72 / 151
剣聖の娘、裏組織と戦う!
エステルvsクレイ
しおりを挟む「集合!!」
ディセフが号令をかけ、訓練場にいた騎士・兵士を集合させる。
ディセフの横にアルドとマリアベル(アルド達の後からやって来た)が立ってるのに気付いた彼等は、その場で臣下の礼を取ろうとするが……アルドはそれを手で制して言う。
「そのままでいい。俺たちのことは気にするな」
そうすると、今度はクレイ、ギデオンに注目が集まる。
そして、先程から騎士たちが気にしていたエステルにも。
それを察したディセフが紹介を始めた。
「あ~、先ずはこちらの二人だが……格好を見れば分かると思うが、新たに我が王国騎士団に加わることになったクレイとギデオンだ。先程、任命されたばかりだな。二人とも相当な実力者で、即戦力となるのは間違いないだろう」
「よろしくお願いします」
「ぃしゃっす!!」
ディセフの紹介を受けて二人は前に出て挨拶をする。
すると、先輩騎士たちから拍手や「よろしく!」と言った歓迎の声が上がった。
そして、残ったエステルへと注目が集まった。
「あ~……彼女は、何というか」
そこでディセフはアルドに、ちら……と視線を向けたが、彼は特に説明する気は無いようだ。
仕方なくディセフは自ら説明を続けた。
「詳細はこのあと隊長格の者に話をするんだが……近日中に大規模作戦が行われるという話は皆も聞いているだろう」
ディセフはそう切り出したが、謎の少女の紹介をするかと思っていた騎士たちは戸惑いの表情を見せた。
だが、その疑問は直ぐに解消される。
「その作戦で重大な役割を担ってもらう事になっているのが、こちらのエステル嬢だ」
「みなさんこんにちは!!未来の聖女騎士エステルです!!よろしくお願いします!!」
元気よく挨拶するエステルだが……『聖女騎士』なる聞き慣れない単語に、みんな頭に疑問符を浮かべていた。
(……聖女騎士って何だよ。まぁ、確かにコイツは野良聖女で、何れは騎士になるつもりだろうが。あぁ、だから『未来の』って付けたのか。一応コイツなりに考えてるんだなぁ)
内心で妙な関心をするクレイである。
「……コホン。とにかく、彼女が作戦の要なのは間違いない。それでだな、これから彼女と騎士クレイが手合わせをするんで、その実力の程を皆にも知って欲しい」
ディセフがそう言うと、今度は驚きの視線がエステルに集まった。
どう見ても戦いとは無縁そうに見えるので彼らの反応は当然だろう。
「二人とも、武器はあそこにあるものを自由に使ってもらって構わない」
ディセフが指し示した先には、訓練用の武器類が保管されている一画があった。
エステルとクレイは早速そこで武器を吟味する。
「う~ん……どれがいいかな~……よし!これにしよう!!」
彼女が選んだのは、以前ウィフニデアの騎士団で手合わせしたときと同じような、自身の背丈ほどもある木製の大剣だ。
木製とは言え少女の細腕では持ち上げることすら困難と思われるそれを、エステルは難なく振り回している。
それを見た騎士たちの反応も、かつてのウィフニデア騎士団の面々と似たようなものだった。
対するクレイと言えば……
「お前が相手なら本気で行かないとな……(じゃないと、コイツ容赦ないから殺される)」
エステルはクレイが相手なら全力を出してくるので、まさに命がけである。
下手に気を抜いたら本当に死にかねないのだ。
「よし……こいつで良いか」
そう言って彼が選んだのは……二振りのショートソードだが、右手に持つのは長め、左手に持つのは短めのもの。
要するに、二刀流である。
本来、彼が師ジスタルから教わったのは、あくまでも片手剣の技だ。
このスタイルは、エステルと手合わせする中で彼女に対抗するために、彼が自分自身で編み出したものである。
そうして武器を選んだ二人は、訓練場の中央で対峙する。
エステルは正眼の構え。
一方のクレイは、やや右前の半身になって両腕の力を抜き、剣の切っ先は地面を向く独特な構えだ。
「今回も勝たせてもらうよ!クレイ!」
「さて、どうかな……その慢心が命取りかもしれないぞ?」
挑発し合う二人。
お互いに幼い頃から何度も対戦してきた相手ゆえに、手の内は知り尽くしているが……果たして、今回の勝敗の行方は如何に?
「よし、では合図は俺が……」
「ちょっと待て、ディセフ。その前に……マリア、結界を頼む」
ディセフが開始の合図しようとしたとき、アルドがそれを遮って妹に結界の魔法を使うように指示する。
「え?……うん、分かったわ、兄様」
マリアベルは一瞬、「そんな大袈裟な……」と思ったが、エステルが兄と互角の力を持つと聞いたのを思い出して、言われた通りにする。
『聖なる光よ、我らを護る盾となれ』
マリアベルが詠唱すると、観客を護るように淡い光の壁が現れた。
「よし、これで良いだろう。思う存分やってくれ」
「姫、ありがとうございます。……では、始め!!」
ディセフの開始の合図が訓練場に響き渡る。
エステル対クレイ。
その戦いの火蓋が切られた……!
16
あなたにおすすめの小説
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』
チャチャ
ファンタジー
毎日ドタバタ、でもちょっと幸せな日々。
家事を終えて、趣味のゲームをしていた主婦・麻衣のスマホに、ある日突然「スキル習得」の謎メッセージが届く!?
主婦のスキル習得ライフ、今日ものんびり始まります。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる