異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗

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温泉文化は贅沢の極み。

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ルシフェル一行は、辺境に発つ前に王都ファーレンにいくつかの拠点を作って行くことにした。
これはシェバトの発案である。
それをルシフェルが了承した形だ。

シェバトはさっそく天国から天使メイドを呼び寄せた。
転送ゲートを通じてメイドたちが続々と集結する。
呼び寄せられた彼女たちは一般人に偽装を施され、王都各所へ散り散りに潜伏していく。

シェバトはルシフェルに一礼して言う。

「ルシフェル様。拠点や情報網の構築には、少し手間が掛かりそうです。今しばらくのお時間を頂戴したく存じます。よろしいでしょうか」
「うん。それは別に良いんだけど、俺、何か手伝おうか?」

グウェンドリエルやジズが続く。

「ルシフェル様が手伝われるのでしたら、当然わたくしも手伝いますわ」
「ジズたちもー!」
「皆様、お気遣い痛み入ります。けれども残る工作は私と天使メイドだけで事足ります」

こうしてしばらくの間、天使メイド以外のメンバーは手持ち無沙汰になった。

「……ふむ。じゃあシェバトの仕事を待っている間、俺たちはどうしよっか? そうだなぁ――」

降って湧いたような空白期間。
ルシフェルはこの機に少しのんびりする計画を立てた。

異世界転移してからというもの、立て続けに物事が進んできた。
目まぐるしく移り変わる状況。
正直なところ気疲れしている。
ルシフェルは温泉にでもゆっくり浸かって、ちょっと休みたい気分だったのだ。



ルシフェルは王都の郊外で古い屋敷を買い取った。
ジズやグウェンドリエルらを引き連れ、泊まっていた宿からそこに移り住む。

屋敷は酷く汚れており所々老朽化も進んでいたが、修理アプリを使って一発で直した。
新築みたいにピカピカだ。
ルシフェルは屋敷に、天国や王都中心へ通じる転移ゲートを設置しなおした。

次にルシフェルは庭を改造することにした。
購入した屋敷は、元はどこぞで財を成した豪商が住んでいたものだ。
郊外だけに数千坪にも渡る広大な敷地をほこっており、庭園は欧州の宮殿なんかによくある幾何学模様の様式。
これはこれで大変良いものではあるのだが、荒れ果てているし、そもそも洋風庭園はルシフェルの趣味には合っていない。

「やっぱ、日本式だよなー」

ルシフェルは敷地をサクッと日本庭園に作り直した。
そして温泉を掘る。

「おー、湧いた湧いた! やっぱ便利だなぁ、このタブレット」

お次は脱衣所だ。
四阿あずまやを建て、外部から覗かれないよう苔むした岩や松の木、素朴な竹の衝立ついたてを上手い具合に配置していく。

「ふんふんふーん。あぁ温泉楽しみだなぁ。どんな温泉にしようかなぁ? そうだなぁ、岩風呂にしよう。それに後で檜風呂も作ろっと」

鼻歌混じりに作業を進める。
すぐに庭には、野趣溢れる源泉掛け流しの天然温泉が出来上がった。



ざぶんと音がして、作りたての岩風呂から湯が溢れる。
ルシフェルが温泉に浸かったのだ。
湯は少し熱めにしてある。

「……ん、んんー! あぁ、効くなぁ……」

ルシフェルは思わず微笑む。
たまらん。
ほかほかと湯けむりを立ち上らせる温泉に、肩までしっかり浸かる。
バーレティン王国には四季があり、いまの季節は秋頃。
衣服を脱ぐと、秋風がわずかに肌寒い。
だからこそ熱い湯が身体に沁み入る。

「……ぁぁぁ最高だわぁ。作って良かったなぁ、温泉……」

溜まっていた疲れが湯に溶けていくようだ。
ルシフェルは顔を蕩けさせた。
だらりと身体を弛緩させる。
かと思うと翼の隠蔽を解いた。

「ん、んんんー! ぷはぁ」

手先足先と一緒に翼を思い切り伸ばす。
肩の凝りが解けていく。

「……あー、気持ちいい。……ふわぁ……あふ……」

軽い眠気にうつらうつらしながら、しばしゆっくりと温泉を堪能する。
ほんのり夢心地。
そうしていると、ルシフェルはちょっとお酒が飲みたくなってきた。

「……飲みたいなぁ。でもまだ陽が高いしなぁ」

昼から飲む酒は、なんか背徳感ある。
温泉でだらけながらなら、尚更だ。

「ま、いっか! 飲んじゃえ。ふふふ」

ルシフェルは飲酒の誘惑に屈した。
さぶざぶと湯を進み、岩風呂の縁においていたタブレット端末を操作する。
日本酒セット一式を作り出した。
木製の古式ゆかしい風呂桶を半分まで湯に沈め、そこに徳利を浸けて温泉でかんをする。
温まった徳利からお猪口に酒を注ぎ、くいっと煽った。

「んー、美味い!」

日本酒は燗すると米の甘味が増す。
そうして甘味と旨味を引き立たされた日本酒が、するりと喉を通っていく。
酒精が食道を刺激した。
やがて日本酒が胃に流れ込むと、身体が芯からぽかぽかと温もっていく。
たまらなく贅沢な時間だ。

「えへへ。じゃあもう一杯」

ルシフェルは次の一献いっこんに手を伸ばした。
するとそのとき――

「あらルシフェル様」

少し高めのよく通る声が、湯けむりの向こうから聞こえる。
その人影はすぐに姿を現した。

「メイドもお連れにならずに、御身お一人様で湯浴みをなさってるのですか? それに手酌だなんて……。いけませんわ、いけませんわ」

現れたのはグウェンドリエルだった。
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