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6 謎の事件と聖人候補
925 救助の詳細を報告
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925
貴族というのは決まり事が大好きだ。
なにかことを起こすためには、必ずあれこれよくわからない儀礼や手順があり、アポイントひとつ取るだけでも複雑な手順を踏まされる。相手が皇族ともなれば、服装から挨拶から、それに相応しい日付かどうかまで、やたらと考慮しなければならない事柄があり、公式訪問ともなれば何週間も待たされるのが当たり前なのだ。
(そのたびにセイツェさんたちを煩わせなきゃいけないし、ホント時間の無駄よねー、面倒しかないんだから)
では、そんなまどろっこしいことなどしている場合ではない、今回のような緊急事案での面会の場合はどうなるか。
いくつか方法はあるが、最も即効性が高いのは皇族から〝信頼の指輪〟を借り受けることだ。
この特別に作られた皇家の紋章とそれぞれの皇族の紋章がデザインされた指輪は、皇族の皆さんがひとりひとつずつ持っている特別な品だ。皇族と同等の権利を貸し与えられた者に一時的に授けるという意味を持つとんでもないもので、有名なあの御老公様の印籠のような効果を持っている。
当然、滅多に貸し出されることはない帝国の至宝でもあるわけだが、実はグッケンス博士はなんと皇帝陛下から別枠でこの指輪を賜っている。
(これ一時的じゃなくて、永久貸与だっていうんだからすごいよね。だから、博士と一緒ならいつでも皇宮内はフリーパスだしどんな政府機関へもズカズカ入り放題、なんて便利! この指輪は皇宮内の結界や罠を解除できる特殊仕様だから、本当に最速だよね)
私は昨日、ユリシル皇子からその貴重な指輪を貸していただいた。すぐに報告に来て欲しいからということで、いつ何時でもすぐ出入りできるようにという破格の計らいだ。
この指輪ははめた人の指のサイズに合うようできていて、皇宮の警備の人は常にその人の指にある指輪をチェックしているので、私がなにも言わずとも、どのチェックポイントも瞬時に扉が開けられ、最敬礼状態で通してもらえた。
(おお、すごい!)
私は内心これは話が早くて気持ちいい! と思いつつもそれを顔に出さないよう注意し、スタスタと宮殿内を進んだ。知らせがあったのだろう、すぐに私の傍にユリシル皇子の警備の方が何人か現れ、私は彼らに先導され守られながら皇子の待つ応接室へと向かった。
応接室にはゴリゴリの結界魔法と監視阻害系の多種多様な魔法が組み込まれていて、さすが皇宮内の応接室という感じだ。
〝ここでの話は絶対外部には出さない!〟
という、強烈な意志を感じる鉄壁の魔法防御といえた。
(さすがだわね……私が何かしなくても、安心して話せそう)
扉の前に立つと、すぐ内側から扉は開けられ、私は対皇族用の貴族のお辞儀をする。ただし、長ったらしい口上は省略だ。いまはそういう場面ではないし、それは必要ないと事前に聞かされている。
「メイロード、さすがだな。早かったね。調査隊の冒険者たちと戻ったということだけは《伝令》があったが、ぜひ詳細を聞かせて欲しい」
前のめりのユリシル皇子の様子から、かなりの興奮が見て取れる。
(まぁ、まさかひとりで突っ込んで行った私が調査隊の皆さんと戻ってくるとは思わなかったよね。彼らが生きている保証もない状況だったし……ここは、どういうことなのか説明して納得してもらわないと。それに、あのダンジョンのおかしさについても早急に報告した方がいいよね)
「それでは、前置き抜きで説明させていただきます」
そこから私は綺麗に清書してきた私の作った地図、そして冒険者の方々が作成した地図を私が複写しておいたものを机の上に広げ、冒険者の方々にで出会うまでのことを話していった。
「……ですから、私は地下三階までなんの危険もなく進んでいきました。博士に教えていただいた《迷彩魔法》は実に良い仕事をしてくれるのです」
「それは、実に素晴らしい技術だ。メイロードとグッケンス博士の師弟関係もうらやましいよ。私も子供のころには指導いただいたが、そこまで優秀な生徒ではなかったからね。残念なことだが……」
ユリシル皇子のその言葉には、実感がこもっていた。皇族は貴族の中でも最も高い魔法力があり、グッケンス博士のシゴキにも耐えられる可能性は高かったはずだ。とはいえ、私のように全属性の適性がある人がとても珍しいのはここでも同じで、複雑な構成の博士オリジナル魔法を習得することは、いくら努力してもできるとは限らない。
(努力の人っていわれているユリシル皇子は、博士の魔法を学びきれなくて悔しかっただろうね)
「話が逸れたね。彼らを見つけたところから話してくれ」
「は、はい。そこから魔法でどうにかこうにかダンジョンの壁に穴を開けまして、そこから疲弊していたみなさんに回復系の魔法薬を渡し、さらに穴を広げてなんとか通れる通路を確保、ですが壁が硬くて苦労しました……」
「ダンジョンの壁を抜いた……というのか?」
「はい。それしかみなさんを助ける手段がなかったので……」
「それは、すごい…‥実にすごいな!」
魔法の詳細はぼかして、ざっくり話を進めていたにもかかわらず、ユリシル皇子の目を見開いての驚き方は絶句に近いものだった。
(あれ? もしかして、あの壁って相当特殊なものだったの……かな?)
私は背中に流れる汗を感じながら、ともかく話を続けるしかなかった。なんとか、話を進めてこの話がこれ以上広がらないことを全力で願いながら。
貴族というのは決まり事が大好きだ。
なにかことを起こすためには、必ずあれこれよくわからない儀礼や手順があり、アポイントひとつ取るだけでも複雑な手順を踏まされる。相手が皇族ともなれば、服装から挨拶から、それに相応しい日付かどうかまで、やたらと考慮しなければならない事柄があり、公式訪問ともなれば何週間も待たされるのが当たり前なのだ。
(そのたびにセイツェさんたちを煩わせなきゃいけないし、ホント時間の無駄よねー、面倒しかないんだから)
では、そんなまどろっこしいことなどしている場合ではない、今回のような緊急事案での面会の場合はどうなるか。
いくつか方法はあるが、最も即効性が高いのは皇族から〝信頼の指輪〟を借り受けることだ。
この特別に作られた皇家の紋章とそれぞれの皇族の紋章がデザインされた指輪は、皇族の皆さんがひとりひとつずつ持っている特別な品だ。皇族と同等の権利を貸し与えられた者に一時的に授けるという意味を持つとんでもないもので、有名なあの御老公様の印籠のような効果を持っている。
当然、滅多に貸し出されることはない帝国の至宝でもあるわけだが、実はグッケンス博士はなんと皇帝陛下から別枠でこの指輪を賜っている。
(これ一時的じゃなくて、永久貸与だっていうんだからすごいよね。だから、博士と一緒ならいつでも皇宮内はフリーパスだしどんな政府機関へもズカズカ入り放題、なんて便利! この指輪は皇宮内の結界や罠を解除できる特殊仕様だから、本当に最速だよね)
私は昨日、ユリシル皇子からその貴重な指輪を貸していただいた。すぐに報告に来て欲しいからということで、いつ何時でもすぐ出入りできるようにという破格の計らいだ。
この指輪ははめた人の指のサイズに合うようできていて、皇宮の警備の人は常にその人の指にある指輪をチェックしているので、私がなにも言わずとも、どのチェックポイントも瞬時に扉が開けられ、最敬礼状態で通してもらえた。
(おお、すごい!)
私は内心これは話が早くて気持ちいい! と思いつつもそれを顔に出さないよう注意し、スタスタと宮殿内を進んだ。知らせがあったのだろう、すぐに私の傍にユリシル皇子の警備の方が何人か現れ、私は彼らに先導され守られながら皇子の待つ応接室へと向かった。
応接室にはゴリゴリの結界魔法と監視阻害系の多種多様な魔法が組み込まれていて、さすが皇宮内の応接室という感じだ。
〝ここでの話は絶対外部には出さない!〟
という、強烈な意志を感じる鉄壁の魔法防御といえた。
(さすがだわね……私が何かしなくても、安心して話せそう)
扉の前に立つと、すぐ内側から扉は開けられ、私は対皇族用の貴族のお辞儀をする。ただし、長ったらしい口上は省略だ。いまはそういう場面ではないし、それは必要ないと事前に聞かされている。
「メイロード、さすがだな。早かったね。調査隊の冒険者たちと戻ったということだけは《伝令》があったが、ぜひ詳細を聞かせて欲しい」
前のめりのユリシル皇子の様子から、かなりの興奮が見て取れる。
(まぁ、まさかひとりで突っ込んで行った私が調査隊の皆さんと戻ってくるとは思わなかったよね。彼らが生きている保証もない状況だったし……ここは、どういうことなのか説明して納得してもらわないと。それに、あのダンジョンのおかしさについても早急に報告した方がいいよね)
「それでは、前置き抜きで説明させていただきます」
そこから私は綺麗に清書してきた私の作った地図、そして冒険者の方々が作成した地図を私が複写しておいたものを机の上に広げ、冒険者の方々にで出会うまでのことを話していった。
「……ですから、私は地下三階までなんの危険もなく進んでいきました。博士に教えていただいた《迷彩魔法》は実に良い仕事をしてくれるのです」
「それは、実に素晴らしい技術だ。メイロードとグッケンス博士の師弟関係もうらやましいよ。私も子供のころには指導いただいたが、そこまで優秀な生徒ではなかったからね。残念なことだが……」
ユリシル皇子のその言葉には、実感がこもっていた。皇族は貴族の中でも最も高い魔法力があり、グッケンス博士のシゴキにも耐えられる可能性は高かったはずだ。とはいえ、私のように全属性の適性がある人がとても珍しいのはここでも同じで、複雑な構成の博士オリジナル魔法を習得することは、いくら努力してもできるとは限らない。
(努力の人っていわれているユリシル皇子は、博士の魔法を学びきれなくて悔しかっただろうね)
「話が逸れたね。彼らを見つけたところから話してくれ」
「は、はい。そこから魔法でどうにかこうにかダンジョンの壁に穴を開けまして、そこから疲弊していたみなさんに回復系の魔法薬を渡し、さらに穴を広げてなんとか通れる通路を確保、ですが壁が硬くて苦労しました……」
「ダンジョンの壁を抜いた……というのか?」
「はい。それしかみなさんを助ける手段がなかったので……」
「それは、すごい…‥実にすごいな!」
魔法の詳細はぼかして、ざっくり話を進めていたにもかかわらず、ユリシル皇子の目を見開いての驚き方は絶句に近いものだった。
(あれ? もしかして、あの壁って相当特殊なものだったの……かな?)
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