Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】

remo

文字の大きさ
15 / 124

blue.14

しおりを挟む
「…でも証明する手立てがない。あんたが研究室に戻ったのは事実だし、新聞社の彼は知り合いみたいだし」

橙子さんが焦れたようにヒールで床を踏み鳴らした。

「…私はともかく、奏くんはそんなことしませんよ」

言ってから、なぜだか急に自信がなくなった。

あれ。じゃあなんで、奏くんは私を連れだした?

同級生だから? 久しぶりの再会だから?
別に取り立てて仲が良かったわけでもないのに?

『同級生に再会して、ご飯食べに来ただけだから。
それ以上でも以下でもないから。』

じゃあなんで、あんなに優しかった?

「…個人情報見られてないよね?」

奏くんの長い指が器用に私のスマートフォンを操作する。
『俺の連絡先入れとくから』

通勤バッグをひっくり返してスマホを取り出し、連絡先のアイコンを開く。
青井奏。 どこ? どこに?

スクロールする指が震えた。

「…橙子さん」

上司を呼んだ声は、自分のものじゃないみたいに頼りなかった。

「技術研究所まで走るよ!」

橙子さんは表情だけで全てを察したらしく、私の背中を叩いて先に走り出した。

その後を必死で追いかけながら、腫れが引いてもう全然痛まないはずの足首がズキズキした。

滑らかな手で優しい指先で湿布を貼ってくれて。
最高に美味しいラーメンを食べて手を繋いで歌った。
簡単に部屋に入れるなって怒ってドアを押さえた。

奏くん。全部嘘なの?

足首が痛くて息が切れて心の奥が血を流して悲鳴を上げた。

無邪気な笑顔も明るい笑い声も
澄んだ強い瞳も心に響く言葉も
ジャングルジムも半分このアイスも

全部嘘なの?

歯を食いしばって和泉さんの研究室に駆け込んだ。

「大変申し訳ございませんでした」

騒然としている研究室で橙子さんと並んで土下座した。
尊敬する先輩上司にそんなことをさせてしまった自分がふがいなくて情けなくて悔しかった。

「事情は分かった。頭を上げろ」

頭の上から、和泉さんの冷静な声が響く。

「問題ない。来月までにもう一段階進めばいい」

研究室内にざわめきが広がった。和泉さんは何でもないことのように繰り返した。

「コミネより数段上の技術映像を用意して発表する。俺はそれに掛かり切るから後のことは頼む」

「はい」

ざわめきの中で、未来に光が差し、研究室内に団結が生まれたのを感じた。
疑惑と憤まんに満ちていた空間が、和泉さんの一言で一気にまとまり、各々が使命感を持って動き始めた。

「本宮のい」
「はいっ」

和泉さんに呼ばれて慌てて背筋を伸ばして立ち上がった。
長身の和泉さんが私を見下ろす。

「助手が休んでる。代わりに俺を手伝え」

眼鏡の奥から細めた瞳が私を見つめて、大きな手が頭の上に置かれた。

「…はい」

それは、裏切り者の私に差し伸べられた救いの手だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

守護契約のはずが、精霊騎士の距離が近すぎて心拍がもちません―― 距離ゼロで溺愛でした。

星乃和花
恋愛
【完結済:全8話】 ーー条項:心拍が乱れたら抱擁せよ(やめて) 村育ちの鈍感かわいい癒し系ヒロイン・リリィは、王都を目指して旅に出たはずが――森で迷子になった瞬間、精霊騎士エヴァンに“守護契約”されてしまう! 問題は、この騎士さまの守護距離が近すぎること。 半歩どころか背後ぴったり、手を繋ぐのも「当然」、心拍が乱れたら“抱擁条項”発動!? 周囲は「恋人だろ!」と総ツッコミなのに、本人たちは「相棒です!」で通常運転。 守護(と言い張る)密着が止まらない、じわ甘コメディ異世界ファンタジー!

契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」  突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。  冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。  仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。 「お前を、誰にも渡すつもりはない」  冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。  これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?  割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。  不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。  これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

溺愛のフリから2年後は。

橘しづき
恋愛
 岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。    そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。    でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

処理中です...