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サラ2
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それは、ある夜会の事だ。
レオンはどこか心ここにあらずの様子で、辺りをキョロキョロと見回していた。
何かを気になることでもあったのだろうか?
「レオン様。どうなさいました?」
「いや、なんでもないんだ」
そう言って彼は曖昧に微笑んだ。何かを誤魔化しているかのような反応に私は不安になった。
「そう言えば、今日、初めて夜会に来る方がいらっしゃるそうよ。なんでも留学してらっしゃったとか」
私が話題を変えると、彼は「だからか……」と呟き黙り込んでしまった。
なぜかわからないけれど、私は不安で仕方なかった。
きっと、聞いたとしても彼は心のうちなど話ではくれないだろう。そんな気がする。
「はじめまして!」
突然、場違いな明るい声がして私はそちらに目線をやった。見かけない少女だ。
燃え上がるような真っ赤な髪の毛をした少女は、恋する乙女のように頬を上気させて、レオンの方を見ている。
誰だろうと、少しだけ逡巡してすぐに答えが見つかった。
今日、初めて夜会に来た子だ。
少女は、レオンの横にいる私に気が付き、その笑顔を陰らせた。
「なんですか?貴女!私の番に馴れ馴れしくしないで!」
そう言うなり、彼女は私に詰め寄る。
「番」その恐れていた言葉に私は、思わず息を呑んだ。レオンの顔を見たいけれど、怖くてそれも出来ない。
愛する人の心移りする瞬間なんて見たくもない。
「え、あの、彼は私の婚約者で……」
そう言いかけると、彼女は眦を吊り上げて私を睨みつける。
「だったら、なんですか?」
彼女は、不思議そうに首を傾けた。
「え?」
「番とは尊い存在なんですよ。なぜ、身を引かないんですか?」
身を引く。この子は何を言っているのだろう?
婚約は決められた事だ。それなのに、彼女は、さも当然のように、レオンの意思を無視して譲れと言い出す。
「何を言ってらっしゃるの?たかが、番の分際で」
「なんですって!?」
私の一言に、少女は右手を振り上げた。
叩かれる。そう思って目を閉じると、痛みは襲ってこなかった。
「やめるんだ」
そう言って、彼女を止めたのは愛する婚約者だった。
「なぜ、止めるのですか!私達は番なんですよ!」
「それがどうした?」
レオンは、不思議そうに少女を見ている。
「信じられない。私を見てなんとも思わないの?」
「思うわけがないだろう?私の身も心も婚約者のサラの物だ」
レオンは、真っ青な顔で身体を震わせながら、私の袖を握りしめた。
「あ、いつに、に、こ、こ、こころうつりなどしない」
そう言って、カタカタと身体を震わせ、私の顔を必死に見ている。
なんて、事だろう。私は彼にこんなにも愛されていたなんて……。
きがつけば、両目から涙が溢れ出ていた。
「れ、レオン様。愛しております」
「私もだ」
レオンはそう言って、顔色を青色から白色に変えていった。
「わ、わたしはつがいなど、に、めうつりなどしていない。だ、だから。ゆるしてくれ」
「わかっておりますわ」
そう言って彼を抱きしめると、腕の中で何かがボキボキと音を立てた。
「ふぐぅ。グハッ」
レオンは、突然気絶してその場に倒れてしまった。
「レオン様?」
私は彼を担ぎ上げると、会場を後にした。
番が現れたけれど、私を選んでくれた。それだけで、胸がいっぱいだった。
愛の力に番の魅力なんて効力はなかったのだ。
私はレオンを幸せにしようと心に誓った。
レオンはどこか心ここにあらずの様子で、辺りをキョロキョロと見回していた。
何かを気になることでもあったのだろうか?
「レオン様。どうなさいました?」
「いや、なんでもないんだ」
そう言って彼は曖昧に微笑んだ。何かを誤魔化しているかのような反応に私は不安になった。
「そう言えば、今日、初めて夜会に来る方がいらっしゃるそうよ。なんでも留学してらっしゃったとか」
私が話題を変えると、彼は「だからか……」と呟き黙り込んでしまった。
なぜかわからないけれど、私は不安で仕方なかった。
きっと、聞いたとしても彼は心のうちなど話ではくれないだろう。そんな気がする。
「はじめまして!」
突然、場違いな明るい声がして私はそちらに目線をやった。見かけない少女だ。
燃え上がるような真っ赤な髪の毛をした少女は、恋する乙女のように頬を上気させて、レオンの方を見ている。
誰だろうと、少しだけ逡巡してすぐに答えが見つかった。
今日、初めて夜会に来た子だ。
少女は、レオンの横にいる私に気が付き、その笑顔を陰らせた。
「なんですか?貴女!私の番に馴れ馴れしくしないで!」
そう言うなり、彼女は私に詰め寄る。
「番」その恐れていた言葉に私は、思わず息を呑んだ。レオンの顔を見たいけれど、怖くてそれも出来ない。
愛する人の心移りする瞬間なんて見たくもない。
「え、あの、彼は私の婚約者で……」
そう言いかけると、彼女は眦を吊り上げて私を睨みつける。
「だったら、なんですか?」
彼女は、不思議そうに首を傾けた。
「え?」
「番とは尊い存在なんですよ。なぜ、身を引かないんですか?」
身を引く。この子は何を言っているのだろう?
婚約は決められた事だ。それなのに、彼女は、さも当然のように、レオンの意思を無視して譲れと言い出す。
「何を言ってらっしゃるの?たかが、番の分際で」
「なんですって!?」
私の一言に、少女は右手を振り上げた。
叩かれる。そう思って目を閉じると、痛みは襲ってこなかった。
「やめるんだ」
そう言って、彼女を止めたのは愛する婚約者だった。
「なぜ、止めるのですか!私達は番なんですよ!」
「それがどうした?」
レオンは、不思議そうに少女を見ている。
「信じられない。私を見てなんとも思わないの?」
「思うわけがないだろう?私の身も心も婚約者のサラの物だ」
レオンは、真っ青な顔で身体を震わせながら、私の袖を握りしめた。
「あ、いつに、に、こ、こ、こころうつりなどしない」
そう言って、カタカタと身体を震わせ、私の顔を必死に見ている。
なんて、事だろう。私は彼にこんなにも愛されていたなんて……。
きがつけば、両目から涙が溢れ出ていた。
「れ、レオン様。愛しております」
「私もだ」
レオンはそう言って、顔色を青色から白色に変えていった。
「わ、わたしはつがいなど、に、めうつりなどしていない。だ、だから。ゆるしてくれ」
「わかっておりますわ」
そう言って彼を抱きしめると、腕の中で何かがボキボキと音を立てた。
「ふぐぅ。グハッ」
レオンは、突然気絶してその場に倒れてしまった。
「レオン様?」
私は彼を担ぎ上げると、会場を後にした。
番が現れたけれど、私を選んでくれた。それだけで、胸がいっぱいだった。
愛の力に番の魅力なんて効力はなかったのだ。
私はレオンを幸せにしようと心に誓った。
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