6 / 25
殺意
しおりを挟む
三途の川を渡りかける経験は思いがけず早く起きた。
気が抜けていたせいもあったが、クロードとシエナと一緒に出かけている時に、わざと池に落とされたのだ。
しかも、真冬だ。殺意がを感じてしまった。
「お前なんか消えてしまえ!」
溺れかけなんとか岸に上がったが、シエナも一緒にいたクロードもいなくなっていた。
屋敷に帰ると、使用人がかなり心配してタオルなどを用意してくれた。
軽い風邪だと思っていたが、予想よりも重症化してしまった。
咳は止まらず熱は下がらず。朦朧とした意識が何度か途切れて、ある日、ふっと、何かに目覚めたような感覚がした。
熱が下がったのだと気がつき起き上がると、眩暈がした。
ずっと寝ていたせいで身体が鈍っている。
「そ、そうだ。聖石……、聖石は?」
私が慌てて両手の甲を確認すると、右手の甲に青みがあった白い石があった。
それは、初雪が日光を反射するかのようにキラキラと輝いて見えた。
「やった。聖女になれたわ」
喜びよりも、やるべきことをこなしたという安堵の方が強かった。
ようやく次の段階に進める。
何をするのか、そんなの決まっている。
この家と婚約者との縁を切る事だ。
物語のヒーローと私を大切にしない血縁者など疫病神でしかない。
聖女の出現は、神託によって神官が知るだろう。
そう遠くない未来に神官たちが私を迎えにきてくれるはずだ。
それまでに、どうやって縁を切るか考える必要がある。
それよりも。
「とりあえず寝よう。疲れたわ」
拗らせた風邪のせいでかなり体力が落ちてしまったようだ。
神官のお迎えは思っていたよりも早かった。
聖石を確認した次の日、慌てた様子のメイドが私の部屋へとやってきた。
「お嬢様。すぐに支度を」
メイドはテキパキと私にワンピースを着せていく。
見覚えのある淡い黄色のワンピースは、シエナのものだ。
私はお茶会に行くことを禁止されているので、こういった華やかな服を持っていない。
しかし、サイズは合っておらず。ぶかぶかだった。
それでも、余った布を無理やりピン留めしてどうにかサイズを合わせた。
ようやくワンピースを着終わると、軽く化粧をして部屋から連れ出された。
おそらく神官が迎えに来たようだ。
「こちらです」
早足気味のメイドについていくのが辛い。かなり体力が落ちているせいだ。
何とか応接間に入ると、血が繋がっているだけの人たちと神官数名が話し込んでいるのが見えた。
シエナは居ないようだ。
その中にマリネッタを見つけて、私はなぜかわからないけれど安堵した。
「アイオラ!」
私を産んだだけの人が、私に感極まった様子で抱きついてきた。
抱きしめられた驚きよりも私を産んだだけの人が、私の名前をちゃんと知っていたことに驚いていた。
気持ち悪い。
家族だった人たちに対しての嫌悪感が胸の中に渦巻いていくのがわかった。
「は、離してください!」
無理やり母だった人を引きなはずと、その人は瞬時に傷ついたような顔をした。
まるで、今まで大切にして育ててきた子供に拒絶された親のような顔だった。
「……」
私は色々と言いたくなることを抑えて口を開く。
「なぜ、私なんかを呼び出したのですか?」
少し嫌な物言いだとそれをやめることができなかった。
気が抜けていたせいもあったが、クロードとシエナと一緒に出かけている時に、わざと池に落とされたのだ。
しかも、真冬だ。殺意がを感じてしまった。
「お前なんか消えてしまえ!」
溺れかけなんとか岸に上がったが、シエナも一緒にいたクロードもいなくなっていた。
屋敷に帰ると、使用人がかなり心配してタオルなどを用意してくれた。
軽い風邪だと思っていたが、予想よりも重症化してしまった。
咳は止まらず熱は下がらず。朦朧とした意識が何度か途切れて、ある日、ふっと、何かに目覚めたような感覚がした。
熱が下がったのだと気がつき起き上がると、眩暈がした。
ずっと寝ていたせいで身体が鈍っている。
「そ、そうだ。聖石……、聖石は?」
私が慌てて両手の甲を確認すると、右手の甲に青みがあった白い石があった。
それは、初雪が日光を反射するかのようにキラキラと輝いて見えた。
「やった。聖女になれたわ」
喜びよりも、やるべきことをこなしたという安堵の方が強かった。
ようやく次の段階に進める。
何をするのか、そんなの決まっている。
この家と婚約者との縁を切る事だ。
物語のヒーローと私を大切にしない血縁者など疫病神でしかない。
聖女の出現は、神託によって神官が知るだろう。
そう遠くない未来に神官たちが私を迎えにきてくれるはずだ。
それまでに、どうやって縁を切るか考える必要がある。
それよりも。
「とりあえず寝よう。疲れたわ」
拗らせた風邪のせいでかなり体力が落ちてしまったようだ。
神官のお迎えは思っていたよりも早かった。
聖石を確認した次の日、慌てた様子のメイドが私の部屋へとやってきた。
「お嬢様。すぐに支度を」
メイドはテキパキと私にワンピースを着せていく。
見覚えのある淡い黄色のワンピースは、シエナのものだ。
私はお茶会に行くことを禁止されているので、こういった華やかな服を持っていない。
