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4 聖人候補の領地経営
738 メイロード潜伏中
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738
私はも少しで汁物を注ごうと思って持ったお玉を取り落とすところだった。
「お、おお、王族!? 院長がですか?」
グッケンス博士は仏頂面でうなずく。
「だが、王族といっても、あそこは多産系で王子の数も多いし、正妻の子でない可能性も含めると、その特徴だけでは誰なのかまではわからんがな……」
王族が絡んでいるということは、下手をすれば国同士の争いに発展する可能性もある。まして、キルムとシドの間にはロームバルトがあるのだ。下手をすれば、三つ巴の乱戦時代へ逆戻りすることだってありうる。
(魔術師には特徴的な髪色や面白い髪型をした人も多いから、院長の髪もさして気にしてなかったけど、王族特有の髪色や特徴なんてのもあるんだ……)
「この件についてはベラミ姫を通じて、内々にロームバルト王国の中枢の方々には知らせを入れておるし、彼らはいまのところ疲弊した国力の回復を優先したいはず。よほどのことがない限り、現在のシド帝国との良好な関係を崩したくはないと思うぞ」
ベラミ姫がお輿入れしてから、シド帝国とロームバルト王国の外交関係は一気に雪解けの気配になっている。以前より二国間の商取引も活発になってきているし、双方とも政治的にも文化的にもこの交流を滞らせたくないという考えが支配的だ。ロームバルトが別の国の引き起こした悪事のために、この良好な関係を崩すとは思えない。
「とはいえ、妙な外交上の借りになるようなことは避けねばならん。それにキルム王国には〝聖天神教〟の聖地がある。それを考えると、できる限り穏便に運びたいところだのぉ」
グッケンス博士はそう言ってお酒をぐいっと煽った。
私だって、戦争やら政治取引やら、ましてや〝宗教戦争〟に巻き込まれるなんてごめんなので、出来る限り穏便にことを運びたい。
(でも、王族かぁー、穏便に……うう、無理っぽい気がしてきた)
ーーーーーー
翌日には、もう私と院長の模擬戦の話は〝孤児院〟のすべての人に知られていた。
多くの子供たちは噂では聞くものの、院長の強さを実際には目にしていないので、私の勝ちを信じる瞳で応援してくれている。逆に上のランクにいる子供たちは私の勝ちはないと思っているようだ。八組の子たちは、あの試合から私を認めてくれるようになったので、なんだか私のことをとても心配してくれている。
「メイロードさんに有利なところがあるとすれば、火系に効果の高い水系の魔法が使える点ですわ。その力でどこまで追い詰められるか……ですわね。とはいえ、まだここで学んだ時間も少ないメイロードさんが、これから強力な攻撃魔法を覚えられるほどの時間があるかどうか……」
ノルエリアさんは〝覇者決定戦〟のあと私とよくお茶をするようになり、院長との戦いについてもものすごく親身になってアドバイスをしてくれる。ノルエリアさんが来るときには、異世界から取り寄せたお茶や異世界素材を使ったお菓子などでおもてなしをしているのだが、そのせいなのか彼女の態度は見る間に変わり、態度もとても落ち着いてきている気がする。
「そうね。私としては魔法力量勝負の持久戦は避けたいんだけど、何かいい魔法はないかしらね」
「ああ、それなら、図書棟へ行かれることをおすすめしますわ。ここは、魔法に関する蔵書だけは充実していますから、なにかいい攻略法が見つかるかもしれないわね。とはいっても、もう日がないですし、どこまで見つけた魔法が使えるかは保証できませんけどね」
ノルエリアさんは、期待薄といった表情だが、私には朗報だ。
「それはいいわ! ありがとうノルエリアさん!」
そこから私は図書棟に日参した。
その図書棟は、かなり古めかしい石造りの建物だったが、一応本の老朽化を食い止めるための魔法なども使用されており、確かにかなりの蔵書数があった。だが、その蔵書はかなり古いものが多く、しかもその半分ほどは宗教関連の古い書物だった。それでも、私が求めていた資料は確かにあったので、そのことに私は安心した。
(これさえあれば、まぁ、なんとか言い訳は立つよね)
いくつかの本を貸し出してもらったあと、そこからは〝秘密の特訓〟をしていると称して、試合の日までわたしは人前に出ずに過ごした。
私が院長の戦いとのために秘密の特訓を重ねているという噂が広がり、子供たちは皆心配そうだ。
お花を持ってきてくれたり、食事を運んできてくれたりと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれようとしたが、それも丁重に断って結界を作り、私は人前に出ない日々を過ごした。
そのせいで、一部から
「怖気づいてひきこもっている」
「部屋で毎日泣いているらしい」
「負けると悟って、やけ食いをしている」
などなど、いろいろな噂も飛んだ。私の勝ちを信じる子供たちと院長の勝ちを信じる子の間でいざこざまで起こっていたようだ。素直ですぐに影響を受けやすい子供たちには、だんだん私の勝ちを信じる気持ちが萎んできておる子も現れているようだったが、いまはそれも仕方がないだろう。
(とにかく模擬戦までは潜伏してなくちゃ……)
私はも少しで汁物を注ごうと思って持ったお玉を取り落とすところだった。
「お、おお、王族!? 院長がですか?」
グッケンス博士は仏頂面でうなずく。
「だが、王族といっても、あそこは多産系で王子の数も多いし、正妻の子でない可能性も含めると、その特徴だけでは誰なのかまではわからんがな……」
王族が絡んでいるということは、下手をすれば国同士の争いに発展する可能性もある。まして、キルムとシドの間にはロームバルトがあるのだ。下手をすれば、三つ巴の乱戦時代へ逆戻りすることだってありうる。
(魔術師には特徴的な髪色や面白い髪型をした人も多いから、院長の髪もさして気にしてなかったけど、王族特有の髪色や特徴なんてのもあるんだ……)
「この件についてはベラミ姫を通じて、内々にロームバルト王国の中枢の方々には知らせを入れておるし、彼らはいまのところ疲弊した国力の回復を優先したいはず。よほどのことがない限り、現在のシド帝国との良好な関係を崩したくはないと思うぞ」
ベラミ姫がお輿入れしてから、シド帝国とロームバルト王国の外交関係は一気に雪解けの気配になっている。以前より二国間の商取引も活発になってきているし、双方とも政治的にも文化的にもこの交流を滞らせたくないという考えが支配的だ。ロームバルトが別の国の引き起こした悪事のために、この良好な関係を崩すとは思えない。
「とはいえ、妙な外交上の借りになるようなことは避けねばならん。それにキルム王国には〝聖天神教〟の聖地がある。それを考えると、できる限り穏便に運びたいところだのぉ」
グッケンス博士はそう言ってお酒をぐいっと煽った。
私だって、戦争やら政治取引やら、ましてや〝宗教戦争〟に巻き込まれるなんてごめんなので、出来る限り穏便にことを運びたい。
(でも、王族かぁー、穏便に……うう、無理っぽい気がしてきた)
ーーーーーー
翌日には、もう私と院長の模擬戦の話は〝孤児院〟のすべての人に知られていた。
多くの子供たちは噂では聞くものの、院長の強さを実際には目にしていないので、私の勝ちを信じる瞳で応援してくれている。逆に上のランクにいる子供たちは私の勝ちはないと思っているようだ。八組の子たちは、あの試合から私を認めてくれるようになったので、なんだか私のことをとても心配してくれている。
「メイロードさんに有利なところがあるとすれば、火系に効果の高い水系の魔法が使える点ですわ。その力でどこまで追い詰められるか……ですわね。とはいえ、まだここで学んだ時間も少ないメイロードさんが、これから強力な攻撃魔法を覚えられるほどの時間があるかどうか……」
ノルエリアさんは〝覇者決定戦〟のあと私とよくお茶をするようになり、院長との戦いについてもものすごく親身になってアドバイスをしてくれる。ノルエリアさんが来るときには、異世界から取り寄せたお茶や異世界素材を使ったお菓子などでおもてなしをしているのだが、そのせいなのか彼女の態度は見る間に変わり、態度もとても落ち着いてきている気がする。
「そうね。私としては魔法力量勝負の持久戦は避けたいんだけど、何かいい魔法はないかしらね」
「ああ、それなら、図書棟へ行かれることをおすすめしますわ。ここは、魔法に関する蔵書だけは充実していますから、なにかいい攻略法が見つかるかもしれないわね。とはいっても、もう日がないですし、どこまで見つけた魔法が使えるかは保証できませんけどね」
ノルエリアさんは、期待薄といった表情だが、私には朗報だ。
「それはいいわ! ありがとうノルエリアさん!」
そこから私は図書棟に日参した。
その図書棟は、かなり古めかしい石造りの建物だったが、一応本の老朽化を食い止めるための魔法なども使用されており、確かにかなりの蔵書数があった。だが、その蔵書はかなり古いものが多く、しかもその半分ほどは宗教関連の古い書物だった。それでも、私が求めていた資料は確かにあったので、そのことに私は安心した。
(これさえあれば、まぁ、なんとか言い訳は立つよね)
いくつかの本を貸し出してもらったあと、そこからは〝秘密の特訓〟をしていると称して、試合の日までわたしは人前に出ずに過ごした。
私が院長の戦いとのために秘密の特訓を重ねているという噂が広がり、子供たちは皆心配そうだ。
お花を持ってきてくれたり、食事を運んできてくれたりと甲斐甲斐しく世話を焼いてくれようとしたが、それも丁重に断って結界を作り、私は人前に出ない日々を過ごした。
そのせいで、一部から
「怖気づいてひきこもっている」
「部屋で毎日泣いているらしい」
「負けると悟って、やけ食いをしている」
などなど、いろいろな噂も飛んだ。私の勝ちを信じる子供たちと院長の勝ちを信じる子の間でいざこざまで起こっていたようだ。素直ですぐに影響を受けやすい子供たちには、だんだん私の勝ちを信じる気持ちが萎んできておる子も現れているようだったが、いまはそれも仕方がないだろう。
(とにかく模擬戦までは潜伏してなくちゃ……)
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