私のことは愛さなくても結構です

覚醒

覚醒


　断末魔のような悲鳴を上げた使用人が部屋から出て行った直後に、信じられないような地響きと共にノックなしで部屋の扉が開いた。
　
「サブリナ……！」

　家族たちだ。
　父、マミー、弟の三人が涙ながらに私の名前を呼んでいる。

　ん？3人？
　マイスイートクラリスがそこにはいなかった。

「クラリスは……？」
「あの、それは」

　父が口籠る。私は嫌な予感がした。

「おい、クソ親……、お父さま、全部話しなさい」

　私は父の胸ぐらを掴んだ。
　
「はい」

　父が言いにくそうに全て話した。
　寝込んだ私の代わりにジークムントと婚約した事を今更知らされた。

「はぁぁあ！？私が起きないからマイスイートラブリークラリス、略してマイスイートラブリーキューティーエンジェルクラリスを嫁に出したですって！？」
「増えてる。増えてる」

　マミーがツッコミを入れるが無視だ。

「はい」

　父は私が胸ぐらをつかんでいるせいなのか、顔色が悪い気がする。

「あそこの家、クッソ小姑みたいな使用人とゴミクソカスな聖女と役立たずの脳足りんの夫しかいませんわよね」
「あ、それは」

　父が全部教えてくれた。
　寒空の下数時間放置されて肺炎になったこと、砂入り紅茶を飲ませたこと、クラリスが解決すると思ったのでこちらからは何もアクションしなかった事を知らされた。

「……。クラリスが熱を出したですって？」
「はい、やった奴、全員追い出したので、はい」

　だから、問題なんてないでしょう？と、言わんばかりだ。

「そいつら、全員やっちまうなんてどうかしら？」

　私は菩薩のような笑みを浮かべる。
　私の愛するクラリスを害した奴らは万死に値するから。
　
「いや、無理ですってばぁ」

　弱気な事を言う父。
　それでも私とクラリスの父親なのだろうか、気概があまりにもない。

「おい、お父さま、呼吸するな」

　こいつには酸素すらもったいない。

「……大体、姉さんが起きないから」

　弟のライナーがなぜか言い訳をする。
　私が悪いのか、あんなのの家に可愛いクラリスを嫁に出したお前らが悪いのではないか。

「何ですって、クソ愚弟」
「クラリスですらクソなんてつけないのに！」

　ライナーは、言いながら泣き出す。
　何言ってるのだろうか、クラリスほどお淑やかで可愛らしいレディはこの世には存在しない。
　脳みそが腐ったバナナなのでしょうか。

「私のクラリスがそんな汚い言葉使うわけないでしょう？」
「あぁ、本当にこの姉妹は」

　父は言いながら頭を抱える。
　私たち美人姉妹が何だと言うんだ。世間の憧れだと言われるのならわかるけれど。

「……で、マイスイートラブリーエンジェルゴットシスターのクラリスは？」
「すでに結婚してバーナー家に」

　なんですって……？
　私は耳を疑った。しかし、クラリスがいないということは、そういうことなのだろう。

　どうしたらいいものか。

「全員の寝首掻っ切ってきますわ！」
「や、やめて！やるならわからないようにやってちょうだい！」

　マミーがそう言うので、私は頭の中で計画を立てることにする。
　死にかけのクラウスはすぐに殺害できる。あのゴミクソカス阿婆擦れのクソ女もすぐに殺せる。問題はジークムントだ。
　彼は、彼だけはどうやっても殺せるような気がしないのだ。

「毒殺が適切かしら……？」

　ジークムントの殺害方法を考えていると、一人の女性が大急ぎで走ってきた。

「た、大変です。申し訳ありません。クラリス様が！クラリス様が！」

　ただならぬ雰囲気に私は嫌な予感がした。






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お読みくださりありがとうございます

クラリスの口の悪さの理由は察してください！

今日から張り切って行きましょう！

私はカリフラワー切ります！
カリフラワー食べてください！