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それでも日常は続く
しおりを挟むルカと会えなくなって、最初のうちは心配の方が勝っていた。
事故に遭ったんじゃないか。病気になって、動けなくなっていたらどうしよう。もしかしたら、一人で今も苦しんでいるかもしれない。そんな不安と心配する気持ちが、頭の中をぐるぐると駆け巡る。
そんな日々をしばらく超えていくうちに、もしかしたら私にもう会いたくなくなっちゃったのかもしれない、と自己嫌悪に落ちいるくらい、またぐるぐると考えが巡る。
(……あの時、何か失礼なこと言っちゃったかな)
思い返すたびに、胸がぎゅっと縮む。
私、ちゃんと笑顔は作れていた?
距離を取りすぎちゃった?
それとも、無神経に踏み込みすぎた?
答えの出ない問いを、何度も何度も繰り返した。
噴水広場。
川沿い。
路地。
パン屋の前。
他にも思い当たる場所は全て探したし
町の人にもさりげなく聞いて回った。
でも、誰も知らない。
最初から、そんな子はいなかったみたいに。
それが、何より怖かった。
夜になると、こっそり泣いた。
声を殺して、枕を濡らして、
それでも朝になれば、いつも通りに笑った。
半年経った今も、噴水の音を聞くたびに、夕焼けに染まる川を見るたびに、私は、無意識にルカを探してしまう。
この町の時間は優しく流れていく。
花屋の手伝いをして、マルタおばさんのパンを笑顔で食べて、町の人たちに「今日も元気だね」と言われて。
(……良かった。私、ちゃんと笑えてる)
ルカのことを考えても涙が出なくなった頃、会えない現実に少しずつ慣れてきてしまった自分に気がついて、また少し落ち込んだ。それでも、心の奥に引っかかったまま、ルカの名前が消えないでいることに安堵した。
そうやって、胸の奥に沈んでいた痛みが、ようやく形を失い始めた頃。
私は少しだけ冷静になって、他の事を考える余裕ができるようになった。
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