しいでしょう!」
自慢げなオーライリに、みんなも賛同して頷く。
「これは、黄色いのはすごく濃厚で、白いのはサッパリしていて、どちらも美味しいよ」
「イスでもまだ普及の途中じゃ、私たちの街にはまだまだ伝わっては来ないでしょうね。残念!」
「牛乳だって、魔法学校に入って初めて飲んだもんな、俺……」
話は盛り上がり、お茶も進む。
「じゃ、次のこれはサンスさんに関連するのかな……」
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「ごめんなさい。私、それを食べたことはないの」
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