利己的な聖人候補~とりあえず異世界でワガママさせてもらいます

やまなぎ

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3 魔法学校の聖人候補

491 料理相談

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491

(さて、新作料理は何にしよう?)

思わぬ展開からおじさま主催のパーティー料理を考えることになってしまった私は、久しぶりに〝大地の恵み〟亭にやってきた。

この店は、いまではパレスにまで評判が及ぶ有名レストランになっている。ここで働きたいという料理人も多いが、ここは少数精鋭、席数も増やさない方針だ。
このレストランには私の知識を活かした料理を出して、この世界の人たちの反応を見るという役割もあるため、斬新で美味な料理が食べられると、広く知られてきた。珍しい食材を多く使っているし、素材へのこだわりもあるため、かなりお高めの価格設定にしているので、それに見合う接客が必要とされる。もちろん食器やリネン、調度品に至るまで細かく気を配らなければいけない。となれば、目が行き届く数のテーブル以上の店にはできないし、それでいいと思っている。

良いのか悪いのか、予約の取りにくさが高級店の証、というところもあって、席数が少なくなかなか予約が取れないことも、この店を有名にしている。オーナーであるサイデムおじさまのところには、貴族や取引先からなんとかして予約を取ってくれという話が舞い込むのが日常だ。そういった人々に恩を売るために、実は〝大地の恵み〟亭には隠し部屋があり、そこはサイデムおじさまがいつでも使えるようになっている。おじさまは上手くこの隠し部屋を使って恩を売り、交渉ごとなどを有利に進め、人脈も広げているそうだ。

(さすがおじさま、抜け目がない)

「この店には、身分の高い方も多くいらっしゃいますから、メイロード様のご指示通り、予約は厳密に管理しすべての方のお名前を事前に頂戴しているのですが、この間ちょっとした揉め事がございました」

フロアの責任者を務めてくれているマンデルさんが話してくれたところによると、男女2人の予約客の女性の方が別人になっていたのだそうだ。しかも、その時の担当はそれをわかっていながら席に通してしまうところだったという。

「なぜなのかわかりませんが、そのお客様の望みを叶えて差し上げたい、と思ってしまったとその時の接客担当は申しておりました。私が気づきましてご予約の名前を再度確認させていただきたいと申し上げ、入り口でお話を伺おう致しましたら、その女性のお客様は〝気分を害したからもういい〟とおっしゃって、そのままお帰りになってしまわれたのでございます」

「もしかして、その予約と名前の違うお客様は〝リナ〟さんとおっしゃいませんでしたか?」

私の言葉にマンデルさんは驚き、そして頷いた。

おそらくその接客担当にも《魅了》を使い、なんとかこの予約の取れない名店へ入ろうとしたのだろうが、あれこれ聞かれそうな状況になり撤退した、というところだろう。サガン・サイデム肝入りのこの店でトラブルを起こしたという印象を残したくなかったのかもしれない。

「また現れるようなことがあったらしい気をつけてね。この人は魔法で人を動かせるらしいから……
あ、これ簡易的なものだけど〝護符〟ね。グッケンス博士が作ってくれたもので簡単な魔法なら防げるそうだから、もし〝リナ〟さんがまた現れた時には使ってみて」

実のところこの〝護符〟には、大した効果はないのだが《魅了》のような精神に作用する力には、〝対抗できる何かを持っている〟と思うだけで効果があるというので、渡してみた。マンデルさんは、ありがたそうに護符を受け取ると、まじまじとそれを見つめている。

「そのような危険な方でしたか。予約にない方を通しそうになってしまった給仕も大変反省しておりましたが、そうでしたか……。まさか魔法でそのようなことをされるとは思っておりませんでした。給仕たちにも、お客様への対応を今一度確認させて、この〝護符〟のことも伝えます。ありがとうございます、メイロードさま」

その後は、閉店した店で料理人たちとイスのサイデム邸で開かれるパーティー料理の相談。

「今回は立式のパーティーです。美味しいお料理の披露が目玉ですから、ライブキッチンも行うつもりです。3種類の味の一口ラーメンを作り、トッピングの種類を増やして、それぞれがオリジナルのラーメンを作れるようにします。味噌、濃厚豚骨風、海鮮塩味をさらに磨き上げて提供しましょう。

オードブルには、地方の名産品を取り入れて目先の変わったものを準備します。もちろんこのお店の定番料理もパーティー向けにアレンジして作りましょう。

チーズ料理は、キッシュのようにケーキ仕立てにして、一口サイズにして食べやすく、デザートの種類はさっぱりからこってりまで、種類を増やします。ベリー、生クリーム、チーズ、この辺りを組み合わせてね。こちらの〝ゼラチン〟はまだほとんど流通していないものだけど、お菓子の良いアクセントになります。いくつか私の作ったものとレシピを置いていくので、これも試してみてね」

牛の飼育が本格化してきたとはいえ、まだまだゼラチンは食用としては流通していない。絶対量が少ないことと、薬などの医療用の需要を優先したほうがいいという判断で流通を制限しているからだ。今回のものも博士から〝試験用〟として横流ししてもらったものだ。これを使ったプルプルのデザートはきっと驚かれるだろう。

マジックバッグから取り出して、机に並べられたゼラチンを使った色とりどりのデザートに、料理人たちは歓声をあげた。

「透明な水の中に花が浮かんでいるとは、幻想的ですね」
「こちらの赤いものはベリーとあわせているのですね。このコントラストは美しい」

すでに私の料理に親しんでいる料理人たちは、ひとしきり眺めたり味見をした後には、私の意図をすぐにわかってくれ、レシピを渡すとすぐに試作に入ってくれた。

(魔法学校で作った料理も上手くアレンジして使えそうだし、これで、お料理は大丈夫かな……では、いよいよパーティーだ!)
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