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第39話 祖国からの手紙
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結婚式の準備も大詰めになった頃。
自室で紅茶を飲んでいると、侍女のマイカがアイザックに関する情報をこっそり教えてくれました。
「アイザック様は最近、よく山に出かけられているようです。竜晶石を準備しているっていう話ですよ」
「竜晶石って、竜の宝石のことよね? かなり珍しいって本に書いてあったけど」
「はい、それはもう非常に珍しい物で、どんなに小さくとも国宝クラスになるものです」
竜晶石は、竜の力が満ちているこのジェネラス竜国にしか存在しない鉱物です。
見た目は水晶に似ているのだけど、硬さも効能の水晶とは比べることはできない。
なにか特別な力があると云われているけど、その能力は秘密になっており、王族しか知らないのだとか。
伝承では、初代国王が妻である竜天女に贈ったと書かれていたわね。
逆に言えば、そういった伝承くらいにしか出てこない代物です。
あまりにも珍しすぎるせいで、伝説の鉱物とも言われているらしい。
「アイザックったら、公務が忙しいのにそんなものを探して……」
「ふふ、ルシル様。愛されていますね」
「もう、からかうのはやめなさい」
「でも、民はルシル様のことを竜天女の生まれ変わりだとか再来だと讃えていますよ。最近は竜国の天使なんてあだ名までついて、アイザック様も負けてられないと思ったのではないでしょうか」
ジェネラス竜国内での私の人気は、高まるばかりです。
もちろん、それを知らない私ではないし、竜好きな私のことを竜が入る名前で呼んでもらってめちゃくちゃ喜んでいます。
そのせいで、もしかしたらアイザックは民たちに嫉妬でもしているのかも。
「私のために竜晶石を探してくれているのは嬉しいけど、無理だけはしないでほしいわね」
アイザックの体は一つしかない。
代わりはいないのだから、私のために無理をして倒れられたら目も当てられないから。
──コンコン。
突如、扉がノックされました。
マイカが扉を開けると、メイドが手紙を運んでいました。
私の代わりにマイカが手紙を受け取り、それを私に届けてくれます。
「誰からの手紙かしら。手紙の差出人は……セシリアじゃない!」
セシリア・サンセット、
彼女はカレジ王国での私の元侍女で、いまでは友人のような関係になっています。
最後に会ったのは、私が処刑されることが決まった際に、牢屋に会いに来てくれた時になる。
セシリアはサンセット子爵家に嫁いでいるはずだけど、元気にしているのかな。
私は元侍女のセシリアの手紙を読み進めます。
すると、次第に手が震えてきました。
そんな私の様子を見て、マイカが心配そうに尋ねてきます。
「ルシル様、大丈夫ですか?」
「…………ええ、大丈夫よ。ちょっとアイザックに会いに行ってくるわ」
手紙を持ったまま、部屋を後にします。
そのななアイザックの執務室に向かった、空振りに終わりました。
「アイザックは外出中……もしかして、竜晶石を探しに出かけているのかしら」
侍従に聞いてみたけど、アイザックがいつ戻るかはわからないということでした。
アイザックは今日のためにすべての公務を終わらせ、密かに休暇を取っているらしい。
ほぼ間違いなく、竜晶石を探すために山籠もりしているのでしょうね。
私に内緒にしているのは、驚かせるためだったのかもしれないけど、タイミングが悪い。
私はバルコニーに出て、風に当たりながら景色を眺めます。
「アイザックの背に乗れば、あちらまで一日とかからないと思ったのに……」
「もしやお困りではないですか、お嬢さん?」
意気消沈していると、誰かから声を掛けられました。
視線を移してみると、銀髪のイケメンがこちらを見ています。
「第二王子イライアス様、ごきげんよう」
「そんなかしこまった挨拶はよしてくれよ。僕たちの仲じゃないか」
イライアス王子はそう言うと、私の肩に手をかけてきました。
未婚の女性、しかももうすぐ結婚が決まっている相手にする所作ではない。
「イライアス様、少し失礼ではないでしょうか?」
「失礼? だって僕たち、付き合ってるじゃん」
「ええ!?」
そんな記憶、まったくないのですが!
