【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

文字の大きさ
21 / 151
剣聖の娘、王都に行く

襲撃

しおりを挟む


 無人の後宮を散策するエステルたち。

 しっかりと手入れされ、美しい花々が咲き誇る庭園を彼女は心から楽しんでる。
 もしこの場にクレイがいたのならば「お前に花を愛でる感性があったなんて……」などど、失礼な事を言っただろう。


「広くて良いですね~。キレイな花を見ながら鍛錬するのも楽しそう!」

 ……やはりエステルはエステルだった。
 きっとクレイも納得するはず。




「ふ……本当に剣術が好きなんだな、エステルは」

「はい!……でも、王都に来てから中々鍛錬が出来なくて。鈍ってないないか心配です」

 シモン村では毎日剣術の鍛練を欠かさなかったエステル。
 だが、ここ数日はそれを果たすことができずに焦りの気持ちが生じてるのだ。

「一度、宿の前でやろうとしたんですけど、クレイに止められたんです」

「あ~……確かに奇異の目は向けられそうではあるな」


 因みに彼女は今、帯剣している。
 本来の得意武器である大剣ではなく、小振なショートソードではあるが。
 本来は、騎士や衛兵でも無い限り王城内での武装は特別な許可が必要なのだが、アランと一緒にいるため見咎めるものは居なかったのである。


「騎士になれば騎士団の訓練場で好きなだけ剣をふれるから、それまでは我慢することだ」

「う~」

 我慢しろと言われ、ぷく~……と頬を膨らませるエステル。

 その様子が可笑しくて、アランは笑いを抑えることができない。


「ははは!そんなにむくれるな。もう、あと数日だろう?」

「むう……まぁ、しょうがないか。でも騎士になったら取り戻さないと!!」

 もはや鍛練中毒とすら言えそうな彼女であった。








 そうやって……実態はともかく、傍から見ればまるで恋人同士のように仲睦まじく語らいながら二人は庭園を散策する。
 そして、次は宮殿の中も見学しようか……と、更に進もうとした時だった。



「……アランさん。誰かいます」

 突然、普段の脳天気とも言えるくらいに快活なエステルの雰囲気が一変する。

 アランは、その変わりように驚きをあらわにするが……直ぐに自身も不穏な空気を察知した。



「これは……殺気?」

「はい、誰かが私達を狙ってます。…………っ!!」

 何かが自分たちに向かって飛来するのを敏感に察知したエステルが、腰に下げていた剣を抜き放つ!!


 キィンッ!!

 キキィンッッ!!


 目にも止まらぬ速度で振るわれた彼女の剣は、猛スピードで飛来した何本もの矢を尽く打ち払った!!


 ヒュンッ!!ヒュヒュンッッ!!

 キンッ!!キキンッッ!!


 尚も鋭い矢がアランに向かって殺到するが、彼女は射線に立ちはだかって全て払い落とす!!

 いつ止むのか分からない攻撃に晒され、反撃もままならないと思われたが……


「……そこぉっ!!!」


 何と!!

 エステルは飛来する幾つもの矢を剣で打ち払いながら、そのうちの一本を空いている左手で掴み取って弓で射るのと変わらない威力で投げ返した!!



「!!??」


 矢が飛来する元、宮殿の周りの森に潜んでいたらしき何者かから動揺の気配が伝わってきた。

 矢の猛攻が中断し、エステルはその隙を逃さずに猛スピードで一気に駆け出した!!



「逃がすかっ!!」


 敵が逃げ出そうとする気配を敏感に察知したエステルは、させじとさらに加速する!!

 そして……!!


「せやあーーーっっっ!!!」


 気合一閃!!!


 大きく横薙ぎに振るわれた剣は凄まじい衝撃波を伴いながら、森の木々を纏めて薙ぎ払う!!!


 ………………

 …………

 ……


 ……何も起こらない。 



 いや、斬撃の跡に沿って木々が少しずつずれて・・・いって……


 ドドォーーーーンッッ!!!


 と、大きな声を地響きを立てて何本もの木が倒れてしまった!!


 何れも、大人の男が両腕で一抱え出来るかどうかという太さの幹を持っている。
 とても剣で斬る事など出来そうもないが……エステルの剣は造作もなくそれをやってのけた。


 だが……



「…………あ~っ!!?逃げられちゃった!!!」


 そう。
 矢を放って攻撃してきた賊は取り逃がしてしまったのである。


「ごめんなさい!!アランさん!!逃しちゃいました!!!」

「あ、あぁ……いや。君のせいではないだろう。それよりも、怪我はしてないか?」

 凄い勢いで頭を下げて謝罪するエステルに、半ば呆然としながらもアランは彼女に怪我がないか?と心配の声をかけた。


「私は全然大丈夫です!!アランさんの方こそ大丈夫ですか?一応、全部叩き落したと思うんですけど」

「問題ない。助かったぞ」

「いえいえ~。アランさんなら何とかしてたでしょうし……」

 アランが強者である事を疑っていないエステルは、彼なら自分が護らなくても自力で切り抜けていたと確信している。


「いや、そんなことはないぞ。俺は無手だったからな。無事なのはエステルのおかげだ。護ってくれてありがとう」

「えへへ~…………でも、あいつ何だったんですか?」


 王城の中で襲われるなど尋常なことではない。
 流石のエステルもそれくらいは分かるので、訝しげな表情で訪ねた。


「さてな…………まぁ、『気にするな』」

「そうですか、分かりました!!」


 ……もはや魔法の言葉である。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

処理中です...