時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

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「お前は、ホントに、…」

翌朝、私のブス度増し増しの顔を見て、
呆れ口調のチーフが濡れタオルを作ってくれた。

「るうより手がかかるな」

無造作にタオルを私の顔に投げかけて、
付け加えられた一言が、ぐっさり胸を刺す。

まあ。その通りなんですけど。

キッチンで、千晃くんが朝ごはんを作ってくれている。
豆乳スープの優しい香りと、
オムレツの焼ける芳ばしい匂いがリビングまで漂ってくる。

同じ居候として、何たる違いだろうと思うけど。

そもそも、
天性の才能を持つ千晃くんと自分を比べる時点でおこがましい。

結局。

昨日の夜は眠れなかった。
閑散とした静かすぎる部屋で、一人、悶々としていた。

千晃くんは。
本当は、何もかもわかってるんじゃないか。
という気がした。

過去の何かを思い出したのか、
持ち前の洞察力で悟ったのか、

よくわからないけど。

私は、どうしたいのか、どうすれば良かったのか、
考えれば考えるほどわからなくなって、

眠れないまま朝が来た。

「…素直に甘えとけ、バカ」

ぼそっとつぶやいたチーフの言葉に濡れタオルが顔からずり落ちた。

「…え⁉」

チーフの顔を眺めたけれど、無駄に整っていることが嫌というほどわかっただけで、発言の真意は全く分からない。

「冷やしとけ、仕事行くんだろ」

タオルをかけなおしてくれたから、視界がまた遮られて、
より一層、チーフの気持ちが読めなくなった。

もう全く。難し過ぎるよ…

しかしながら。

出社したら、悩んでる場合じゃなくなっていた。

「…本当に、申し訳ない」

朝イチでCEOから呼ばれて、今頃感じ始めた眠気も吹き飛んで、何事かと緊張感漂う7階まで昇ってみれば。

案内された役員室で、あろうことか、CEOに土下座された。

「心菜が、…昨夜、大量の睡眠薬を飲んで、救急搬送された」

「え、…っ‼︎」

続けられた話が衝撃的過ぎて、取りなす余裕もなかった。

重厚感のあるソファに、千晃くんも並んで座らされていたのだけど、やっぱり驚いて息を飲んでいた。

「幸いにも命に別状はなく、既に自宅に戻っているがね」

CEOが苦悶の表情を浮かべて、首を横に振る。

「部屋から、書き置きが見つかって、…」

『私がやりました』と書かれていたという。

振り絞るようなCEOの言葉に、寒々とした、暗く深い穴の中に落ちていくような気がした。

「問い詰めても精神的に不安定で、それ以上のことは確かめられていないんだが、…先日の事故のことで間違いないんじゃないかと思う」

CEOの顔が暗く歪んだ。

ブレーキへの細工が原因で起きた社用車の事故。思い出すだけでも恐怖で震える。

「心菜は常盤くんに執着して、…佐倉さんを逆恨みしていたから」

疲れたように首を振るCEOは、目が落ち窪んで、深い皺が刻まれ、一晩で何年も歳をとってしまったかのようだった。
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