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剣聖の娘、王都に行く
襲撃の真相
しおりを挟む後宮にて何者かの襲撃を受けたエステル。
アランには『気にするな』と言われたが、流石の彼女も全く気にしないで忘れる……と言う事は無かった。
「何だったんでしょうね……?アランさん、心当たりは無いんですか?」
「どうだろうな?無い訳では無いが……それほど心配する必要は無いだろう」
「……?」
「とにかく。また襲撃されても面倒だからな。今日はこれくらいにしておくか。エステル、城門まで送ってやろう」
そう言ってアランは案内を終えることを告げた。
「今日はありがとうございました!アランさん!!」
「いや、礼にはおよばない。俺も君を案内できて楽しかった。またいつでも来てくれ」
「はい!!それじゃ、さようなら~!!」
城門で二人は別れる。
エステルは途中何度も振り返って大きく手を降っていた。
アランは彼女の無邪気な様子に苦笑しながら、軽く手を振り返して見えなくなるまで見送るのだった。
「失礼します、陛下」
エステルと別れ、執務室で溜まった書類仕事をするアラン。
既に魔法は解除して、本来の姿に戻っている。
今日もフレイがどっさりと持ってきた大量の書類に溜め息をつきながらも、黙々と作業を進める。
そして、何度目かの溜め息をつこうとしたその時、何者か執務室の扉がノックされる。
アランが入室の許可を出すと、茶髪に茶色の瞳の一見して目立った特徴もない男が部屋に入ってきた。
アランは彼を見て、からかうような調子で言った。
「どうだった?彼女は」
「どうだった……じゃないですよ!!危うく死にかけましたよ!?」
「よくあの一撃から逃げおおせたものだ」
「……他人事みたいに言わないでください。本当にギリギリでしたよ。あと一瞬撤退が遅れていたら……今頃、森の木と一緒に真っ二でしたよ、俺は……」
それを想像して青ざめる男。
「突然あんな命令されるんですから……びっくりしましたよ。で、指令通り襲ってみれば、あんな化け物相手だったなんて……」
そう。
先程の後宮での襲撃は、彼の手によるものであり、それを指示したのはアランなのであった。
廊下で使用人とすれ違ったとき、エステルに気付かれないように指令の手紙をこっそり渡していたのだった。
その目的とは、果たして……
「お陰で彼女の実力が良く分かった。……いや、まだあんなものではないと思うが、一端は知ることができたな。感謝するぞ、ディセフ。無事で何よりだ」
「……最後に取って付けたように言わなくていいですよ。……んで、あの娘は何なんです?見た目は普通の……いや、凄ぇ可愛い女の子ですけど、剣の腕前がエグすぎる。矢を剣で落とすのはともかく、飛んできた矢を掴んで投げ返したり、あんなぶっとい木を剣で纏めて切り倒すとか…………ちょっとおかしいでしょう?」
「ふむ…………やはり良いな、彼女は」
男……ディセフの疑問をまるっと無視してアランは独りごちる。
その顔には薄っすらと笑みが浮かんでいた。
「いや……聞いてくださいよ……。とにかく、いくら陛下の命令でも、もうあんなのはゴメンですからね!命がいくつあっても足りやしないですから」
そう言い捨てて、ディセフは部屋の外に行ってしまった。
そして、執務室に残されたアランは……
「よし……決めた」
怪しい笑みを浮かべて、何かを決断する。
「最初はほんの気まぐれのつもりだったが……本気で欲しくなった。まさか俺がこんな感情を持つことになろうとは思わなかったよ」
アランは……いや、アランの名を騙った若き王は、どこか陶然としたように呟いた。
「エステル……君は、俺のものだ」
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