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6 謎の事件と聖人候補
1005 魔王の下僕
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1005
パレスに蟄居していたはずのタガローサが姿を消してから、しばらく経っている。
長くその姿を目にする機会もなかった私は、その容姿も忘れかけていたぐらいだったが、こうして明らかに高額だとわかるが品のない派手な衣装と宝石でけばけばしく飾り立てられたタガローサの常軌を逸した巨漢を目にすれば、強制的に記憶が呼び起こされる。
(ああ、そういえばこんな人だったな。それにしてもなんでこんなところにいるんだろう。蟄居したあと雲隠れしてたんじゃないっけ? それにしてもすごくギラギラ……相変わらず派手好きなのね)
〝帝国の代理人〟の地位を失い、帝都パレス商人ギルドの代表幹事からも失脚して久しいタガローサだったが、大人しくしていたわけではないことは、すでにわかっている。
タガローサについては、失脚直後から調べれば調べるほど大量の余罪があることが明らかになり、多すぎる罪状のため刑罰については慎重な調査が必要とのことで一時〝蟄居〟とされた。
(貴族と平民の間のトラブルって、なかなか立件が難しいみたいなんだよねぇ。権力構造が私のいた世界とは全然違うからね。まぁ、今回は帝国の威信にも関わるってことで、時間はかかってもしっかり調べてくれるみたいだけど……)
刑罰確定には時間がかかるということで、懲罰的な意味もあってタガローサには早々に莫大な賠償金が課せられ、あらゆる所有物が差し押さえられたそうだ。それは全財産を失っただろうとまでいわれるとんでもない額ではあったが、サイデムおじさまはそんなことは信じていなかったし、きっとそのうち隠した財産を使って商売を始めるだろうと言っていた。
「真っ当な商売で再起するというのなら、俺は別に気にしないさ。世の中に商売人が俺だけなんてそれこそ変な話だ。いろんな商売をする奴らがいてこそ、国は栄えるってもんさ」
「真っ当に、なるでしょうか……タガローサですよ?」
「まぁ、無理だろうな。一応監視もつけてはいるが、あれはずる賢さだけであの地位まで上り詰めた一族の男だ。とはいえ動き始めるまでは静観するしかない」
「そうですね……変なことしなきゃいいんですけど……」
タガローサ家に連なる多くの人間が逮捕され、関連を疑われた店は軒並み閉店もしくは閉鎖した。貴族たちからも完全に縁を切られることになった元〝帝国の代理人〟は、そのアコギな商売の結果庶民からも早々に見捨てられ、いままで権力と金で押さえ込んでいた悪事も次々に表沙汰になり毎日新聞を賑わせるという状況だった。
恨みを買うことしかしてきていないのだから、権力を失った以上とても表に顔を出せる状況ではない。そのことはタガローサ自身が一番わかっていただろう。あれからしばらくは、表面上は大人しく屋敷にこもっていた。
(だけど、きっとそのままではいないよね。これまでよりさらに影に潜んでなんかしそう。まぁ、商売でおじさまがやられるとも思えないけど……)
「心配するな! 商売上のいざこざなんぞ百万回も経験済みだ。なんでもかかってきやがれだ!」
すっかり戦闘モードのサイデムおじさまは、商売上の戦いなら確実に返り討ちにする自信を持っているようで、実に頼りになるのだが、ちょっと冒険者モードも入っていてハラハラもする。
あのころは、世間も大騒ぎだったし、そんなことも話していたのだが、少しはおとなしくなるかと思ったタガローサの暗躍は、すぐに始まっていた。
タガローサが大きく暗躍し始めたのは〝ストーム商会〟という新しい画期的な商店の誕生と関連していた。だが、この大商いを始めるについては注目を集めることが事前に予想されたからだろう。タガローサは実に巧妙にその存在を隠した。
まず目をつけられなかった大きな理由は、この〝ストーム商会〟の魔道具貸し出しという商売が、実にユーザーフレンドリーだったからだ。高価な魔石に頼る魔道具は庶民には高嶺の花で、便利だということはわかっていても使えないものだった。それを〝ストーム商会〟は独自技術で克服し、安価で提供した。ただし、魔石と違い使用できる期間が短いため、買い取りではなく貸し出しの形をとることで、常にメンテナンスされた状態の商品を流通させたのだ。
