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剣聖の娘、王都に行く
たくらみ
しおりを挟む「陛下、何をご覧になられてるのです?」
エルネ王城の王の執務室を訪れた宰相フレイは、王が何らかの書類をじっくり読んでいるのを見て問いかける。
彼の主である若き王は、その資質、能力は申し分ないものの……些か不真面目なところがあり、普段の書類仕事は片手間でやることが多い。
それでも能力があるので仕事はきっちりとこなすのだが……
だから、王がこのように集中しているというのはフレイにとって珍しい光景だったのだ。
「ん?……あぁ、ほら、昨日会った騎士志願の若者たちの話はしただろう?登用試験の出願書の写しを持ってこさせたんだ」
「あぁ、なるほど……それで、どのような者たちなのです?」
「二人とも、ニーデル辺境伯の推薦だな。あの地は強力な魔物が多いから……優れた戦士を多数輩出する土地柄だ。あの実力も、そう思えば納得できる」
「ニーデル辺境伯……デニス様ですか。あの御方の推薦ならば信頼できますね」
「ああ。だが、それだけじゃない」
「……?」
「少年の方は、至って普通の素性なんだがな……これを見てみろ」
そう言って王は、先程までじっくり見ていた資料をフレイに差し出す。
彼は資料を受け取ると目を通し始めた。
「……名前はエステル。15歳、女性。出身はニーデル辺境伯領シモン村。シモン村自警団所属で、団の中では一番の実力者……ほぅ、少女の身で大したものだ。ですが陛下、他に特に変わったところは無さそうですが……」
「家族構成を見てみろ」
「家族構成……父と母、妹と弟の五人家族。父の名はジスタル。母の名はエドナ…………えっ!?」
エステルの両親の名を確認したフレイは、目を見開いて驚愕の声を上げた。
「どうだ?面白かろう?」
「いや、面白かろう……じゃないですよ。よろしいのですか?」
「何が?」
「ジスタルとエドナと言えば、あの事件の……」
と、フレイは口籠る。
どうやら彼はエステルの両親の事を知っているらしい。
彼らが王都にいたのはまだエステルが生まれる前……15年以上も前の事。
国の重鎮……それも、まだ年若くもある王やフレイがエステルの両親を知っていると言うのは、いかなる理由によるものなのか。
「問題ないだろ。あの事件はとうに解決し、もはや過去のものだ。ましてや彼らの娘には関係ないことだろう」
「それはそうでしょうが…………陛下?何か企んでますよね?」
昨日の様子からしても、この若き王が何かを企んでいるのは明白だ。
しかし。
「さあな。……それよりもフレイ。後宮の審査の方はどうなってる?」
王はあからさまに話題を変えた。
これは問いただしても無駄か……と考えたフレイは、それ以上追求するのは諦め、王の問に応える。
「はい。既に後宮入り候補の貴族令嬢たちの審査書類は出揃っていると聞いております。あとは陛下に目を通していただき……」
「そうか。分かった。後で俺のところに持ってくるように」
「……承知しました(どうされたんだ?急にやる気になって……怪しい)」
内心で訝るフレイだが、どうせ聞いても答えてくれないことは明白なので、了承の返事をするに留めるのだった。
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