132 / 151
剣聖の娘、裏組織を叩き潰す!
尾行の果て
しおりを挟む一連の少女誘拐事件の捜査過程において、過去にエル=ノイア神殿で起きた聖女行方不明事件を連想させる出来事があった。
すなわち、少女誘拐・人身売買は隠れ蓑であり、真の目的は神殿が把握していない聖女を探し出すことにある……と。
当然、騎士団としては神殿にも捜査の手を伸ばしたいところだったが……例え国王と言えど神殿内部には権限が及ばない。
だが、国王と大神官の交渉により、騎士団が神殿主導の捜査に協力するという体裁をとって実質的な共同捜査を行うことになった。
国王アルドの命により騎士団から派遣されたディセフは、かつての事件の事を知る者達に聞き取り調査を行っていたが、その結果はあまり芳しいものではなかった。
得られる情報は既知のものばかりで、現在進行で起きている事件との関わりを示すような決定的な手がかりは得られなかったのである。
そんな中、神殿側の捜査責任者に指名された大神官補佐のモーゼスが、かつての事件の際に集めたという様々な情報や資料を秘密裏に提供してきた。
なぜ捜査開始時すぐにそうしなかったのか?
彼が言うには、神殿内部に裏組織の間者が紛れている事を懸念した……ということらしい。
そして、それらの情報によって今度は神殿側が王国に捜査協力するため、モーゼスは騎士団本部に赴いたのだが……彼はそこで事態が急転したことを知る。
急ぎ作戦行動を開始することになった騎士たちを尻目に、彼は単身で別行動を取ろうとするのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
誰にも何も告げず、一人である場所に向かっていたモーゼス。
彼は王都の外壁の外に出ると早々に街道から外れ、小高い丘に向かう小径へと入っていった。
後を追うレジーナも、気付かれないように木立の陰に隠れながら付いていく。
(この道は……お父様の屋敷の近くを通るわね)
数時間ほど前にも通った道である。
もしかするとモーゼスは、父に会いに行くのだろうか……彼女はそんな疑問を抱いた。
しかし彼は更に進むと、バルドの屋敷に向かう道からも逸れていく。
道は段々と細くなり、辺りは薄暗い森となった。
もはやほとんど獣道といった風情。
いったいこんな場所に何の用があるのか……と、レジーナのモーゼスに対する疑念はますます深まった。
やがて森を抜け……両側が断崖となっているゴツゴツとした岩場に到達する。
すると、モーゼスはしばらくそこを進んでから立ち止まった。
そこにあったのは……
相当に古い時代のものと思しき遺跡であった。
原型を留めないほどに崩れ去り、ほとんど瓦礫の山と化しているが……僅かに残された太い石造りの柱や、その意匠からは古代の神殿跡地のようにも見えた。
(……遺跡?そういえば……『聖域の森』をはじめとして、王都周辺地域の遺跡群の多くは神殿の管理下にあるって聞いたことがあるわ)
モーゼスは、エル=ノイア神殿の大神官補佐である。
ならば、彼は遺跡の管理者としてここに用事があったのだろうか……それがどのようなものかは分からなかったが、レジーナはそんなふうに予想した。
だが、モーゼスは特に何をするでもなくその場に立ち尽くす。
岩陰に隠れて様子を見ているレジーナの目には、誰かを待っているようにも見えた。
そして暫くしてから、その見立ては正しいことが証明される。
何者かが遺跡の方からやってきたのだ。
レジーナが隠れている場所からは見えにくいが、どうやら数名の男たちのようだ。
彼らがモーゼスの姿に驚き、息を呑むような気配が伝わってきた。
「!!……貴様、なぜこんなところに!?」
「それは私のセリフですよ。なぜ、エルネア王国を追放された貴方がこんなところにいるのです?義父上……いえ、前大神官ミゲル殿」
そう言いながらモーゼスは外套を脱ぎ去り、腰に佩いていた剣を抜き放った。
それに伴いミゲル配下の護衛と思しき男たちも抜剣し、不穏な空気が漂い始めた。
(前大神官……!!?な、なぜ!?…………ど、どうしたら)
全く想定していなかった事態にレジーナは混乱し、自分はいったいどうするべきか直ぐに判断が下せない。
こんなことなら誰かに声をかけていれば……と、後悔するももはや後の祭りである。
今からでも街に戻って誰かを呼んで来るべきか……とも彼女は思ったが、時間がかかり過ぎる。
比較的近場にバルドの屋敷があるものの、そんな余裕があるものか……
レジーナの焦る気持ちとは裏腹に、モーゼスとミゲルの会話は進む。
エステルやアルド、ディセフたちが与り知らぬところで……事態は別の局面を迎えるのであった。
117
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる