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剣聖の娘、騎士登用試験を受ける……?
後宮審査会
しおりを挟む後宮のダンスホールに集う着飾った女性たち。
年の頃はエステルと同じくらいの少女から、20歳手前くらいの者……うら若き乙女たちばかりだった。
総じて皆、容姿も美しく纏う雰囲気には気品が感じられた。
(……やっぱり、私だけ何か場違いな気がする。何かチラチラ見られてるし)
先程まで闘志を燃やしていたエステルであったが、自分とは全く異なる毛色の女性たちを前にして幾分か冷静になったようで、再び違和感を覚えた。
そして先程エステルに対して集まった注目。
あからさまに彼女に視線を向けている者はもういないが、今でも何度も覗うような気配は感じる。
神経の太いエステルも流石に居心地が悪そうで、早く試験が始まってほしい……と思っていた。
そんな彼女の祈りが通じたか、乙女たちが集まるダンスホールに新たな人物が入ってきた。
少し神経質そうな顔をした年配の女性である。
服装は、エステルを案内してくれたクレハと似たような格好。
彼女と同じ王城の使用人の一人であろう。
その女性はドレス姿の集団の前までやって来ると、一礼してから口を開いた。
「大変お待たせいたしました。本日はここ……エルネ後宮までお越し下さり、まことにありがとうございます。私はこの度の審査会で皆様をご案内させて頂きます、ドリスと申します。よろしくお願いいたします」
丁寧な口調で挨拶をしてから、再び深く一礼する。
そして、頭を上げて更に続ける。
「此度の審査会は、この国の行く末を決めると言っても過言ではない非常に大切なもので御座います。どうか皆様、悔いの残らぬよう……能力、美貌、教養、人柄……皆様がお持ちになる御自分ならではの魅力を存分にお示しいただければと思います」
彼女の挨拶は、そう締め括られた。
すると、一人の女性が手を上げる。
エステルのものよりも鮮やかな赤いドレスを着た、金髪碧眼の美少女。
顔立ちからして歳はエステルより上に見えるが、そう離れてはいないだろう。
だが、その起伏に富んだ成熟した身体付きはエステルとは比べるべくもなかった。
「発言してもよろしいかしら?」
「はい、レジーナ様。もちろんでございます」
彼女の名はレジーナと言うらしい。
エステルにも劣らぬ美貌、落ち着いた物腰と堂々とした態度、優雅な所作から滲み出る気品、そして見る者を魅了するカリスマを兼ね備えていた。
エステルが輝くばかりの生命力に満ち溢れた向日葵だとすれば、彼女は芳しい香りを纏う大輪の薔薇だろうか。
「私達は将来の王妃、あるいは王の血を絶やさぬための側室候補としてこの場にやってきましたが……いったい、どなたがどうやって私達を審査するのです?」
(……んぇ?王妃……?側室……?)
レジーナの言葉に、引っ掛かりを覚えるエステル。
……ようやく気が付いたか?
(……ん~、よく分かんないや)
しかしエステル・ブレーンは、それ以上考えることを面倒くさがって放棄する。
流石のエステル・クオリティ。
間違っても、彼女を王妃なんかにしてはダメだろう……
「このあと皆様には様々な課題を受けて頂いた上で総合的に判断させていただきます。ただ、具体的にどうやって、誰が……という点については、大変恐れ入りますが、私からお答えすることは出来かねます。ただ……審査中の皆様の振る舞いなども含めて、常に見られている……そう、ご理解くださいませ」
「……ええ、分かりましたわ」
ドリスの答えに完全には納得していない様子のレジーナであるが、特にそれ以上は何も言わずに了承の意を伝えた。
「それでは皆様……早速ですが、最初の課題に入りたいと思います」
彼女がそう言うと、ダンスホールの入り口から様々な楽器を携えた女性たちが入ってくる。
揃いの衣装を纏ったのは王城付きの楽士隊だ。
全員女性なのは、この場が男子禁制であるためだろう。
彼女たちは一礼して入室すると、ホールの奥に設けられた演奏スペースに向かって楽器の準備を始める。
その様子を見ながら、ドリスは最初の課題を告げた。
「第一の課題は『ダンス』でございます。ここは男子禁制の場ですので……男性パートは僭越ながら、私共がお相手させていただきます」
(……ダンス?……剣舞なら得意だよ!)
違う、そうじゃない。
いよいよ始まった後宮入りのための審査会。
エステルは未だ騎士登用試験であると勘違いしたままであるが……果たして、彼女は見事審査を合格することが出来るのか?
そして、無事に騎士になれるのか?
……その運命はいかに!?
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