【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖の娘、裏組織と戦う!

叙任式1

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 騎士の礼装を纏ったクレイとギデオンは、ディセフに案内されて叙任式を執り行うため王城内の聖堂へと向かっていた。

 今回は略式との事だが、諸々の式典などが省略されるだけで、手続は正規の手順に則って行われる。
 後日、ふたりは他の新規登用の騎士たちに混じって正式な叙任式にも参加する事になるらしい。


(二度手間で面倒くさいな……)


 と、クレイは思ったものの、早く騎士になれること自体は歓迎している。
 本来であれば試験の結果を確認したら、一度シモン村に帰る予定だったので、その手間は省けたとも言える。


(……後で手紙出しとかなきゃな。アイツはそんな気の利いたことしないだろうし。……しかし、アイツの事は何と伝えるべきか?)

 ……彼は本当に苦労性である。



「本来だったら騎士団長も参加するんだがな……生憎と遠征に出ていて不在なんだ」

 案内の途中でディセフが言う。
 本来の正式な式典は、騎士団長は当然として国の要職に就く者や高位貴族なども列席する盛大なものだ。


「騎士団長……確か、国王陛下と並んで王国最強の騎士……だっけか」

「そうだ。騎士の中の騎士、『大聖騎士』ディラック様だ。あの伝説の剣聖ジスタル様の一番弟子なんだぜ!」

「……え?」

 クレイの呟きに答えるギデオン。
 突然出てきた師の名前に、クレイは驚きの表情となる。


「何だ、知らなかったのか?王都では有名な話だぞ」

「あ、あぁ、いや……俺の村は辺境もいいところだからな。初めて聞いた」

「そうか。ディラック様は王都民の憧れの存在だからな、早くお会いしたいぜ。……ん?ディセフさん、どうしたんすか?」

 ギデオンは、ディセフは複雑そうな表情を浮かべているのに気がついて声をかけた。


「いや……あんまり幻想は持たないほうがいいぞ」

 その言葉と、ディセフの表情を見たギデオンは思った。
 エステルの事を話すときのクレイに似ているな……と。



 そして、そのクレイはと言えば。

(……師匠の一番弟子って事は、俺やエステルの兄弟子って事だよな。そんな事一言も言ってなかったけど……単に知らないだけかもしれんが)

 もしジスタルがそれを知っていたのであれば、別に隠す理由もないはず、と彼は思ったが……


(いや、師匠はあまり王都の事は話したがらないからな……昔なにがあったのかハッキリしないが、俺たちもあまり師匠の事は言わない方が良いかもしれん)


 因みにエステルがジスタルとエドナの娘であることは、騎士登用試験の願書に記載していたので騎士団の一部の人間には知られている。
 だがアルドが早々に口止めをしているので、その事実はそれ以上に広がっていない。




 そして彼らは聖堂へとやって来た。
 王城の中庭の一つに建てられたそれは、女神に祈りを捧げるためのもの。
 今回の叙任式のような式典にも良く用いられる。

 その大きさは街にある神殿とは比べ物にならないが、神聖な雰囲気はどちらも変わらない。
 中に入ると、色とりどりのガラスが嵌められた明り取りの窓から光が差し込み、より神聖な雰囲気を醸し出している。


 一番奥の女神像の前には、既に何人かの人が彼らを待ち受けていた。


(あの方が国王のアルド陛下か。確かに若いな……隣にいらっしゃるのは王妹のマリアベル殿下か)

 クレイは彼らがアランやマリアの正体とは気が付いておらず、完全に初対面だと思っている。
 自分の暮らす国の国王や王妹を目の前にして、流石にクレイも緊張を見せる。

 だが。


(……ん?逆隣にいる女性は……って!?)

 アルドを挟んでマリアベルとは反対側に視線を向けると、そこには彼が良く知る少女が立っていた。
 遠目でも直ぐに分かるその少女は、もちろんエステルである。

(おまえ何やってるんだ!?その立ち位置……それじゃあ、まるで……)

 王と並び立つなど王族か、あるいは…………
 そう思ったクレイの頭の中は大いに混乱するが、それは表には出さずにアルドたちの近くまで歩いていく。

 そして、近付いて見てもやはりエステルなのだが……クレイを別の衝撃が襲った。


(エステル……だよな?)

 内心で戸惑うが、エステルであるのは間違いない。
 何が楽しいのか、ニコニコとした笑顔のその表情は彼が良く知るものだ。

 だが……薄化粧を施し、きらびやかなドレスを着た彼女はいつにも増して美しかった。
 普段からエステルを見慣れている彼であっても、思わず目が奪われる程に。
 本当に本人か?と疑いの念すら沸き起こってしまう。

 そして、クレイは何だか落ち着かない気持ちになってきた。
 なぜアルドの隣に並んで立っているのか……心がざわめくが、彼はそれを自覚することが出来なかった。

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