73 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!
エステルvsクレイ2
しおりを挟む開始の合図とともに、まず動いたのはクレイだ。
彼は戦闘中とは思えないくらいにゆったりとした足取りで、エステルの方に歩を進める。
彼女は構えを崩さずその場に留まって、クレイを待ち受けていた。
そして、開始の位置から半分ほど距離を詰めたところで……突然クレイが爆発的な加速を見せる!
次の瞬間、ガンッ!!と、木剣を打ち鳴らす鈍い音が訓練場に響いた。
クレイが二本の剣をそれぞれ袈裟懸けに振るった攻撃を、エステルが横に構え直した大剣で纏めて防いだのだ。
この場にいる者で、今のクレイの攻撃を視認出来たのはほんの僅かしかいなかった。
二剣と大剣の鍔迫り合いは長くは続かない。
エステルは大剣を力ずくで押しやりながら、クレイの胴に蹴りを放つ!!
しかし、彼は大剣に押される力も利用して一瞬で後方に飛び退る。
逃さないとばかりにエステルは前に飛び出し、大剣を叩き込もうと振りかぶる。
クレイはそれに合わせてカウンターを狙うが……エステルは大剣を振りかぶった姿勢のまま大きく跳躍した!!
「何っ!?」
クレイのカウンターは空を切り、エステルは身体を翻しながら彼の頭上に舞い上がる。
そして……!
ドンッ!
彼女は天井を蹴って加速し、一気にクレイの背後に着地し、そのままバックハンドで大剣を振るう!
ガァンッ!!!
「あっぶねえ!!何てことしやがる!?」
「よく止めたじゃない!」
遠心力の乗ったエステルの一撃を、かろうじて二剣を交差させて防いだクレイ。
衝撃を吸収しきれないと咄嗟に判断した彼は、剣で受け止めながら後ろに飛んで退避している。
「お前、屋内戦の経験なんかあったっけか?」
「無いけど……今のは木の枝とかでもやったことあるよ」
「あ~……なるほどな。それにしても、俺を殺す気か?」
「このくらいクレイなら全然平気でしょ。まだまだ行くよ!!」
「はぁ~……勘弁してくれ。結構ギリギリなんだぞ、こっちは」
そんな弱音を言いながらも、クレイはエステルの怒涛の連撃を捌いていく。
言葉とは裏腹に余裕を持って対処しているようには見える。
そして、エステルの斬撃による衝撃波が訓練場の中を吹き荒れる。
木剣であるのにもかかわらず、それは当たればただでは済まされない威力を持っていた。
いくつかの斬撃波がマリアベルが張った結界に衝突する。
その度に、『バァンッ!!』と破壊音が響いて見学する者たちの肝を冷やすが、今のところ結界に綻びが生じる気配はなさそうだ。
「ディ、ディセフ様……彼等はいったい……?」
あまりにも隔絶した力を持つ二人の戦いに、ディセフの近くにいた騎士の一人が呆然となって聞いてくる。
「凄いだろう?ハッキリ言って、あの二人とまともに戦えるのは……陛下か団長くらいだろうな」
「……前倒しで入団させた意味が分かりましたよ。あれなら確かに即戦力ですね」
その騎士の言葉に、周りで聞いていた者たちも同意して頷く。
実力を知らしめて疑念を払拭するという、ディセフの目論見はもう達成されただろう。
「そうだろう。彼ら程ではないが、そこのギデオンも中々のものだぞ」
「……いえ、ありゃあレベルが全然違います。比較されても困るっすよ」
ついでとばかりにギデオンの事も売り込むディセフの言葉に、当の本人は複雑そうな表情で答えた。
「何だ、デカい図体をして随分と情けないことを言うじゃないか?」
「う……陛下……」
「王国騎士たる者、常に上を目指さなければならん。ましてやあんな頂きが目の前に見えてるなら尚更だろう」
アルドは、ギデオンに発破をかける。
それは彼だけでなく、周りで聞く者にも聞かせるためでもあったのだろう。
「陛下の仰る通りだ。俺とて彼らから見ればまだまだ未熟者だと痛感させられた。だが、それで腐る必要などない」
アルドの言葉に同意してディセフもそのように告げた。
そうしている間も二人の戦闘は続く。
幼馴染同士であり、これまで何度も手合わせしてきたのでお互いに手の内は知り尽くしている。
であれば、勝敗の行方は地力で勝る方に傾くわけだが……実際にエステルがクレイを圧倒し始めていた。
「はぁ~っ!!!」
「くっ……!!」
大剣をまるで小枝のように縦横無尽に振るうエステルの攻撃。
クレイは二剣を駆使して何とかそれを防ぎつつ反撃を試みるが……暴風のような彼女の攻撃の前に飲み込まれようとしていた。
(相変わらず出鱈目だな!!狙いすました緻密な斬撃を放ってきたかと思えば、力尽くのゴリ押しもある。……いや、8割はゴリ押しかもしれんが。どちらにしても厄介この上なない)
最初こそ受けに回ったが、エステルの戦闘スタイルは息をもつかせぬ圧倒的な攻撃力こそが持ち味だ。
父ジスタル仕込の剣の技はもちろんだが、相手の防御ごと吹き飛ばす力任せの一撃が連続で襲ってくるのは脅威以外の何ものでもない。
一旦調子付かせてしまうと、嵩に懸かって攻め立てられ反撃もままならなくなる。
(こいつめ……幼馴染の入団に華を添えるとか無いのかよっ!)
そんなものあるわけない。
彼女は相手の力量に合わせる事はあっても、それは手抜きなどではない。
面倒くさがりの彼女だが、こと剣術に関しては非常に真面目で全力を尽くすのだ。
もちろんクレイはそんな事分かってはいるが、いよいよ手がなくなってくると恨み言の一つも言いたくなるのである。
既に手がつけられないくらいにエステルの猛攻はとどまることを知らず、既にクレイは防戦一方となっていた。
(だが、このままで終わると思うなよ……!)
荒れ狂う暴風の中、クレイは起死回生の一撃の機会を虎視眈々と覗っていた。
26
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる