【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖の娘、騎士登用試験を受ける……?

試験の朝

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 エステルたちが王国騎士団の登用試験受験の手続きを行ってから10日が経った。

 今日はいよいよ試験の本番。


 結局最後まで一人部屋の空きがある宿が見つからず、この日まで二人はずっと同じ部屋で寝泊まりしていた。

 特に間違いは起きていない。
 クレイ的には鋼の自制心なんてものも特に必要はなかった。
 ……健全な男子として、それはどうなのだろうか?
 

 ともかく、朝早くから起きて支度をしなければならないのだが……


「ほら、早く起きろって!試験に間に合わないぞ!!」

「うにゅ~…………あと一日~」

「二度寝のレベルじゃねえっ!?」


 エステルは本来、朝が苦手というわけではない。
 むしろ誰よりも早く起きて、朝からうるさ……元気一杯である。

 では、なぜ彼女がこんな状態かというと……

「どんだけ楽しみにしてたんだよ……」


 今日の試験が楽しみで、興奮しすぎて眠れなかったのだ。
 エステルは毎日きっちり10時間は寝ないと調子が出ないお子様だ。



「ほら、今日を逃したら次はまた来年だぞ?」

「う~……わかったよぉ……」

 クレイが布団を無理矢理はがすと、彼女はようやく目をこすりながら起きだした。

 寝間着が着崩れてあられもない格好だが、もうクレイの心は特に波立たない。
 まったくの凪である。


「あ~……寝癖がついてんぞ。ああ、よだれの跡も……さっさと顔を洗ってこい」

「ふぁ~ぃ…………ねむ……」

 完全にオカンと子供のやり取りだ。



 そうやって何とかエステルに支度をさせて、二人はどうにか宿を出発することができた。


















「よ~し、頑張るぞ~!!」

 朝のテンションの低さとはうってかわって、元気いっぱいやる気十分のエステルだ。

 まだ朝靄に煙る街路を王城に向かって二人は歩く。
 騎士団登用試験は王城にある王国騎士団本部にて行われる事になっている。


「そういやお前……王城でアランさんに会ったんだっけ?」

 あの日、王城の中をアランに案内してもらった事はクレイにも話している。
 しかし、後宮で襲撃されたことは話をしていない。

 別に隠してるわけではない。
 単に忘れただけだ。


「うん!!色々案内してくれたんだよ」

「そうか……(やはり貴族……それもかなり高位だろう。それに、やっぱりコイツに惚れたのか?)」

 鼻歌すら歌い出しそうな上機嫌で前を行くエステルをぼんやりと眺めながらクレイは考える。


(あまり深入りしない方が良いと思うが……これから騎士になれば、そうも言ってられないか。なんにせよ、注意はしておくか)


 クレイは貴族に対して警戒心を持っている。

 この国の貴族は、平民は庇護すべき者たち……という考えで、目に余るほどに横暴な振る舞いをする者は多くはないが、中にはそのような手合もいる。

 だが、クレイが貴族を警戒しているのはそれが理由ではない。
 エステルの両親……ジスタルとエドナが王都を出ることになった理由に貴族が関わっていると考えているからだ。

 直接聞いたわけではない。
 だが長年の付き合いで、彼らが貴族に良い感情を持っていない事は何となく察している。
 より正確に言えば、王都の貴族……に対してだ。


 そんな彼らが良くエステルを王都に出したものだ……と彼は思った。
 そして、おそらくは自分の事を信頼してくれているのだ……とも。 
 ならば、彼らの期待に応えるためにも、この危なっかしい幼馴染は自分が守らなければ……と、彼は決意にも似た思いを抱くのだった。






















 二人は王城前までやって来た。

 エステルが先日訪れたときは多くの観光客で賑わっていた広場も、早朝の時間帯ということもあり閑散としていた。

 開け放たれて自由に出入りできた城門も、今は固く閉ざされて門番が前に立ち塞がっている。



「さて……試験場は騎士団本部ってことだが……お前一度来てるんだろ?場所分かるか?」

「ううん、騎士団本部は行ってない」

「何だ、お前のことだから一番最初に行ったのかと思ったぞ」

「っていうか、騎士団本部ってお城の中にあったんだね~」

「あ~……そういう事か……」

 それを知っていれば、エステルはアランに案内を頼んでいたことだろう。
 受験手続きのときにしっかり話を聞いていれば分かったはずなのだが、当然クレイに丸投げしていたエステルが知るはずもない。


「んじゃ、あそこの門番の人達に聞いてみるとするか……」


 クレイは門番に話しかけて騎士団本部の場所を聞く。
 どうやら城壁に沿ってぐるりと裏手に回り込むらしい。

 二人は門番に礼を言って、騎士団本部へと向かうのだった。

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