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暴走
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鬼の暴走
「は、早く言いなさい!」
私は不安で続きの言葉を催促する。
「いなくなりました……。王城に行った帰りに振り切られました」
女は今にも泣きそうな顔で青ざめている。
「ジークムント様にくれぐれもと言われたのに」
それを聞いて少しだけジークムントの事を見直した。
クラリスは、お淑やかで可愛らしいレディではあるけれど、ごくたまに、童心に戻ってはしゃいでしまう可愛らしい癖があるのだ。
この女性を撒いて逃げたのも、その延長線上かもしれない。
あの子はそういういたずらっ子な面もあるから、とても可愛らしいのだけれど。
……今回はちょっとよろしくないわね。
「泣かないで、とりあえず探しましょう。そう遠くない場所にいると思うから、ね?」
「……!」
女性にそう声をかけると、とても、驚いた顔をされた。
「サブリナ様?」
「そうですが」
「目が覚めてよかったです」
女性は、泣き出した。
心配をかけた人に泣かれるのは本当に弱い。
「泣かないで」
「はい、ああ、でも、早くクラリス様に知らせないと」
と言ってまた泣き出した。
クラリスは私のことを、どれだけこの人に話したのか少しだけ気になった。
それよりも、すぐにクラリスを見つけないといけない。
一人だけ、クラリスが行きそうな場所を知っていそうな男がいた。
「ねえ、皿!」
「それは、ハゲのサラブレッドを略しているのか、それとも皿を乗せたようなハゲという意味で言っているのか、どっちなんだ」
ジャスパーは、私の罵倒を慣れたことのように返してきた。
「両方よ!」
私は得意げに答えた。
「そもそも、まだハゲてない。ていうか、心配してたんだぞ。くらい言わせてくれ!本当に、目が覚めないかもしれないって不安だったんだからな!」
ジャスパーの両目には涙が滲んでいた。
流石に悪いなと思って「ごめんなさい」とだけ謝った。
しばらくジャスパーを慰めて、私は本題に入る。
「クラリスがいなくなったですって?」
「……」
ジャスパーは、目を逸らした。
「謝罪はあなたの毛根でしてもらうわ」
言いながら頭頂部に手を伸ばそうとすると、ジャスパーは必死になって抵抗する。
「あぁ、やめて!頭頂部から髪を抜かないで、せめて生え際から!生え際からお願い!」
ジャスパーは本気で泣いていた。
「で、クラリスはどこにいると思う?」
「……多分だけど、ジークムントの後をつけていると思う。かなり関係は良かったと思うし、旅に出る時に心配してたからね」
意外な答えに少しだけ驚いた。
私のことを世界一愛しているクラリスが、まさか、ジークムントの事を気にかけるなどと思いもしなかったのだ。
「貴方もついて来るのよ」
「いや、俺この国の皇太子!いなくなったら困る!」
聞いたところによると国王は瘴気のせいで倒れているらしい。
……心が弱いからだ。本当に王族の連中はなんでこんなにもメンタルが弱いのか信じられない。
ジャスパーが抵抗するが知るものか。
クラリスを失踪させた責任はこの男に取らせる。
それに、ジャスパーじゃなくてもライナーでも代理はできるはずだ。
「貴方が死んだらクソ愚弟がやるから大丈夫よ!わたしがやってもいいわよ!」
「あ、自分だけは生き残れる自信があるんだ」
ジャスパーの冷静なツッコミ。
「クラリスとわたしだけは、生き残る自信があるわ。ていうか、何がなんでもクラリスは守るわ」
「……」
何がなんでもクラリスと私だけは生き残ってやる。
「クラリスがいなくなったと聞いてきたんだけど」
初対面だというのに見たような気がする外見をしているのは、きっと、絵の挿絵のせいだろうか。
「……貴方、なんでピンピンしてるんですの!?」
クラウスがそこにはいたのだ。
死んでいないにしても、クラウスは体が弱くてこんなにも元気なはずなんてないのに。
「ところで、君も異邦人なのかい?」
クラウスは唐突にそんな事を聞いてきた。
異邦人とはどういう事なのか。
