【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I

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剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!

事後処理

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 少女救出作戦における戦いは決着した。
 組織の構成員と思われる白仮面の男たち、そしてオークションのバイヤーらしき黒仮面の男たち、その全員が捕縛された。
 戦いの場から一時避難させた少女たちは全員無事。
 騎士団員たちも、多少の怪我を負ったものはいたが、大勢に影響はない。

 そして、その事後処理での事。



「クレイ、ありがとね」

「ん?何が?」

 落ち着きを取り戻したエステルがクレイに礼を言うが、言われた当人は何のことか分からなかった。


「ほら、私が取り乱していた時に……」

「ああ……別に、大したことじゃないさ」

 アルドが自分の身代わりになって負傷したとき、エステルは頭が真っ白になって、その場でやるべき事を直ぐに実行することができなかった。
 クレイの叱咤の声で我に返ったこと……そして、竜人に止め刺してくれたこと。
 そのお礼だったのだが、クレイは何でもないことのようにさらっと流した。

「……クレイは、いつも頼りになるよね」

 エステルが普段からクレイに甘えているのは、信頼して頼りにしているからこそ。
 口うるさくて『お母さん』みたい、などと言っていたが、やはり頼れる『お兄ちゃん』という感じでもあるのだろう。


「…………お前がそんなしおらしくしてるとは。熱でもあるんじゃないか?」

「失礼な!私だって反省するときはするし、助けてもらったらお礼だって言うよ!」


 心底意外だという表情でからかうようにクレイが言えばエステルは憤慨するが、どうやらいつもの調子が戻ったようだ……と、彼はホッとする。

「ははっ、調子が出てきたじゃないか。お前にしんみりは似合わないよ。周りを振り回すくらいでなきゃな」

「もぅ……。でも、ありがと。……あ、私みんなの様子を見てくるね!」

 助け出された少女たちが視界に入り、その様子が気になった彼女はそう言い残してそちらの方へと行ってしまった。


 すると、そのタイミングでアルドがやって来る。
 配下の騎士たちに指示を出していた彼は、クレイが一人になるのを見計らっていたようだ。

「クレイ、ご苦労だったな」

「陛下……大丈夫ですか?」

 エステルを庇って負傷したアルドを気遣うクレイ。
 癒しの奇跡により既に回復したとは言え、王に仕える騎士としてはやはり気になるのだろう。

「あぁ、全く問題ない。お前も聖女の力は知ってるだろう?大したものだよあれは。まさに女神の奇跡だ。欲する者がいるのも不思議ではない」

「……そうですね」

 人身売買組織が、聖女の力の有無を確認していたことはクレイも聞いている。
 詳細はこれから捕らえた者たちを尋問して聞き出す事になるだろうが……幼馴染の聖女エステルも組織の標的足り得たと思えば、彼の心中も穏やかではない。


「そういうお前は大丈夫なのか?」

「?何のことです?」

 アルドと違い自分は怪我などしてない……と、クレイは不思議そうに聞き返す。
 しかしアルドが心配したのは身体のことではない。
 エステルと同じように、クレイも人を殺した経験などないのではないか……と思い、最後に竜人に止めを刺した彼の精神面を心配したのだ。

「お前も、人を殺した経験は無いだろう?」

「あぁ、そういう事ですか。……いえ、ありますよ」

「……そうなのか?」

 クレイの答えを意外に思ったアルドは更に聞き返した。


「辺境の地の脅威は、何も魔物だけじゃありませんからね。何年か前に野盗が村を襲ってきた事があって……その時はエステルと違って、手加減するような余裕なんてありませんでしたから」

「……そうか。本来なら国の仕事なのだがな……この国の王としてすまないと思う」

「あ、いえ……そんな……」

 クレイとしては国を責めるような気持ちはさらさら持っていない。
 彼だけでなくシモン村の民は皆そうであるし、むしろ開拓精神と自立こそが誇りでもある。

 だが、王と言う立場でありながらアルドが口にした言葉は心からのものである事が感じられた。
 先ほどエステルを庇い、気落ちした彼女を慰めていた時も。
 騎士として、そのような王に仕えることができて良かった……と、クレイは思うのだった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「エステルちゃん!!」

 救出した少女の一人……クララは、エステルが様子を見に近づいてくると、駆け寄って彼女に抱きついた。

「クララちゃん!もう大丈夫だよ!皆も、これでお家に帰れるよ!」

 満面の笑みでエステルが言うと、他の少女たちも集まってきてエステルを囲み歓喜の輪が広がった。
 そして涙を流しながら彼女に感謝を述べ、その活躍を称えた。

 少女たちにとってエステルはまさに英雄だった。
 神殿の地下に彼女がやってきたときから、その明るい笑顔に少女たちは救われた。
 そして、絶望の縁に立たされたとき彼女は本当の救いをもたらしてくれた。
 悪の組織と戦う、可憐でありながら力強いその勇姿が今も目に焼き付いている。
 そして、アルド王率いる騎士たちの戦いも。

 少女たちは、彼らの活躍を決して忘れることは無いだろう。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 少女たちを無事救出し、一連の事件の参考人となりそうな者たちも多く捕らえることが出来た。
 もうこの場はそろそろ撤収しようか……と、アルドが考えていた時の事だった。


「へ、陛下!」

「どうした?」

「あ、あの『竜人』が……!」

 慌てた様子でやって来た騎士の一人が、『竜人』が倒れていたあたりを指しながら言う。

 そちらの方を見れば……何やら騎士たちが集まって騒いでいる様子だった。

 アルドは何かが起きていることを察して彼らのもとに向かう。


「何があった!」

「陛下!あれをご覧ください!」

 そう言って彼が示した先、クレイが止めを刺した『竜人』が倒れていたはずのその場所には……


「っ!!これは……!元の姿に戻ったのか!?」

 そう。
 そこに倒れていたのは、異形に成り果てる前の男の姿が。
 更に、それだけでなく。

「!まだ息をしている……!エステル!!すまないが、こっちに来てくれ!!」

 もう虫の息と言った感じではあったが、男は確かに呼吸をしていたのだ。
 組織の幹部と思われる重要人物だ。
 何としても死なせるわけにはいかない……と、アルドは彼の命を救うべく、エステルを呼ぶのだった。

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