利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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3 魔法学校の聖人候補

404 貴族のお友達

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404

クローナ・サンス嬢の前に置かれた皇室御用達の陶磁器工房に特別に作らせた草花の意匠の豪華な皿には、切り分けられた美しく鮮やかな黄色と赤と紫の花弁が入ったプルプルの透き通ったゼリー。

「ああ、これとってもいい香り。それに、甘みがあって爽やかね。すごく美味しい!」

最初に食べたオーライリが絶賛すると、皆次々に口をつけて美味しさを噛み締めている。

私も皆と一緒に、その甘くて芳しい花の香りのするゼリーをゆっくり食べてから、こう話し始めた。

「皆さんの懐かしい味を探して、私なりにお茶会に合うような食べやすい料理にしてみました。どれも、美味しくて面白い素材ばかりで、料理を考えるのがとても楽しかったです」

私の言葉に皆頷きながら、耳を傾けてくれる。

「今日の料理のため、クローナ様の御領地についても、私少しだけ調べたのですよ。
クローナ様のお育ちになったサンス伯爵家の領地は、天然資源には恵まれているのですが、決して豊かな地ばかりというわけではないようでした。鉱山や山林には恵まれているので、輸出品は豊富なのですが、耕作面積はあまり取れず、食物の収穫量が少な目の土地で、天候に恵まれない年には、領民たちは食料の確保に苦労しているそうです。
でも、そんな中でも人は楽しみを見つけるものです。

色鮮やかなこの野生の花は、観賞用として人々の生活を潤していました。でも……」

「私……知らないわ……これが我が家の領地に?」

私は〝ミシャ〟という名の美しい花々を盛り付けたドーナッツ型の大きなゼリーの皿を、再度サンス嬢の前に運ばせた。こうすると、花の美しさが際立ち、ゼリーの中に踊る花弁が更に色鮮やかに見える。

「これは〝エディブル・フラワー〟という、食用の花なのです。これは、貴族の手入れされた庭園にある花ではない、野山に咲く花です。この〝ミシャ〟について街の方々は、ご城主様に食べさせられるようなものではないとおっしゃっていました。なぜなら、昔、街に起こった飢饉の時に食べ始めたものだから……と」

「飢饉?」

「ええ、クローナ様がお生まれになるより以前、あの土地では天変地異により、何度かひどい飢饉があったそうなのです。その時、人々が食べて飢えをしのぐ助けとなったのが、この〝ミシャ〟の花を食べ始めたきっかけだったそうです。

このように美しい上、良い香りとかすかな甘みのある花弁を持つ花ですが、人々には過去の辛い記憶を思い起こさせる花でもあるようでした。それでも、人々はこの花を大事に育て食文化に取り込んで、起こるかもしれない次の飢饉に備えているのです。彼らはジャムなどにしたり、サラダにしたりして食しているようですが、今回は私流に作ってみました。さぁ、どうぞ」

花のゼリーは目の前で切り分けられ、今度は生クリームと〝ミシャ〟の花で飾り、皆の前に供された。

「どこも、不作には悩まされるわよね。私の地方は木ノ実を保存食にしているの。木の実が取れる木々は大事に育てられているのよ」

トルルがそう言うと、みんな自分たちの地方の保存食のことや天災にあった経験について話し始めた。

クローナ・サンス嬢は、皆の話を熱心に聴きながら、城主の家がそういった災害の時どういった動きをし、人々を助けるために動くのかを話してくれた。

「税として領民たちが治めている穀物は、穀物庫に蓄えられるわ。もちろん、売ったりもするけれど、非常時のための備蓄は怠らない。そういう非常時に動いてもらうための私兵も常時訓練させているのよ。もちろん彼らの生活も保証しなければならないし、コトが起こった時に必要な財産も準備して、国からの助けを得られるよう、しっかり社交に勤めて中央との良好な関係も維持しなきゃいけない」

「貴族って、大変なんだな……」

ライアンがゼリーを食べながら、そう呟いた。

「私たちは、貴族の役割を知らなさすぎなのかもね。こうして話してみなかったら、知らないままだったかも……」

トルルが、クローナ嬢に貴族について思っていた素朴な質問を始めると、皆次々に質問を始め、クローナ嬢は普段聞かれたこともないだろうその質問に、楽しげに答えていった。

「生まれた時から、結婚する相手が決まっているって本当?」

「ええ、そういう方は多いです。基本的に、貴族の結婚は政治ですから、そういうものだと言われて育ちますしね」

「家に風呂があるって聞いたんだけど、本当か?」

「はい、というか、ないお宅があるのですか?」

ないない、と手を振るみんなの様子に逆に驚くサンス嬢。

そんな感じで、なかなか楽しく異文化交流的な会話をしつつ、さらにお茶を飲み美味しく料理を食べていった。

そして日が傾きかけるまで、みんなで楽しく語り合い、最後には、ぜひまたみんなで楽しく喋りましょうと約束してお茶会を終えた。

「今日はとても勉強になりました。良い経験をさせて頂きましたわ。ありがとう、マリスさん。
〝ミシャ〟の花のこと、国へ戻ったらしっかり聞いてみます。
今度は、私がお茶会にご招待致しますから、是非いらしてくださいね」

最後には、とてもいい笑顔で微笑んだクローナ嬢は、皆にできればクローナと呼んで欲しいと言い出した。

「学校の外では難しいかもしれませんが、この学校ではただの学友ではありませんか。〝様〟呼びは、敬意は感じますが寂しいものです。是非、あなた方だけでも〝クローナ〟と呼んでください」

「わかったよ、これからもよろしく、クローナ!」
「ええ、これからも、生徒会で頑張りましょうね、クローナ」

私は、若輩の年少者ですので……と言葉を濁しつつ、一応、お互い〝さん〟付けということにしてもらった。クローナも確かに年上の貴族を呼び捨てにはし難いだろうと、ちょっと寂しげだったが、一応納得してくれた。

トルルとオーライリは早速親しげに話しかけ、クローナは照れながらも嬉しそうだ。

「でも、勉強では負けませんからね。特にメイロード・マリスさん、あなたにはね!」

私は、ハイハイと受け流してクローナにお土産のパウンドケーキを渡し、みんなにも配りながら挨拶をして、このちょっとだけ貴族風のお茶会を終えた。

そして楽しい余韻の中、セーヤ・ソーヤと一緒に片付けをしていると、オーライリがひとりで戻ってきた。

私はなんとなく予感があったので、片付けを2人に任せて、東屋の端っこでオーライリと向かい合った。
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