各地に販売と交換の窓口を作り大規模に展開していたとはいえ、こんな利幅の少ない商品は、タガローサのやり方ではないし、あまりに手厚い購入者利益優先の営業方針がその存在を感じさせなかったのだ。
そしてもうひとつ〝安価な魔道具〟という技術を、常に高級品狙いのタガローサが考え開発資金を出すとは思えなかったのだ。
(むしろいままで以上にお金が取れる魔道具の開発をするよね、きっと)
ただ〝ストーム商会〟の方法では莫大な初期投資が必要だと思えた。サイデムおじさまも私もその点が気になり探りは入れていたのだが、何人かの中級貴族といくつかの団体が合同出資していることがわかり、資金の流れもおかしなところが見えなかったのだ。
(あとでわかったことだけど、これも複雑に金銭の移動を隠した、犯罪行為てんこ盛りの偽装だったんだけどね)
〝ストーム商会〟に怪しいところがなければ、庶民の生活が快適になる〝魔道具〟を提供する新商売を敵視する理由もないので、おじさまは静観していたし、私もあの当時は便利だなと思っただけだった。
だが、それからしばらくして〝魔道ランプ爆発事件〟がラーメン横丁で起こったことで、事態は一変した。
〝ストーム商会〟が提供する魔道具の危険性が明らかになったことで、私も本格的に調査へと動くこととなった。そしてついにエスライ・タガローサとの接点となる人物を突き止め、タガローサが魔王エピゾフォールと繋がっている事実を掴んだのだ。
(それでもタガローサ自身はずっと雲隠れしていたのに……それにどうしてここがわかったの?
ていうか、あの〝糸〟がタガローサに見えているの?)
「ねぇ、セイリュウ。タガローサにあれが見えてるってありうる?」
「それはないね。あれが見えるのは人では君だけ。極められた《鑑定》とその周辺スキル、そして神に愛された〝聖なる力〟それがなければあれは追えないよ」
「でも……」
そのとき、エピゾフォールの《念話》が頭に響き渡った。
〔タガローサ、貴様われを謀ったな‼︎〕
パレスに蟄居していたはずのタガローサが姿を消してから、しばらく経っている。
長くその姿を目にする機会もなかった私は、その容姿も忘れかけていたぐらいだったが、こうして明らかに高額だとわかるが品のない派手な衣装と宝石でけばけばしく飾り立てられたタガローサの常軌を逸した巨漢を目にすれば、強制的に記憶が呼び起こされる。
(ああ、そういえばこんな人だったな。それにしてもなんでこんなところにいるんだろう。蟄居したあと雲隠れしてたんじゃないっけ? それにしてもすごくギラギラ……相変わらず派手好きなのね)
〝帝国の代理人〟の地位を失い、帝都パレス商人ギルドの代表幹事からも失脚して久しいタガローサだったが、大人しくしていたわけではないことは、すでにわかっている。
タガローサについては、失脚直後から調べれば調べるほど大量の余罪があることが明らかになり、多すぎる罪状のため刑罰については慎重な調査が必要とのことで一時〝蟄居〟とされた。
(貴族と平民の間のトラブルって、なかなか立件が難しいみたいなんだよねぇ。権力構造が私のいた世界とは全然違うからね。まぁ、今回は帝国の威信にも関わるってことで、時間はかかってもしっかり調べてくれるみたいだけど……)
刑罰確定には時間がかかるということで、懲罰的な意味もあってタガローサには早々に莫大な賠償金が課せられ、あらゆる所有物が差し押さえられたそうだ。それは全財産を失っただろうとまでいわれるとんでもない額ではあったが、サイデムおじさまはそんなことは信じていなかったし、きっとそのうち隠した財産を使って商売を始めるだろうと言っていた。
「真っ当な商売で再起するというのなら、俺は別に気にしないさ。世の中に商売人が俺だけなんてそれこそ変な話だ。いろんな商売をする奴らがいてこそ、国は栄えるってもんさ」
「真っ当に、なるでしょうか……タガローサですよ?」
「まぁ、無理だろうな。一応監視もつけてはいるが、あれはずる賢さだけであの地位まで上り詰めた一族の男だ。とはいえ動き始めるまでは静観するしかない」
「そうですね……変なことしなきゃいいんですけど……」
タガローサ家に連なる多くの人間が逮捕され、関連を疑われた店は軒並み閉店もしくは閉鎖した。貴族たちからも完全に縁を切られることになった元〝帝国の代理人〟は、そのアコギな商売の結果庶民からも早々に見捨てられ、いままで権力と金で押さえ込んでいた悪事も次々に表沙汰になり毎日新聞を賑わせるという状況だった。
恨みを買うことしかしてきていないのだから、権力を失った以上とても表に顔を出せる状況ではない。そのことはタガローサ自身が一番わかっていただろう。あれからしばらくは、表面上は大人しく屋敷にこもっていた。
(だけど、きっとそのままではいないよね。これまでよりさらに影に潜んでなんかしそう。まぁ、商売でおじさまがやられるとも思えないけど……)
「心配するな! 商売上のいざこざなんぞ百万回も経験済みだ。なんでもかかってきやがれだ!」
すっかり戦闘モードのサイデムおじさまは、商売上の戦いなら確実に返り討ちにする自信を持っているようで、実に頼りになるのだが、ちょっと冒険者モードも入っていてハラハラもする。
あのころは、世間も大騒ぎだったし、そんなことも話していたのだが、少しはおとなしくなるかと思ったタガローサの暗躍は、すぐに始まっていた。
タガローサが大きく暗躍し始めたのは〝ストーム商会〟という新しい画期的な商店の誕生と関連していた。だが、この大商いを始めるについては注目を集めることが事前に予想されたからだろう。タガローサは実に巧妙にその存在を隠した。
まず目をつけられなかった大きな理由は、この〝ストーム商会〟の魔道具貸し出しという商売が、実にユーザーフレンドリーだったからだ。高価な魔石に頼る魔道具は庶民には高嶺の花で、便利だということはわかっていても使えないものだった。それを〝ストーム商会〟は独自技術で克服し、安価で提供した。ただし、魔石と違い使用できる期間が短いため、買い取りではなく貸し出しの形をとることで、常にメンテナンスされた状態の商品を流通させたのだ。
各地に販売と交換の窓口を作り大規模に展開していたとはいえ、こんな利幅の少ない商品は、タガローサのやり方ではないし、あまりに手厚い購入者利益優先の営業方針がその存在を感じさせなかったのだ。
そしてもうひとつ〝安価な魔道具〟という技術を、常に高級品狙いのタガローサが考え開発資金を出すとは思えなかったのだ。
(むしろいままで以上にお金が取れる魔道具の開発をするよね、きっと)
ただ〝ストーム商会〟の方法では莫大な初期投資が必要だと思えた。サイデムおじさまも私もその点が気になり探りは入れていたのだが、何人かの中級貴族といくつかの団体が合同出資していることがわかり、資金の流れもおかしなところが見えなかったのだ。
(あとでわかったことだけど、これも複雑に金銭の移動を隠した、犯罪行為てんこ盛りの偽装だったんだけどね)
〝ストーム商会〟に怪しいところがなければ、庶民の生活が快適になる〝魔道具〟を提供する新商売を敵視する理由もないので、おじさまは静観していたし、私もあの当時は便利だなと思っただけだった。
だが、それからしばらくして〝魔道ランプ爆発事件〟がラーメン横丁で起こったことで、事態は一変した。
〝ストーム商会〟が提供する魔道具の危険性が明らかになったことで、私も本格的に調査へと動くこととなった。そしてついにエスライ・タガローサとの接点となる人物を突き止め、タガローサが魔王エピゾフォールと繋がっている事実を掴んだのだ。
(それでもタガローサ自身はずっと雲隠れしていたのに……それにどうしてここがわかったの?
ていうか、あの〝糸〟がタガローサに見えているの?)
「ねぇ、セイリュウ。タガローサにあれが見えてるってありうる?」
「それはないね。あれが見えるのは人では君だけ。極められた《鑑定》とその周辺スキル、そして神に愛された〝聖なる力〟それがなければあれは追えないよ」
「でも……」
そのとき、エピゾフォールの《念話》が頭に響き渡った。
〔タガローサ、貴様われを謀ったな‼︎〕
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