「図書館で言っただろう? 僕たち、付き合わないかって」
「たしかにそう告げられましたが、お返事をした記憶はないのですが……」
「つまり、まだ僕は断られてはいないってわけだよね。なら、付き合っているようなもんじゃないか」
「まさか……本当にそれで押し通すつもりですか?」
「これがこの国の風習だって言ったら、どうする? 図書室の本には書かれていなかっただろう?」
まさかジェネラス竜国の告白って、そういうものだったの……?
恋愛の指南書なんて図書室にはなかったし、誰もそういったことは教えてくれなかった。
もし本当にそうであれば、非があったのは私ということになってしまう。
だけど──
「そんな話、信じないわ」
「だが、嘘であるという確証もないんだろう?」
その通りなのよね。
もしもこの話が本当であれば、私がイライアスに対して強く出られなくなってしまう。
「わかったかい? 僕たち、付き合ってるんだよ。彼女が兄と結婚するのはいただけないけど、最後に僕のもとに戻って来てくれればそれでいい」
「……まるで私が、イライアス様のことをお慕いしているように聞こえるのですが?」
「だってそうだろう? 僕に告白されて断らない女性なんていないんだから」
とんでもない自信家ね。
まあこの顔で、しかも王族となれば、さぞかしモテたのだろうとは思う。
だけどあいにく、私がイライアス殿下に興味があるのは、アイザックの弟であり、竜であるという点のみ。
残念だけど、付き合うつもりは毛頭ない。
「もし付き合ってしまっているのなら、ここで改めてお返事いたします。私はあなたと付き合うつもりは──」
「その手紙、カレジ王国からだろう?」
イライアス殿下が、私の手紙を奪い取る。
だけど中身を見ることなく、私の目を見つめてきました。
「当てようか。この手紙はルシル……君の故郷の現状が書かれていたんだろう?」
「なんで、それを……」
イライアスは私の瞳を見つながら、悪魔のように囁きます。
「ルシルは困っているんだろう? 僕が助けてあげるよ」
自室で紅茶を飲んでいると、侍女のマイカがアイザックに関する情報をこっそり教えてくれました。
「アイザック様は最近、よく山に出かけられているようです。竜晶石を準備しているっていう話ですよ」
「竜晶石って、竜の宝石のことよね? かなり珍しいって本に書いてあったけど」
「はい、それはもう非常に珍しい物で、どんなに小さくとも国宝クラスになるものです」
竜晶石は、竜の力が満ちているこのジェネラス竜国にしか存在しない鉱物です。
見た目は水晶に似ているのだけど、硬さも効能の水晶とは比べることはできない。
なにか特別な力があると云われているけど、その能力は秘密になっており、王族しか知らないのだとか。
伝承では、初代国王が妻である竜天女に贈ったと書かれていたわね。
逆に言えば、そういった伝承くらいにしか出てこない代物です。
あまりにも珍しすぎるせいで、伝説の鉱物とも言われているらしい。
「アイザックったら、公務が忙しいのにそんなものを探して……」
「ふふ、ルシル様。愛されていますね」
「もう、からかうのはやめなさい」
「でも、民はルシル様のことを竜天女の生まれ変わりだとか再来だと讃えていますよ。最近は竜国の天使なんてあだ名までついて、アイザック様も負けてられないと思ったのではないでしょうか」
ジェネラス竜国内での私の人気は、高まるばかりです。
もちろん、それを知らない私ではないし、竜好きな私のことを竜が入る名前で呼んでもらってめちゃくちゃ喜んでいます。
そのせいで、もしかしたらアイザックは民たちに嫉妬でもしているのかも。
「私のために竜晶石を探してくれているのは嬉しいけど、無理だけはしないでほしいわね」
アイザックの体は一つしかない。
代わりはいないのだから、私のために無理をして倒れられたら目も当てられないから。
──コンコン。
突如、扉がノックされました。
マイカが扉を開けると、メイドが手紙を運んでいました。
私の代わりにマイカが手紙を受け取り、それを私に届けてくれます。
