マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】

remo

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2章. 悠馬

machi.31

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リナが泣いて俺に縋ってきて、驚いた。
俺の言動に反対することなんてないのに。

リナと揉めていたら、ゆいがどこかに行ってしまいそうで、
気が気じゃなかったけど、リナが折れない。
焦っているうちに、看護師長だという人が現れて、
ゆいを仕事に戻らせてしまった。

その看護師長は、絶対に連絡させると約束した。

けれど。

三澤さんのお見舞いを終えて、
車を運転して、昼飯を食って、
事務所に挨拶に行って、
スタッフと打ち合わせして、…

一向にかかってきやしねえ。

誰に何を言われても、上の空だった。
携帯電話を手離せない。

なんであいつは、いつもかけてこないんだ…!

「ユーマ、メタくそ機嫌悪くねぇ?」
「しー…」

携帯電話をへし折りそうになって、待つのを止め、
ゆいの病院に向かった。

このまま、また会えなくなるなんてごめんだ。
病院敷地の外周にある柵に、目立たないようにもたれる。

ゆいはまだ、この中にいるだろうか。

街が夕闇に溶けて、何人もの人や車が出入りする。
どのくらい待ったのか、ブルーのカブリオレに乗った男の傍らに、ゆいを見つけた。

落ち着いた雰囲気の年上の男は、ゆいの頭に手をやって、
優しく髪をなでる。
眼鏡の奥の眼を細めて、愛おしげにゆいを見る。

声が、出なかった。

一瞬だけ、男と目が合った。
確かに俺を見て、男がまたゆいに触れる。
我がもの顔で。挑発するように。

遠ざかるテールライトを見ながら、俺はそこから動けなかった。

あいつが。
ゆいが選んだ男。

これ見よがしに高級車に乗り、
社会的地位を持ち、
ゆいを支える腕と守る力を持つ。
知性に溢れ、大人の余裕を持つ。

つけいる隙なんて、どこにもなかった。

無意識に、ゆいに触れた唇を噛んでいた。


このまま。
潔くあきらめるべきなんだろう。

3日後にレコーディングでロンドンに行くことになっている。
最低でも1ヶ月は向こうに滞在する。

このまま。
俺が忘れれば終わるんだろう。

その証拠に、着信する気配もない。
あんなに焦がれたゆいに会えたのに、
俺はこの上なく沈んでいて、
「何とかして来いよ」
と見かねたドラムのシンに言われた。

最後に、もう一度だけ、ゆいに会いたい。

…さよならくらい言わせてくれてもいいだろ?

ロンドンに立つ前日、ゆいの病院で待ち伏せた。

はめたことのない結婚指輪をしたのは、頭に焼きついて離れない大人なあいつに対する、ちっぽけな俺の見栄。

辺りがすっかり暗くなってから、病院の建物を出るゆいを見つけた。
そばに、あいつはいない。

一人で、無防備に歩いてくるゆいを車に押し込めて、有無を言わせず連れ去った。
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