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5森に住む聖人候補
832 炭焼き小屋建築
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832
炭小屋建設場所はしっかり塀に囲まれた集落の出入り口の門を出てすぐ左手と決まった。
その場所は過去に畑を整備するために切り開かれた場所だったが、そこに畑を作った結果、作物を狙う小動物が頻繁に現れるようになり、それを狙う大型の獣や魔獣も現れ始めたため、放棄された場所だ。
今回作るのは食べ物ではないので問題なしということで、このすぐに使える土地を集落の近くに借りることができたのはラッキーだった。
そして翌日のお昼過ぎに、諸々の準備作業を終えたところで、私の作業が開始された。
「それじゃ始めますねー! ちょっと大掛かりな土木作業になりますので、十分下がっていてくださーい」
そこからは魔法という名の土木工事だ。
ソロスさんを始め、私が魔法を使って炭焼き窯を作っていく間、危険がない位置に並んで作業を見ていた谷の技術者代表さんたちの顔は、口が半開きで目が飛び出そうに見開かれていた。どうやらこうした近距離で、そこそこ大規模に見える(実際はそうでもないんだけど)魔法が、どかどかと行使されていく現場を見るのは、みなさん初めての経験だったようだ。
(やっぱりこの世界、魔法と庶民の距離は遠いね)
「えっと、このようにですね、まずは地面をくり抜くようにして炭にするための木材を設置する場所を作っていきます」
私は《風魔法》と《土魔法》をうまく使ってザクッと何トン分かの土砂をすくい上げて邪魔にならない場所へと移動、これを何回か繰り返した。
十畳ぐらいの広さを作ったところで、その開けた地面に上から魔法で《圧縮》をかけていく。この作業も人力で行おうとすれば、時間のかかるかなりきつい作業だろう。
「ここはちょうど粘土質ですので、上から押し固めてください。ここだけじゃなく、すべての場所に言えることですが、空気の抜ける場所を作らないことが炭焼きの基本なので、きっちり埋めて固めてくださいね」
「は、はい! わかりました! 薬師様!」
そう言いながらも、技術者の皆さんは相変わらずびっくり顔が止まらないし、なんだかオドオドしてみえる。
(そんなに引かなくてもいいのに。そこまで特殊なことはしてないんだけどなぁ……)
「では次の作業に移ります。側面を埋めるために石を砕いたものを使いましょう。これは魔法がないと扱いが難しいので、みなさんが炭焼き窯を作られるときには、耐火レンガ使うと上手にできるはずです。今回はレンガを調達する時間もなかったので、これですけどね」
そう言いながら私は厚みを揃えてカットされたレンガの十倍ぐらいの大きさの石の塊を魔法でゴンゴン積み上げていった。ちなみにアシスタントはソーヤ。相変わらずありえない重さの石を軽々と動かしている。それでも空いてしまう隙間は粘土に細かい砂利を混ぜたもので埋めてきっちりと塞ぐ。この石は今日のために朝早く近所の岩場で魔法を使い成形してきたものだ。
魔法があれば石切り作業もさして難しくはない。
「ちょうどいい石があって助かりましたよ。うまく切れたので隙間もほぼないですね。上出来、上出来」
サイズが合わない巨石を魔法でスパスパ切り揃えながら笑顔でそういう私を、みなさん何とも言えない表情で見つめている。
「はいではここから、この周囲をしっかりと固めた穴の中にぎっちり隙間なく木材を並べていきます。まずは下に木をびっしりと敷き詰めたあと、立てかけるようにきっちりと薪を詰め込んでください。そして最後は蓋となる部分ギリギリまで寝かせた薪を丸みを帯びた形に積みます。いずれも隙間をできる限り作らないということが肝要です。
炭焼きの成功の鍵は、この丁寧にきっちりと詰めるという作業なので覚えておいてくださいね。では、この作業も時間がないことですし、私がやってしまいましょう。今回は使用する薪も私の魔法で乾燥させましたが、みなさんは切り出してから数週間乾燥させて使ってください」
私はそう言うと、これも今朝切り出してサイズを揃えた上、薬作りなどでもよく使われる《乾燥》を使って程よく乾燥させておいた木材を魔法で動かして運び、最終的にはソーヤがすごい速さでぎっちり詰めていった。
〔メイロードさま、こんな感じでよろしいでしょうか〕
〔うん、すごいね。ギッチギチに詰まってる。さすがはソーヤね!〕
〔それはよかったです。なにせあの〝やきとり〟の美味しさを左右するありがたい素材ですからね。完璧にやらせていただきますよ!〕
〔……そうね。よろしくね〕
(なんにせよ、モチベーションが高いのはいいことよね)
そのあとは煙突と、今後の出し入れ口となる場所に焚き口を設置し、薪が積まれた窯の上を大量の粘土質の土砂で塞ぐ。これも土を動かすだけなので、ほぼ一瞬だ。
「この上の土砂もきっちり固めます。そうすることで火が入ったあとはがっちりした釜の蓋となってくれます。ただ雨には弱いので、窯全体に雨よけの屋根を設置した方がいいですね」
そう言いながら、私はスルスルと簡単な木製の雨よけを作っていった。
「はぇー! びっくりだなぁ!! あんなに大きな屋根が数分で簡単にできちまってるよ。魔法ってのはすごいもんだなぁ。俺たちがいちから作っていたら、きっと冬が終わってるよ」
「ちび……おっと、薬師様はすごいお方なんじゃないか? 魔法っていうのは、こんなことが簡単にできるようなもんなのかい?」
そんな驚きの声を炭焼き窯作りが楽しくなってきてしまっている私は聞き流し、ほぼ一時間で炭焼き窯を完成させた。ついでに、炭ができるまで管理するためと、一時保管所としての炭焼き小屋も設置して完成だ。
私が笑顔でソロスさんの方を振り返ると、私の依頼主は呆れ顔をしていた。
「メイロードさん、いくらなんでも大盤振る舞いが過ぎるよ。木材も石も資材も何もかもメイロードさんの持ち出しで、しかも屋根や小屋まで作っちまうなんて、とてもあの金額では見合わん!」
「そうですよ。入れていただいた大量の薪だけでも売ったらひと財産ですよ。あの外側を囲った大岩の削り出しだって買ったらいくらするかわかりません!」
仕事を終えた達成感に満足していた私は、こうして依頼主や技術者の皆さんから、謎のお説教を食らったのだった。
(あれ、あれれー?)
炭小屋建設場所はしっかり塀に囲まれた集落の出入り口の門を出てすぐ左手と決まった。
その場所は過去に畑を整備するために切り開かれた場所だったが、そこに畑を作った結果、作物を狙う小動物が頻繁に現れるようになり、それを狙う大型の獣や魔獣も現れ始めたため、放棄された場所だ。
今回作るのは食べ物ではないので問題なしということで、このすぐに使える土地を集落の近くに借りることができたのはラッキーだった。
そして翌日のお昼過ぎに、諸々の準備作業を終えたところで、私の作業が開始された。
「それじゃ始めますねー! ちょっと大掛かりな土木作業になりますので、十分下がっていてくださーい」
そこからは魔法という名の土木工事だ。
ソロスさんを始め、私が魔法を使って炭焼き窯を作っていく間、危険がない位置に並んで作業を見ていた谷の技術者代表さんたちの顔は、口が半開きで目が飛び出そうに見開かれていた。どうやらこうした近距離で、そこそこ大規模に見える(実際はそうでもないんだけど)魔法が、どかどかと行使されていく現場を見るのは、みなさん初めての経験だったようだ。
(やっぱりこの世界、魔法と庶民の距離は遠いね)
「えっと、このようにですね、まずは地面をくり抜くようにして炭にするための木材を設置する場所を作っていきます」
私は《風魔法》と《土魔法》をうまく使ってザクッと何トン分かの土砂をすくい上げて邪魔にならない場所へと移動、これを何回か繰り返した。
十畳ぐらいの広さを作ったところで、その開けた地面に上から魔法で《圧縮》をかけていく。この作業も人力で行おうとすれば、時間のかかるかなりきつい作業だろう。
「ここはちょうど粘土質ですので、上から押し固めてください。ここだけじゃなく、すべての場所に言えることですが、空気の抜ける場所を作らないことが炭焼きの基本なので、きっちり埋めて固めてくださいね」
「は、はい! わかりました! 薬師様!」
そう言いながらも、技術者の皆さんは相変わらずびっくり顔が止まらないし、なんだかオドオドしてみえる。