しかし、サイズは合っておらず。ぶかぶかだった。
それでも、余った布を無理やりピン留めしてどうにかサイズを合わせた。
ようやくワンピースを着終わると、軽く化粧をして部屋から連れ出された。
おそらく神官が迎えに来たようだ。
「こちらです」
早足気味のメイドについていくのが辛い。かなり体力が落ちているせいだ。
何とか応接間に入ると、血が繋がっているだけの人たちと神官数名が話し込んでいるのが見えた。
シエナは居ないようだ。
その中にマリネッタを見つけて、私はなぜかわからないけれど安堵した。
「アイオラ!」
私を産んだだけの人が、私に感極まった様子で抱きついてきた。
抱きしめられた驚きよりも私を産んだだけの人が、私の名前をちゃんと知っていたことに驚いていた。
気持ち悪い。
家族だった人たちに対しての嫌悪感が胸の中に渦巻いていくのがわかった。
「は、離してください!」
無理やり母だった人を引きなはずと、その人は瞬時に傷ついたような顔をした。
まるで、今まで大切にして育ててきた子供に拒絶された親のような顔だった。
「……」
私は色々と言いたくなることを抑えて口を開く。
「なぜ、私なんかを呼び出したのですか?」
少し嫌な物言いだとそれをやめることができなかった。
638
あなたにおすすめの小説
【完結】王位に拘る元婚約者様へ
凛 伊緒
恋愛
公爵令嬢ラリエット・ゼンキースア、18歳。
青みがかった銀の髪に、金の瞳を持っている。ラリエットは誰が見ても美しいと思える美貌の持ち主だが、『闇魔法使い』が故に酷い扱いを受けていた。
虐げられ、食事もろくに与えられない。
それらの行為の理由は、闇魔法に対する恐怖からか、或いは彼女に対する嫉妬か……。
ラリエットには、5歳の頃に婚約した婚約者がいた。
名はジルファー・アンドレイズ。このアンドレイズ王国の王太子だった。
しかし8歳の時、ラリエットの魔法適正が《闇》だということが発覚する。これが、全ての始まりだった──
婚約破棄された公爵令嬢ラリエットが名前を変え、とある事情から再び王城に戻り、王太子にざまぁするまでの物語──
※ご感想・ご指摘 等につきましては、近況ボードをご確認くださいませ。
【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい
春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。
そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか?
婚約者が不貞をしたのは私のせいで、
婚約破棄を命じられたのも私のせいですって?
うふふ。面白いことを仰いますわね。
※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。
※カクヨムにも投稿しています。
【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?
堀多 ボルダ
恋愛
「お姉様、このマクレディ伯爵家は私が後を継ぎます。お姉様は邪魔なので今すぐこの家から出ていってください」
両親の急逝後、伯爵家を切り盛りしていた姉を強引に追い出して妹ダリアは当主となった。しかし、それが原因で社交界からは稀代の悪女として嫌われるようになった。
そんな彼女の元を訪ねたのは、婿に来てほしい男ナンバーワンと噂される、社交界で人気の高い幼馴染だった……。
◆架空の世界にある架空の国が舞台の架空のお話です。
◆カクヨムにも掲載しています。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結】私の婚約者の、自称健康な幼なじみ。
❄️冬は つとめて
恋愛
「ルミナス、すまない。カノンが…… 」
「大丈夫ですの? カノン様は。」
「本当にすまない。ルミナス。」
ルミナスの婚約者のオスカー伯爵令息は、何時ものようにすまなそうな顔をして彼女に謝った。
「お兄様、ゴホッゴホッ! ルミナス様、ゴホッ! さあ、遊園地に行きましょ、ゴボッ!! 」
カノンは血を吐いた。
居候と婚約者が手を組んでいた!
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
グリンマトル伯爵家の一人娘のレネットは、前世の記憶を持っていた。前世は体が弱く入院しそのまま亡くなった。その為、病気に苦しむ人を助けたいと思い薬師になる事に。幸いの事に、家業は薬師だったので、いざ学校へ。本来は17歳から通う学校へ7歳から行く事に。ほらそこは、転生者だから!
って、王都の学校だったので寮生活で、数年後に帰ってみると居候がいるではないですか!
父親の妹家族のウルミーシュ子爵家だった。同じ年の従姉妹アンナがこれまたわがまま。
アンアの母親で父親の妹のエルダがこれまたくせ者で。
最悪な事態が起き、レネットの思い描いていた未来は消え去った。家族と末永く幸せと願った未来が――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる