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最終章 偽聖女編
第59話 偽聖女編③
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少女…だけど、結構年齢は高く見えるわね。アンタ、10歳くらいの見た目に変身していたって言ってなかった。」
「ええ。ですが、あの者の見た目は13~14歳ほどに見えますね。何者でしょう。」
部屋の中にいたのは、黒髪オレンジ目で13歳くらいに見える細身の少女だった。年齢が違うのもそうだし、以前オーウェン公爵が見せてくれた聖女リディアの似顔絵と比べても体付きが似つかない。何より、見た目の情報だけが類似点であり顔が似ていない。
そして、その少女の目の前には、現ローゼシア王国の国王であるライオネル・ローゼシアが座っていた。
『今まで我々が慕っていた聖女、リディア・アッシュクロフトは偽物だと申しますか。』
『ええ、私こそが本物のリディア…いえ、聖女です。皆様もご覧になりましたでしょう?私が召喚されたときの奇跡を。』
リディア・アッシュクロフトは偽物?召喚?奇跡?話しが掴めないわね。
『魔道士の…ほら、あの人。あの人も言っていたでしょ?召喚された私こそが、本物の聖女だって。』
『うむ、確かに貴女は、聖女の条件を満たしている。最上級魔道士しか使えないとされている過去を視る力が、確かにあるのだから。』
アタシはびっくりして、思わず国王と少女の方を交互に凝視する。
聖女リディアと同じ力を、この少女も持っているですって?
『リディアという子供は逃げたんですよ。何故か?長年、あなたたちを欺いてきた偽りの聖女だったからです。』
『むむ…。』
『…私、あの召喚術を行った魔導士から聞いたんですよ。この国は、長年聖女からの神託を受けていなかったらしいじゃないですか。』
少女の発言を受けて、国王は難しい顔をして唸る。正確には、聖女リディアを蔑ろにして、神託を受けることすらせず放置していたって感じでしょうけど。
リディアの話を聞いていると、この人を含め国王って自分にとって都合の良いことばかり受け入れていく姿勢の人間ばかりのようね。このローゼシアの国の頂点は、ここまで腐敗しているのね。
よくこの国傾かなかったわねと思ったけど、傾きかけてようやく国王がリディアに泣きついて復興の手助けをしてもらっていたんだっけ。なんか、ダメな子供と過保護な母親みたいね、リディアと国王の関係って。それはそれでどうなのかしら。
『もしかしたら、逃げたらしい聖女様、もう力を失ってしまっているんじゃありませんか~?』
『何だと?』
『だってそうじゃないですか。聖女なんて大層な役割を持っていながら逃げるなんて、”普通は”できませんよ。』
本物の聖女を名乗る謎の少女は、ここぞとばかりにリディアのことを貶していく。それを聞いて、アタシはムカムカが止まらなかった。でも、当の本人であるリディアが冷静に2人の会話に耳を傾けているから、アタシは怒りを鎮めて会話に集中する。
『私はそんなことしません。力を失い持ち場から逃げ、国王を騙し続けた悪しき裏切り者の聖女リディアに変わり、この私……”ミネルバ・ローズブレイド”が、新生聖女としてこの国を導きます。』
力強く宣言する偽聖女ことミネルバは、高らかに言い放つ。その自信のある姿を見ていると、彼女の言っていることは本当なんじゃないかと錯覚させられる人もいるでしょうね。実際、目の前にいるバカ国王は信じて感嘆の声を漏らしてしまっているし。
「好き勝手言ってくれますね、このミネルバという者。見るからに顔付きはローゼシア人ではありませんけど、異世界のどのあたりから転移されたんでしょうね。」
「転移?」
「先ほど2人が話していたでしょう?私が召喚されたときの奇跡と。」
国王とミネルバが何か話しているけど、新生聖女様のご高説と傀儡のようね。今はリディアの話に耳を傾ければ良さそうね。
「召喚術は原則、最上級魔導士である私が行わない限り成功しません。ですが、上級魔導士レベルの魔法使いともなると、極々稀に召喚術が成功してしまうという事例が少なからずあるのです。」
「あ~…。昔、新しい嫁が欲しいって言った国王の命令に従って、女を召喚したっていってたわね。」
アタシは遠い昔を思い出すように、目を細める。死んだ目をしているであろうアタシに構うことなく、リディアは話を続ける。
「召喚術というのは、別の世界軸に存在する人間を、時間と空間のねじれに巻き込みこの世界軸に繋げる術なのです。つまりあの者は、異世界から来た人間なのです。」
「なるほど?アンタは今偽聖女に立場を奪われ、成り代わられたのね。」
『そうと決まれば、大々的に聖女リディアの捜索を始め、早々に処刑しましょう。』
『…いや、公にするのはよしましょう。国民に混乱を招くのは、避けたいのです。』
『ちっ。』
『え?』
『いえ、何でも。そうですね、リディアを処刑してから、私をお披露目にする流れでも良いですからね。』
話の内容がまとまったのか、国王はミネルバの前から立ち去っていった。
アタシたちはその後、聖神殿と王城をぐるりと視察し、リディアは心眼を解除した。
「ええ。ですが、あの者の見た目は13~14歳ほどに見えますね。何者でしょう。」
部屋の中にいたのは、黒髪オレンジ目で13歳くらいに見える細身の少女だった。年齢が違うのもそうだし、以前オーウェン公爵が見せてくれた聖女リディアの似顔絵と比べても体付きが似つかない。何より、見た目の情報だけが類似点であり顔が似ていない。
そして、その少女の目の前には、現ローゼシア王国の国王であるライオネル・ローゼシアが座っていた。
『今まで我々が慕っていた聖女、リディア・アッシュクロフトは偽物だと申しますか。』
『ええ、私こそが本物のリディア…いえ、聖女です。皆様もご覧になりましたでしょう?私が召喚されたときの奇跡を。』
リディア・アッシュクロフトは偽物?召喚?奇跡?話しが掴めないわね。
『魔道士の…ほら、あの人。あの人も言っていたでしょ?召喚された私こそが、本物の聖女だって。』
『うむ、確かに貴女は、聖女の条件を満たしている。最上級魔道士しか使えないとされている過去を視る力が、確かにあるのだから。』
アタシはびっくりして、思わず国王と少女の方を交互に凝視する。
聖女リディアと同じ力を、この少女も持っているですって?
『リディアという子供は逃げたんですよ。何故か?長年、あなたたちを欺いてきた偽りの聖女だったからです。』
『むむ…。』
『…私、あの召喚術を行った魔導士から聞いたんですよ。この国は、長年聖女からの神託を受けていなかったらしいじゃないですか。』
少女の発言を受けて、国王は難しい顔をして唸る。正確には、聖女リディアを蔑ろにして、神託を受けることすらせず放置していたって感じでしょうけど。
リディアの話を聞いていると、この人を含め国王って自分にとって都合の良いことばかり受け入れていく姿勢の人間ばかりのようね。このローゼシアの国の頂点は、ここまで腐敗しているのね。
よくこの国傾かなかったわねと思ったけど、傾きかけてようやく国王がリディアに泣きついて復興の手助けをしてもらっていたんだっけ。なんか、ダメな子供と過保護な母親みたいね、リディアと国王の関係って。それはそれでどうなのかしら。
『もしかしたら、逃げたらしい聖女様、もう力を失ってしまっているんじゃありませんか~?』
『何だと?』
『だってそうじゃないですか。聖女なんて大層な役割を持っていながら逃げるなんて、”普通は”できませんよ。』
本物の聖女を名乗る謎の少女は、ここぞとばかりにリディアのことを貶していく。それを聞いて、アタシはムカムカが止まらなかった。でも、当の本人であるリディアが冷静に2人の会話に耳を傾けているから、アタシは怒りを鎮めて会話に集中する。
『私はそんなことしません。力を失い持ち場から逃げ、国王を騙し続けた悪しき裏切り者の聖女リディアに変わり、この私……”ミネルバ・ローズブレイド”が、新生聖女としてこの国を導きます。』
力強く宣言する偽聖女ことミネルバは、高らかに言い放つ。その自信のある姿を見ていると、彼女の言っていることは本当なんじゃないかと錯覚させられる人もいるでしょうね。実際、目の前にいるバカ国王は信じて感嘆の声を漏らしてしまっているし。
「好き勝手言ってくれますね、このミネルバという者。見るからに顔付きはローゼシア人ではありませんけど、異世界のどのあたりから転移されたんでしょうね。」
「転移?」
「先ほど2人が話していたでしょう?私が召喚されたときの奇跡と。」
国王とミネルバが何か話しているけど、新生聖女様のご高説と傀儡のようね。今はリディアの話に耳を傾ければ良さそうね。
「召喚術は原則、最上級魔導士である私が行わない限り成功しません。ですが、上級魔導士レベルの魔法使いともなると、極々稀に召喚術が成功してしまうという事例が少なからずあるのです。」
「あ~…。昔、新しい嫁が欲しいって言った国王の命令に従って、女を召喚したっていってたわね。」
アタシは遠い昔を思い出すように、目を細める。死んだ目をしているであろうアタシに構うことなく、リディアは話を続ける。
「召喚術というのは、別の世界軸に存在する人間を、時間と空間のねじれに巻き込みこの世界軸に繋げる術なのです。つまりあの者は、異世界から来た人間なのです。」
「なるほど?アンタは今偽聖女に立場を奪われ、成り代わられたのね。」
『そうと決まれば、大々的に聖女リディアの捜索を始め、早々に処刑しましょう。』
『…いや、公にするのはよしましょう。国民に混乱を招くのは、避けたいのです。』
『ちっ。』
『え?』
『いえ、何でも。そうですね、リディアを処刑してから、私をお披露目にする流れでも良いですからね。』
話の内容がまとまったのか、国王はミネルバの前から立ち去っていった。
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