「誰からの手紙かしら。手紙の差出人は……セシリアじゃない!」
セシリア・サンセット、
彼女はカレジ王国での私の元侍女で、いまでは友人のような関係になっています。
最後に会ったのは、私が処刑されることが決まった際に、牢屋に会いに来てくれた時になる。
セシリアはサンセット子爵家に嫁いでいるはずだけど、元気にしているのかな。
私は元侍女のセシリアの手紙を読み進めます。
すると、次第に手が震えてきました。
そんな私の様子を見て、マイカが心配そうに尋ねてきます。
「ルシル様、大丈夫ですか?」
「…………ええ、大丈夫よ。ちょっとアイザックに会いに行ってくるわ」
手紙を持ったまま、部屋を後にします。
そのななアイザックの執務室に向かった、空振りに終わりました。
「アイザックは外出中……もしかして、竜晶石を探しに出かけているのかしら」
侍従に聞いてみたけど、アイザックがいつ戻るかはわからないということでした。
アイザックは今日のためにすべての公務を終わらせ、密かに休暇を取っているらしい。
ほぼ間違いなく、竜晶石を探すために山籠もりしているのでしょうね。
私に内緒にしているのは、驚かせるためだったのかもしれないけど、タイミングが悪い。
私はバルコニーに出て、風に当たりながら景色を眺めます。
「アイザックの背に乗れば、あちらまで一日とかからないと思ったのに……」
「もしやお困りではないですか、お嬢さん?」
意気消沈していると、誰かから声を掛けられました。
視線を移してみると、銀髪のイケメンがこちらを見ています。
「第二王子イライアス様、ごきげんよう」
「そんなかしこまった挨拶はよしてくれよ。僕たちの仲じゃないか」
イライアス王子はそう言うと、私の肩に手をかけてきました。
未婚の女性、しかももうすぐ結婚が決まっている相手にする所作ではない。
「イライアス様、少し失礼ではないでしょうか?」
「失礼? だって僕たち、付き合ってるじゃん」
「ええ!?」
そんな記憶、まったくないのですが!
「図書館で言っただろう? 僕たち、付き合わないかって」
「たしかにそう告げられましたが、お返事をした記憶はないのですが……」
「つまり、まだ僕は断られてはいないってわけだよね。なら、付き合っているようなもんじゃないか」
「まさか……本当にそれで押し通すつもりですか?」
「これがこの国の風習だって言ったら、どうする? 図書室の本には書かれていなかっただろう?」
まさかジェネラス竜国の告白って、そういうものだったの……?
恋愛の指南書なんて図書室にはなかったし、誰もそういったことは教えてくれなかった。
もし本当にそうであれば、非があったのは私ということになってしまう。
だけど──
「そんな話、信じないわ」
「だが、嘘であるという確証もないんだろう?」
その通りなのよね。
もしもこの話が本当であれば、私がイライアスに対して強く出られなくなってしまう。
「わかったかい? 僕たち、付き合ってるんだよ。彼女が兄と結婚するのはいただけないけど、最後に僕のもとに戻って来てくれればそれでいい」
「……まるで私が、イライアス様のことをお慕いしているように聞こえるのですが?」
「だってそうだろう? 僕に告白されて断らない女性なんていないんだから」
とんでもない自信家ね。
まあこの顔で、しかも王族となれば、さぞかしモテたのだろうとは思う。
だけどあいにく、私がイライアス殿下に興味があるのは、アイザックの弟であり、竜であるという点のみ。
残念だけど、付き合うつもりは毛頭ない。
「もし付き合ってしまっているのなら、ここで改めてお返事いたします。私はあなたと付き合うつもりは──」
「その手紙、カレジ王国からだろう?」
イライアス殿下が、私の手紙を奪い取る。
だけど中身を見ることなく、私の目を見つめてきました。
「当てようか。この手紙はルシル……君の故郷の現状が書かれていたんだろう?」
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