迷子の僕の異世界生活

クローナ

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王都で就活?

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教会から木立の中を抜けて歩いた先に大きなお屋敷があった。先頭の子供達が門扉を抜けて入って行く。
俺の中で養護施設は無機質な建物だったけどこの孤児院はさっきの教会によく似た雰囲気の明るい建物だった。
そして俺は、本当は外観を見て帰る予定だった孤児院の中に入ってしまった。

子供達の案内にノートンさんの私室まで支え歩きベッドに座ってもらった。

「痛みはどうですか?」

「ありがとう、こんなとこまですまなかったね。レイン、悪いけどお水を頼めるかい?」

ノートンさんに言われ年長の男の子が部屋を出て行った。

「マリー、すまないが子供達だけで出来る範囲でお昼の支度をしてくれるかい?」

「わかった。でもディノは置いてくね。」

そう答えて年長の女の子が小さい子三人を連れて部屋を出た。残ったのは俺とノートンさんとちっちゃいディノ。

「ここはノートンさんの他に大人の方はいらっしゃらないんですか?」

「ああ、驚いたかい?実はここは孤児院なんだよ。王都にしかないから若い人にはわからないかなぁ。」

…………知ってます、働くつもりです。なんて言えない。なんだろうこの後ろめたさ。入社予定の会社に客の振りして入り込んだ気分。というかそのまんまだ。

「今日は私しかいなくてね、薬を飲んだら仕事に戻らないと子供達がお腹を空かせてしまうからね。」

膝にまとわりつくディノの頭を優しく撫でる。

「あの、ノートンさんが休む間僕お手伝いしましょうか。先日まで食堂付きの宿屋で働いてたのでお昼の支度ならお手伝いできると思います。」

騙して売り込むみたいだけど放っておけない。

「いいのかい?ここまで肩を貸してくれただけでも迷惑だったろうに。」

「いいえ少しも。僕で良ければぜひやらせてください。」

「じゃあお言葉に甘えて休ませてもらおうかな。レイン、トウヤにお昼の支度を手伝ってもらうから案内してくれ。」

丁度水を持って部屋に入ってきたレインにノートンが告げた。俺はディノを誘っってレインと一緒に食堂へ向かった。

「よろしくね。俺はトウヤだよ。」

「……よろしく。俺はレインだ。」

レインは大きいな。ビートより少し背が高い。

食堂では小さい子達が「「「お~な~か~す~い~た~」」」と合唱してた。可愛い。年長のマリーが「うるさい!」って怒ってる。

「レイン、ノートンさんは?」

「れいん~おなかすいた~」

「おなかすいた~ごはんたべたい~」

中に入るとそれは全部レインに向いた。

「今更だけど俺の名前は冬夜といいます。ノートンさんが少し休む間お手伝いするね。何したら良いか教えてくれるかな?」

するとマリーが寄ってきてくれた。

「いつもはノートンさんがスープを温めてご飯をお皿に盛り付けてくれるの。私も出来るわ。」

ちょっとつんつんしながらも教えてくれた。食堂の奥に小さな台所が併設されていて、コンロの上にスープの入った鍋があって、台所の真ん中のテーブルに布巾のかかったバットがいくつかあった。

「ご飯は毎回教会から届くのだけどスープとパンは朝に一日分が届くから温めなきゃいけないの。」

コンロはつまみを捻ると普通についたけどこれも魔法なのかな?

温めているうちにマリーと一緒にお皿を並べ盛り付けていく。野菜を中心としたバランスの良いおかずで子供には結構ボリュームがある。ノートンさんの分も合わせて7人分に盛り付けができる頃スープも温まった。