(そんなに引かなくてもいいのに。そこまで特殊なことはしてないんだけどなぁ……)
「では次の作業に移ります。側面を埋めるために石を砕いたものを使いましょう。これは魔法がないと扱いが難しいので、みなさんが炭焼き窯を作られるときには、耐火レンガ使うと上手にできるはずです。今回はレンガを調達する時間もなかったので、これですけどね」
そう言いながら私は厚みを揃えてカットされたレンガの十倍ぐらいの大きさの石の塊を魔法でゴンゴン積み上げていった。ちなみにアシスタントはソーヤ。相変わらずありえない重さの石を軽々と動かしている。それでも空いてしまう隙間は粘土に細かい砂利を混ぜたもので埋めてきっちりと塞ぐ。この石は今日のために朝早く近所の岩場で魔法を使い成形してきたものだ。
魔法があれば石切り作業もさして難しくはない。
「ちょうどいい石があって助かりましたよ。うまく切れたので隙間もほぼないですね。上出来、上出来」
サイズが合わない巨石を魔法でスパスパ切り揃えながら笑顔でそういう私を、みなさん何とも言えない表情で見つめている。
「はいではここから、この周囲をしっかりと固めた穴の中にぎっちり隙間なく木材を並べていきます。まずは下に木をびっしりと敷き詰めたあと、立てかけるようにきっちりと薪を詰め込んでください。そして最後は蓋となる部分ギリギリまで寝かせた薪を丸みを帯びた形に積みます。いずれも隙間をできる限り作らないということが肝要です。
炭焼きの成功の鍵は、この丁寧にきっちりと詰めるという作業なので覚えておいてくださいね。では、この作業も時間がないことですし、私がやってしまいましょう。今回は使用する薪も私の魔法で乾燥させましたが、みなさんは切り出してから数週間乾燥させて使ってください」
私はそう言うと、これも今朝切り出してサイズを揃えた上、薬作りなどでもよく使われる《乾燥》を使って程よく乾燥させておいた木材を魔法で動かして運び、最終的にはソーヤがすごい速さでぎっちり詰めていった。
〔メイロードさま、こんな感じでよろしいでしょうか〕
〔うん、すごいね。ギッチギチに詰まってる。さすがはソーヤね!〕
〔それはよかったです。なにせあの〝やきとり〟の美味しさを左右するありがたい素材ですからね。完璧にやらせていただきますよ!〕
〔……そうね。よろしくね〕
(なんにせよ、モチベーションが高いのはいいことよね)
そのあとは煙突と、今後の出し入れ口となる場所に焚き口を設置し、薪が積まれた窯の上を大量の粘土質の土砂で塞ぐ。これも土を動かすだけなので、ほぼ一瞬だ。
「この上の土砂もきっちり固めます。そうすることで火が入ったあとはがっちりした釜の蓋となってくれます。ただ雨には弱いので、窯全体に雨よけの屋根を設置した方がいいですね」
そう言いながら、私はスルスルと簡単な木製の雨よけを作っていった。
「はぇー! びっくりだなぁ!! あんなに大きな屋根が数分で簡単にできちまってるよ。魔法ってのはすごいもんだなぁ。俺たちがいちから作っていたら、きっと冬が終わってるよ」
「ちび……おっと、薬師様はすごいお方なんじゃないか? 魔法っていうのは、こんなことが簡単にできるようなもんなのかい?」
そんな驚きの声を炭焼き窯作りが楽しくなってきてしまっている私は聞き流し、ほぼ一時間で炭焼き窯を完成させた。ついでに、炭ができるまで管理するためと、一時保管所としての炭焼き小屋も設置して完成だ。
私が笑顔でソロスさんの方を振り返ると、私の依頼主は呆れ顔をしていた。
「メイロードさん、いくらなんでも大盤振る舞いが過ぎるよ。木材も石も資材も何もかもメイロードさんの持ち出しで、しかも屋根や小屋まで作っちまうなんて、とてもあの金額では見合わん!」
「そうですよ。入れていただいた大量の薪だけでも売ったらひと財産ですよ。あの外側を囲った大岩の削り出しだって買ったらいくらするかわかりません!」
仕事を終えた達成感に満足していた私は、こうして依頼主や技術者の皆さんから、謎のお説教を食らったのだった。
(あれ、あれれー?)
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