【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー

葉月

文字の大きさ
50 / 202

帰り道 ①

しおりを挟む
「瑞稀!!」

 バーはまだ営業し始めたばかりの夕暮れ時。
 街頭の光が灯るか灯らないか…、そんな時間。
 いつもの待ち合わせ場所で待っていた瑞稀のそばに、晴人が駆けてきた。

「体調、よくないのか?」

 心配そうに、晴人は瑞稀を見る。

「いえ、体調はいいのですが、今日は早く上がらせてもらったんです」

 瑞稀は笑顔で駆けてきた晴人を迎えた。

「何かあった?」

「いえ…。今日は僕がいなくてもお店が回るってことだったんです」

 これは正確には嘘ではない。
 本当は『瑞稀が抜けても、なんとかやっていける』と言うことだった。
 オーナーは晴人との話し合いは早い方が良いと、瑞稀を帰らせたのだ。

「ならよかった。瑞稀から仕事をあがったってメッセージきた時は、何かあったんじゃないかって心配したんだぞ」

 晴人は瑞稀に右手を差し出す。

「詳しく書かなくてすみません」

 そう言いながら、瑞稀は晴人と手を繋ぐ。

「俺もさっき帰ってきたところだから、夕飯何もできてなくて…。もし瑞稀の体調がよかったら、何か食べて…帰る?」

 瑞稀の体調を心配しながら晴人が言う。

本当は早く帰って、赤ちゃんの話したいけど…。

 ちらっと見た晴人の顔が、あまりにも出かけることへの期待で、キラキラしていたので、

「はい。食べて帰りたいです」

 瑞稀はそう答えた。

「本当に!?体調は大丈夫なのか?」

 ワクワクが晴人から滲み出ている。

晴人さん、可愛い。

「はい、大丈夫です」

 瑞稀は繋いでいた手を解き、晴人の腕に自分の腕を絡ませ、体を密着させる。

「じゃあ、瑞稀は何が食べたい?」

「えーっとですね…。しゃぶしゃぶが食べたいです」

「しゃぶしゃぶ?外はまだ暑いのに?」

 日が落ちると少し寒くなってきたが、半袖でも過ごせる気温。
 そんな時に、しゃぶしゃぶなんて思いもつかなかったような晴人だったが、

「冷房の効いた部屋で食べるお鍋は美味しいじゃないですか。ほら、冬に暖房の効いた部屋で食べるアイスみたいです」

 えへへと瑞稀が笑う。
 晴人が近くにいるだけで、さっきまで頭の中を占めていた悩みがなくなっていく。
 晴人との時間だけが、瑞稀を癒していく。
 
このまま時が止まればいいのに…。

「じゃあ、この近くで美味しい鍋料理の店は…」

 スマホを取り出し、晴人は検索し始める。
 最近、瑞稀の体調を心配して、出かけることを控えていたが、今日は思いもよらず日が高いうちに二人で出かけられて、晴人は嬉しそうだ。

「晴人さん…可愛い…」

 気落ちが口から突いて出てしまった。
 しまった!と口を抑えたが、もう遅い。

「瑞稀の方が可愛いよ」

 晴人は瑞稀の額にキスをする。

「晴人さん、外ではダメです!」

 額を抑えながら、瑞稀が頬を膨らませ、晴人を下から睨むと、

!!!

 晴人は体をかがめ、今度は瑞稀の唇にキスをする。

「晴人さん!外ではダメです!」

 もう一度キスをされまいと、瑞稀は晴人の唇を自分の手で覆う。

「大丈夫。誰も見てないって。それに見られていたとしても、夕方だから、よく見えないって」

 口を塞いでいた瑞稀の手を晴人はそっと退け、微笑んだ。

そういう問題じゃ…。

 本当に目撃者はいないのか?瑞稀があたりを見回すと…。

「ねぇママ。さっき背の高いかっこいいお兄ちゃんが、あの兄ちゃんにキスしてたよ」

 無邪気に母親に話す、幼稚園児ぐらいの女の子と目があった。

「あ!キスしてたお兄ちゃん」

 指を刺されて、顔から火が出るかと思うくらい赤面する。
 そして瑞稀に向かって満面の笑みで手を振る女の子に、恥ずかしさから顔を引き攣らた笑顔を向け、瑞稀は手を振り返した。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで

るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。 「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」 記憶を失ったベータの少年・ユリス。 彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。 封じられた記憶。 拭いきれない心の傷。 噛み合わない言葉と、すれ違う想い。 謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、 ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。 触れたいのに、触れられない。 心を開けば、過去が崩れてしまう。 それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。 ――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。 過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。 許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。 孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。 これは、ふたりの愛の物語であると同時に、 誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。 運命に抗うのは、誰か。 未来を選ぶのは、誰なのか。 優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。

オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる

虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。 滅びかけた未来。 最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。 「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。 けれど。 血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。 冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。 それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。 終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。 命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

白銀オメガに草原で愛を

phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。 己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。 「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」 「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」 キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。 無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ ※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています

処理中です...