「ノートンさんのどうしたら良いかな?部屋に運ぶ?」

マリーに相談してたらノートンさんが食堂に入ってきた。

「起きて大丈夫ですか?」

レインが椅子を引いてノートンさんを座らせる。気のつく良い子だな。

「ああ、もう大丈夫だ。やってもらってすまないね。お詫びに一緒に食べないか?」

「ノートンさん、もう全部分けちゃったどうしよう!」

マリーが慌てて訴えてくれるので、お腹はいっぱいなので大丈夫と断った。正直あの大きなクレープの後の鬼ごっこが効いているんだよね。

せっかくなので小さい子の傍に座らせてもらって食べるお手伝いをすることにした。
三人組はちゃんと食べてるけどディノはまだ遊び食べだ。それにおかずの1つひとつが彼の口に大きい。普段もきっとノートンさんが手伝ってるのだろう。
俺は台所から食事用のナイフとフォークを取って来ておかずを小さくしたついでにスプーンで遊んでるディノの口にスープやおかずを運んで食べさせた。
それぞれ多いと思ってた量も俺が運ぶうちにすっかり食べてしまい、みんなのお皿も空になってた。

「いつものおかずなのに盛り付け方がおいしそうだったもん。」

マリーが褒めてくれた。

後片付けをしてるときもマリーやレインが当たり前の様に手伝いに入る。俺は好きでやってたけど養護施設は雇用はきちんとしてたから大人の手は十分足りていて子供があえてやることはなかった。

暗くなる前には宿に戻りたかったのでその間にできる事を聞いたら洗濯物を片付けて欲しいと言われたので庭に沢山干してあった洗濯物を取り込んでリネン室でたたんでいく。これは3日に一度洗濯をやってくれる人が来るらしい、7人3日分はなかなかの量でやっぱり年長組が手伝いに入った。

大人がやらない分を小さな子にやらせてしまっているな、と思った。
不便のなかった自分の18年間に改めて感謝する。その恩返しをこの子達にできたらいいな。クラウスはいい返事をもらって来てくれるだろうか。

「また遊びに来てもいいですか?」

帰る時、ここで働きたいとは、まだ決まってない状態ではやっぱり言えなくてずるい言い方だと思ったけど。口にした。

「もちろんだよ。今日はありがとう。気をつけて帰るんだよ。」

「またきてねおにいちゃん。」

手を振る子供達と離れがたい。かばんにカステラが入ったままなのを思い出し「みんなで食べてね。」とマリーに渡した。

少し空は夕焼けで赤くなって来ていたけど教会まで出れば大通りは街灯に灯りが入りだしていて夜になる心配をしなくて済んだ。大通りから宿までも人は多かったけれど無事に着いた。

カウンターで尋ねるとまだクラウスは戻っていなくて、頼んでいた洗濯物と鍵を受け取って部屋へ入った。

そういえばクラウスがどのくらいに帰るとか聞いてなかったな。

暫く待っていたけど流石にお腹が空いたので1人で宿の前の通りに出て近くの屋台でホットドッグと紅茶を買って夕飯にした。花壇に腰掛けゆっくり食べながら通り過ぎる人波にクラウスを探したけどまだ帰ってこなかった。

家の人に3年ぶりに会ってるんだからそんなにすぐ帰って来るわけ無いか。手紙だって3通あったんだから行き先も3つあったのかも知れない。

「夜にこんなとこで1人でいたらまた怒られるよね。」

誰にともなく呟いて部屋に戻った。

シャワーを浴びても髪が乾いてしまってもクラウスはまだ戻らない。

「あ、鍵ってクラウスの分もあるのかな?」

『とまりぎ』でも宿屋の業務はマートがやってたし、ここがどういうシステムなのかもわからなかった俺は今日はクラウスが帰るまで起きていられる自信が欠片もない。

仕方ないので枕を持って部屋のドアに背中を預けて座っている事にした。ここなら寝てしまってもクラウスが帰ればわかるだろう。鍵がなくてドアをノックされても気付くはずだ。

「クラウス早く帰ってこないかな?今日は話したいことがいっぱいあるんだよ…………。」

ココアラテが美味しかった事、カステラをおまけしてもらった事、人がすごかった事、靴がなくなった事、鬼ごっこした事、孤児院へ行った事。

「クラウス、早く帰ってきて?」

出番のなかった手首のブレスレットを触りながら俺の意識は夢の中へ落ちて行った。






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