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「は、早く言いなさい!」
私は不安で続きの言葉を催促する。
「いなくなりました……。王城に行った帰りに振り切られました」
女は今にも泣きそうな顔で青ざめている。
「ジークムント様にくれぐれもと言われたのに」
それを聞いて少しだけジークムントの事を見直した。
クラリスは、お淑やかで可愛らしいレディではあるけれど、ごくたまに、童心に戻ってはしゃいでしまう可愛らしい癖があるのだ。
この女性を撒いて逃げたのも、その延長線上かもしれない。
あの子はそういういたずらっ子な面もあるから、とても可愛らしいのだけれど。
……今回はちょっとよろしくないわね。
「泣かないで、とりあえず探しましょう。そう遠くない場所にいると思うから、ね?」
「……!」
女性にそう声をかけると、とても、驚いた顔をされた。
「サブリナ様?」
「そうですが」
「目が覚めてよかったです」
女性は、泣き出した。
心配をかけた人に泣かれるのは本当に弱い。
「泣かないで」
「はい、ああ、でも、早くクラリス様に知らせないと」
と言ってまた泣き出した。
クラリスは私のことを、どれだけこの人に話したのか少しだけ気になった。
それよりも、すぐにクラリスを見つけないといけない。
一人だけ、クラリスが行きそうな場所を知っていそうな男がいた。
「ねえ、皿!」
「それは、ハゲのサラブレッドを略しているのか、それとも皿を乗せたようなハゲという意味で言っているのか、どっちなんだ」
ジャスパーは、私の罵倒を慣れたことのように返してきた。
「両方よ!」
私は得意げに答えた。
「そもそも、まだハゲてない。ていうか、心配してたんだぞ。くらい言わせてくれ!本当に、目が覚めないかもしれないって不安だったんだからな!」
ジャスパーの両目には涙が滲んでいた。
流石に悪いなと思って「ごめんなさい」とだけ謝った。
しばらくジャスパーを慰めて、私は本題に入る。
「クラリスがいなくなったですって?」
「……」
ジャスパーは、目を逸らした。
「謝罪はあなたの毛根でしてもらうわ」
言いながら頭頂部に手を伸ばそうとすると、ジャスパーは必死になって抵抗する。
「あぁ、やめて!頭頂部から髪を抜かないで、せめて生え際から!生え際からお願い!」
ジャスパーは本気で泣いていた。
「で、クラリスはどこにいると思う?」
「……多分だけど、ジークムントの後をつけていると思う。かなり関係は良かったと思うし、旅に出る時に心配してたからね」
意外な答えに少しだけ驚いた。
私のことを世界一愛しているクラリスが、まさか、ジークムントの事を気にかけるなどと思いもしなかったのだ。
「貴方もついて来るのよ」
「いや、俺この国の皇太子!いなくなったら困る!」
聞いたところによると国王は瘴気のせいで倒れているらしい。
……心が弱いからだ。本当に王族の連中はなんでこんなにもメンタルが弱いのか信じられない。
ジャスパーが抵抗するが知るものか。
クラリスを失踪させた責任はこの男に取らせる。
それに、ジャスパーじゃなくてもライナーでも代理はできるはずだ。
「貴方が死んだらクソ愚弟がやるから大丈夫よ!わたしがやってもいいわよ!」
「あ、自分だけは生き残れる自信があるんだ」
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「クラリスとわたしだけは、生き残る自信があるわ。ていうか、何がなんでもクラリスは守るわ」
「……」
何がなんでもクラリスと私だけは生き残ってやる。
「クラリスがいなくなったと聞いてきたんだけど」
初対面だというのに見たような気がする外見をしているのは、きっと、絵の挿絵のせいだろうか。
「……貴方、なんでピンピンしてるんですの!?」
クラウスがそこにはいたのだ。
死んでいないにしても、クラウスは体が弱くてこんなにも元気なはずなんてないのに。
「ところで、君も異邦人なのかい?」
クラウスは唐突にそんな事を聞いてきた。
異邦人とはどういう事なのか。
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