56 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!
尋問
しおりを挟む何とかゴロツキのリーダー格の男を復活させ、人身売買組織の情報を聞き出そうとしたエステルだったが……
「何にも知らない……?そんなわけ無いでしょ」
「う、嘘じゃねぇ!俺等はただの末端なんだ!本当に、組織の事は殆ど知らねぇんだ……信じてくれ!」
エステルから強烈な闘気をぶつけられ、カタカタと震えながらも男は人身売買組織の詳細は何も知らないという。
その様子からすると、男が嘘をついているようには見えなかった。
先程ティーナから聞いた話でも、捕まるのは末端ばかりで全容が掴めない……との事だったので、エステルは彼の口から組織の情報を入手するのは諦める。
しかし。
「でも、私やティーナさんを売ろうとしたのなら……そいつらと接触する方法があるんでしょ?」
今回ばかりはエステル・ブレーンのポンコツさは鳴りを潜め、まるで凄腕の女騎士のように男に問い質す。
……本当に彼女はエステルなのだろうか。
「そ、それは…………」
エステルの質問に男は言い淀むが……
「ひぃっ!?」
更に強くなった彼女の闘気が浴びせられると、男はへたり込んで恐怖で顔を歪める。
腰を抜かして地面に座り込み、その体勢のまま後退るが……それに合わせてエステルも間を詰める。
「……教えなさい。すり潰すよ?」
普段の快活で脳天気な彼女からは想像もつかない氷の表情。
それとは逆に、絶大な『気』が陽炎のように空気を揺るがせる様は凄まじい熱量を感じさせるほど。
普段から荒事を生業とする男であっても、鬼神の前ではただ震え上がる事しかできない。
「わ、分かった!!教える!!教えるから勘弁してくれ!!」
ついに恐怖に屈した男は観念する。
「……よし。それじゃあ、教えてくれる?」
それまでの恐ろしい雰囲気を一転させ、エステルは再び男に質問した。
男は霧散した闘気にほっとした表情を浮かべ、少し躊躇ってから口を開いた。
「……決められた連絡場所があるんだ。一見普通の、なんてこたぁねぇ酒場なんだが……」
「ふむふむ。お店の名前は?」
「……『宵闇亭』だ。そこでマスターに……」
そうしてエステルは男から店のある場所と、連絡員と接触するための情報を聞き出した。
「なるほど~。それじゃあ早速そこに行ってみようかな」
「いや、店は夕方からしか開いてねぇぜ」
エステルは迅速果断にそう言うが、男が待ったをかけた。
酒場なのだからそれも当然だろう。
「そっか……なるべく早く妹さんを助けに行きたいけど……」
「エステル様…………ありがとうございます。でも、どうかご無理はなさらず……」
ティーナの方こそ妹を早く助けたいと思っているはずだが、彼女はエステルが躊躇いなく裏組織と戦おうとしているのを見て、彼女の身も心配する。
「取り敢えず夜まで待って、その間作戦を考えるとして…………こいつらはどうしようかな」
「み、見逃してくれ…………」
「そんなわけないでしょ。これまでも女の人を攫ってたんだから、許すわけにはいかないよ。取り敢えず騎士団詰所に連れてって……」
エステルがそう言いかけたとき、その場に新たな人物が現れる。
「エステル嬢、それには及ばない」
「へ?……あなたは……騎士?」
現れたのは20代半ばくらいの男。
細身だがよく鍛えられた身体に、見覚えのある軽鎧……王国騎士の装備だ。
「ああ。俺は王国騎士団のディセフと言う」
「ディセフさん?…………はて?どこかで会ったような……?」
「(ギクゥッ!?)……いや、初対面だが」
かつて王の命令によりエステルの実力を測るため、後宮で彼女を襲撃したディセフ。
エステルはどうやら彼の気配が記憶に引っかかったようだが、思い出すには至らない。
ディセフは内心で焦りながらも、表向きは冷静に初対面だと説明する。
……彼の背中には冷たい汗が伝い落ちていた。
「そっか、気のせいか~」
「そうそう、気のせいだ(ほっ……)」
何とか誤魔化して、やはり内心で安堵の息をつく。
「じゃあ、こいつらは任せても?」
「ああ、もちろんだ。騎士団としても人身売買組織の情報は欲しいからな。……そちらのお嬢さんも、事情を聞かせてくれ」
「は、はい……!」
ディセフはそう言うが……エステルはその言葉に違和感を覚えた。
……いつになく鋭い。
「……どこから話を聞いてたんですか?というか……何で私の名前を?」
ある程度事情を押さえている事から察するに、彼はエステルとティーナ、ゴロツキのリーダーとのやり取りを聞いていたはずだ。
それも、野生の勘を持つエステルに気取られる事なく。
「あ~…………実は、アルド陛下の指令なんだ。……アンタが街で行動する際には、その動向は押さえておくように……ってな(途中見失ったんだが、取り敢えずセーフだ)」
「あ、なるほど~。『極秘任務』ですね!!」
事情を聞いたエステルは、目を輝かせて言った。
どうも『極秘任務』という言葉が彼女のマイブームとなっているようだ。
36
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる