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3 魔法学校の聖人候補
511 冒険者ギルドとの交渉
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〝助けさせろぉー!!〟という駄々っ子攻撃は成功し、私のキングリザード討伐参戦は長老に認められた。
ただし、恩のある私を危険な目に合わせることだけはできないとニパと長老からキツく言われてしまったので、そこは譲ることにし後方支援に徹するということで手を打つことにした。
(まぁ、そうは言ってもその気になれば《幻影魔法》でいくらでも隠れて近づけるんだけどね)
さて、いよいよ討伐が始まる現在のニパたちの戦力だが、集落で猟師として動ける者は経験の浅い年若のニパや引退寸前の人まで含めても21名。しかも主力だった4名を欠いている。
冒険者ギルドが百人規模の討伐隊を考えていることからも、あのキングリザードに立ち向かうには、確かにかなり心もとない人数だ。だがニパたちには他にはない強みがある。
「俺たちにはリザード用の特殊な仕掛けや武器があります。リザードの狩りは何百回としていますし、この間はそのつもりでなかったのであまり多く持っていなかったですが、しっかり準備さえできていればそう簡単に負けやしませんよ。確かに強敵ですが、急所や弱点はわかってますから」
私は彼らに、リザードの硬い鱗の間へ差し込んでダメージを与える複雑な返しのついた長い槍のような武器と、それに塗布するという毒薬としびれ薬が混ざった彼ら独自の薬も見せてもらった。
「あの鎧のような鱗の下は普通の動物と変わらないので、そこに到達できればある程度の傷が付けられます。その傷からこの薬を徐々に染み込ませることで、奴の動きを鈍らせ思考力も奪えるんです。リザードにこの薬が効くことは経験上わかっているんですよ。ただ、あの大きさだとどれぐらい打ち込む必要があるのか、それが不安ではあります。これで動きが鈍ってくれればいいのですけど……」
彼らの大物狩りの戦法は基本的に〝ヒット&アウェイ〟というやり方だ。近づいて攻撃したら、離れて追わせるを繰り返し、毒矢を打ち込んだり、切り傷をつけて血を流させたりしながら、徐々に相手の体力を削いで追い込んでいく。時間はかかるが、危険が少なく獲物にもあまり傷を負わせることなく仕留められる。リザードの肉は食用にしないので毒を使えるが、大事な商品となる鱗にはなるべく傷をつけることなく捕獲したい。いかにも狩猟を生活の糧にする彼ららしい作戦だ。
「大丈夫です。エサも食べられず、まだ万全じゃない状況のあいつなら、この方法で仕留められるはずです!」
ニパを始め、猟師たちはそう言うが、今回のキングリザードは相当の規格外だ。
(この短期間でも、どれほど回復しているのか未知数だし、手負いでも相当な暴れっぷりだった。いくつか保険が欲しいな……)
「準備にはまだ時間がかかるのよね」
「はい。槍の準備に後2日はかかると思います」
ニパの言葉にうなづいた私は、とりあえず魔法学校へ戻ることにした。長老に頼み、空き家を借りた私は〝決して中の入らないように〟と集落の方にお願いして、部屋の内側から鍵をかけ、ついでに《石壁》という魔法で部屋の内側に石でできた壁を立てた。それから、魔法使いのやるおかしなことはあまり気にしないようにとも言い添えた。
(ちょっと危ないこともする予定だから、好奇心の強い子供たちを巻き込んだりしないように、なるべく秘密裏に行動したほうがいいよね)
《無限回廊の扉》を使って魔法学校へと戻った私は、早速保険のためのいくつかの仕掛けを整えるため、まずは冒険者ギルドと商人ギルドに赴き、いくつかの交渉を行うことにした。
まず冒険者ギルドで行ったのは〝自作自演〟だ。
開口一番、私はギルドマスターのキッタダさんに、私個人でキングリザードの討伐依頼を出したい、と持ちかけた。
「こちらでも討伐隊の準備を進められていると思いますので一応お知らせに上がりました。私の知り合いのいる集落が危険にさらされております。とてもこちらでの討伐隊の編成が終わるまでは待っていられませんから!」
当然キッタダさんは大慌てだ。
「いや、それは困ります。これはこの街の危険でもございますから、これを個人で受け負われては、私共が何もしなかったことになってしまいます。それでは冒険者ギルドとして無責任のそしりを受けるでしょう」
「でも、実際一両日中に動くことはできないのでしょう?」
「うっ……、はい、それはそうなのでございますが……」
そこで私は、ふといま思いつきましたという雰囲気を出しながらこう言った。
「それは困りましたね……ではこうしたらどうでしょう。実は私にはキングリザード討伐の専門家のアテがあるのです。いま討伐依頼を出せば、彼らは2日後には討伐のための行動に入ると確約してくれています。そういう事情ならば、彼らに冒険者ギルドから依頼を出していただけませんか。それであなた方の面目も立つでしょう」
「ええ!! そんなことが可能なのでござますか?!」
私は余裕綽々という雰囲気を出しながら、ゆっくりと満面の笑顔で頷いた。もうここは、自信満々に見せるしかない。
「これは私のツテで依頼をする予定だった特別な案件ですが、私は別に〝人喰い〟キングリザードの討伐の名誉や実績が欲しいわけではありません。できれば私が直接優秀な彼らへ依頼を出したかったですが、それであなた方の面目が保てるのであれば、依頼元はお譲りいたしましょう」
私はものすごく寛大な人物になったつもりで、冒険者ギルドのためを考えていますよ、という雰囲気を醸し出しながら笑顔で続けた。
「それに……最悪彼らが失敗したところで、いまはまだ討伐隊の募集すらかけてもいない状況ではありませんか。成功すればそれでよし。失敗すれば粛々と、次の討伐隊を編成なされば良いのです」
そう、まだキングリザード討伐については、注意喚起以外は公のリアクションはなんら取れてない冒険者ギルド。ニパたちがうまく打ち取れれば、迅速な対応と大いに面目を施せるし、仮に失敗しても何事もなかったかのように準備を進めていけばいいだけだ。
ニパたちへの依頼準備金は私が用意、報酬については討伐後に改めて相談とした。
「この危険な討伐について、正当な対価を支払っていただけることを信じておりますわ」
私の言葉にキッタダさんは、とても真剣な顔で頷き、
「私の名に賭けまして……」
と、確約してくれた。そのあと、私が商人ギルドへも話を通しに行くつもりだというと、キッダタさんに全力で止められた。すべての交渉は冒険者ギルドを通して公正に行い、商人ギルドからも討伐費用についてはきっちりと支払いをさせるとのことだ。
(その方が冒険者ギルドは商人ギルドに恩を売れるし、早急にキングリザードがいなくなってくれれば商人ギルドも満足だろうしね。じゃ、商人ギルドとの交渉はお任せしようっと)
これで、ニパたちの討伐は〝仕事〟としても成立だ。亡くなった方たちの家族にもこれで十分な補償ができるだろう。それにこれだけ危険な討伐なのだ。どんなことが起こるかわからない。リスクに見合う正当な対価は、しっかり受け取れるようにしてあげなければね。
〝助けさせろぉー!!〟という駄々っ子攻撃は成功し、私のキングリザード討伐参戦は長老に認められた。
ただし、恩のある私を危険な目に合わせることだけはできないとニパと長老からキツく言われてしまったので、そこは譲ることにし後方支援に徹するということで手を打つことにした。
(まぁ、そうは言ってもその気になれば《幻影魔法》でいくらでも隠れて近づけるんだけどね)
さて、いよいよ討伐が始まる現在のニパたちの戦力だが、集落で猟師として動ける者は経験の浅い年若のニパや引退寸前の人まで含めても21名。しかも主力だった4名を欠いている。
冒険者ギルドが百人規模の討伐隊を考えていることからも、あのキングリザードに立ち向かうには、確かにかなり心もとない人数だ。だがニパたちには他にはない強みがある。
「俺たちにはリザード用の特殊な仕掛けや武器があります。リザードの狩りは何百回としていますし、この間はそのつもりでなかったのであまり多く持っていなかったですが、しっかり準備さえできていればそう簡単に負けやしませんよ。確かに強敵ですが、急所や弱点はわかってますから」
私は彼らに、リザードの硬い鱗の間へ差し込んでダメージを与える複雑な返しのついた長い槍のような武器と、それに塗布するという毒薬としびれ薬が混ざった彼ら独自の薬も見せてもらった。
「あの鎧のような鱗の下は普通の動物と変わらないので、そこに到達できればある程度の傷が付けられます。その傷からこの薬を徐々に染み込ませることで、奴の動きを鈍らせ思考力も奪えるんです。リザードにこの薬が効くことは経験上わかっているんですよ。ただ、あの大きさだとどれぐらい打ち込む必要があるのか、それが不安ではあります。これで動きが鈍ってくれればいいのですけど……」
彼らの大物狩りの戦法は基本的に〝ヒット&アウェイ〟というやり方だ。近づいて攻撃したら、離れて追わせるを繰り返し、毒矢を打ち込んだり、切り傷をつけて血を流させたりしながら、徐々に相手の体力を削いで追い込んでいく。時間はかかるが、危険が少なく獲物にもあまり傷を負わせることなく仕留められる。リザードの肉は食用にしないので毒を使えるが、大事な商品となる鱗にはなるべく傷をつけることなく捕獲したい。いかにも狩猟を生活の糧にする彼ららしい作戦だ。
「大丈夫です。エサも食べられず、まだ万全じゃない状況のあいつなら、この方法で仕留められるはずです!」
ニパを始め、猟師たちはそう言うが、今回のキングリザードは相当の規格外だ。
(この短期間でも、どれほど回復しているのか未知数だし、手負いでも相当な暴れっぷりだった。いくつか保険が欲しいな……)
「準備にはまだ時間がかかるのよね」
「はい。槍の準備に後2日はかかると思います」
ニパの言葉にうなづいた私は、とりあえず魔法学校へ戻ることにした。長老に頼み、空き家を借りた私は〝決して中の入らないように〟と集落の方にお願いして、部屋の内側から鍵をかけ、ついでに《石壁》という魔法で部屋の内側に石でできた壁を立てた。それから、魔法使いのやるおかしなことはあまり気にしないようにとも言い添えた。
(ちょっと危ないこともする予定だから、好奇心の強い子供たちを巻き込んだりしないように、なるべく秘密裏に行動したほうがいいよね)
《無限回廊の扉》を使って魔法学校へと戻った私は、早速保険のためのいくつかの仕掛けを整えるため、まずは冒険者ギルドと商人ギルドに赴き、いくつかの交渉を行うことにした。
まず冒険者ギルドで行ったのは〝自作自演〟だ。
開口一番、私はギルドマスターのキッタダさんに、私個人でキングリザードの討伐依頼を出したい、と持ちかけた。
「こちらでも討伐隊の準備を進められていると思いますので一応お知らせに上がりました。私の知り合いのいる集落が危険にさらされております。とてもこちらでの討伐隊の編成が終わるまでは待っていられませんから!」
当然キッタダさんは大慌てだ。
「いや、それは困ります。これはこの街の危険でもございますから、これを個人で受け負われては、私共が何もしなかったことになってしまいます。それでは冒険者ギルドとして無責任のそしりを受けるでしょう」
「でも、実際一両日中に動くことはできないのでしょう?」
「うっ……、はい、それはそうなのでございますが……」
そこで私は、ふといま思いつきましたという雰囲気を出しながらこう言った。
「それは困りましたね……ではこうしたらどうでしょう。実は私にはキングリザード討伐の専門家のアテがあるのです。いま討伐依頼を出せば、彼らは2日後には討伐のための行動に入ると確約してくれています。そういう事情ならば、彼らに冒険者ギルドから依頼を出していただけませんか。それであなた方の面目も立つでしょう」
「ええ!! そんなことが可能なのでござますか?!」
私は余裕綽々という雰囲気を出しながら、ゆっくりと満面の笑顔で頷いた。もうここは、自信満々に見せるしかない。
「これは私のツテで依頼をする予定だった特別な案件ですが、私は別に〝人喰い〟キングリザードの討伐の名誉や実績が欲しいわけではありません。できれば私が直接優秀な彼らへ依頼を出したかったですが、それであなた方の面目が保てるのであれば、依頼元はお譲りいたしましょう」
私はものすごく寛大な人物になったつもりで、冒険者ギルドのためを考えていますよ、という雰囲気を醸し出しながら笑顔で続けた。
「それに……最悪彼らが失敗したところで、いまはまだ討伐隊の募集すらかけてもいない状況ではありませんか。成功すればそれでよし。失敗すれば粛々と、次の討伐隊を編成なされば良いのです」
そう、まだキングリザード討伐については、注意喚起以外は公のリアクションはなんら取れてない冒険者ギルド。ニパたちがうまく打ち取れれば、迅速な対応と大いに面目を施せるし、仮に失敗しても何事もなかったかのように準備を進めていけばいいだけだ。
ニパたちへの依頼準備金は私が用意、報酬については討伐後に改めて相談とした。
「この危険な討伐について、正当な対価を支払っていただけることを信じておりますわ」
私の言葉にキッタダさんは、とても真剣な顔で頷き、
「私の名に賭けまして……」
と、確約してくれた。そのあと、私が商人ギルドへも話を通しに行くつもりだというと、キッダタさんに全力で止められた。すべての交渉は冒険者ギルドを通して公正に行い、商人ギルドからも討伐費用についてはきっちりと支払いをさせるとのことだ。
(その方が冒険者ギルドは商人ギルドに恩を売れるし、早急にキングリザードがいなくなってくれれば商人ギルドも満足だろうしね。じゃ、商人ギルドとの交渉はお任せしようっと)
これで、ニパたちの討伐は〝仕事〟としても成立だ。亡くなった方たちの家族にもこれで十分な補償ができるだろう。それにこれだけ危険な討伐なのだ。どんなことが起こるかわからない。リスクに見合う正当な対価は、しっかり受け取れるようにしてあげなければね。
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