74 / 105
瑠璃色の部屋 ②
しおりを挟む
次に気がついたのは、泣いたまま眠ってしまっていたのか、あたりが薄暗くなりだした頃だった。
部屋の中には灯りはなく、うっすらあたりの様子が見えるほど。
ゆっくりと目を開き、ぼやける視界に目を凝らすと、僕の顔を覗き込み髪を掬い上げながら、髪にキスを落とす人影がある。
「サイモン?」
小さな声で語りかけるが、人影は僕を通りこし、別のものを見ているようで何も聞こえていない。
もう一度問いかけようとした時、サイモンはオリバー家の領土に帰って、もうここにはいいない、という真実をお思い出した。
じゃあ誰?
不審者が僕の髪にキスをしているにも関わらず、恐ろしい気持ちは全く起きない。
誰だろう?
よく顔を見ようとすると、
「ミカエル……」
苦しげなルーカス様の声がした。
「どうして、俺の前からいなくなった……」
悲痛な声と共に、僕の頬に水滴が落ちる。
「手紙では言い過ぎた。反省している。許してほしい」
「……」
「もうあんなことは書かない。だからお願いだ。俺のことを嫌いにならないでくれ……」
ぽたぽたとルーカス様の涙が頬に落ちてくる。
ああ、ルーカス様は僕を通してミカに語りかけている。
ルーカス様はミカの死を、まだ受け入れられていない。
ミカに出したあの手紙のことを、後悔されている。
今僕ができること。
それは……。
僕は上半身を起こし、ルーカス様の首に腕を回す。
「ルーカス」
語りかけると、ルーカス様がハッと息をのむ。
「手紙のこと、僕は怒ってないよ」
「本当……にか?」
「うん。だから謝らなくていいし、目には見えなくても僕はいつもルーカスの側にいる。だって僕たち友達でしょ?」
「友達……」
ルーカス様は一瞬遠い目をしてから、
「そうだな。大切な友達だ」
悲しげに微笑まれた。
「この部屋、僕のために作ってくれた部屋でしょ?」
「ああ、気にいるといいんだが……」
こちらの様子を伺うように、ルーカス様がミカだと思っている僕の方をチラリと見る。
「僕の大好きな青をたくさん使ってくれて、とっても嬉しかったし、お気に入りの部屋だよ。ルーカス、本当にありがとう」
そういうと先ほどまで悲しげだったルーカス様の顔が綻ぶ。
僕はルーカス様を抱きしめる腕に力を入れた。
「仲直りの印に、今日はルーカスが眠るまで僕が膝枕してあげる。だからルーカスの部屋に行こう」
その続きに
「あ、でも変なことは絶対にしないでね」
と付け加えると、ルーカス様は頬を真っ赤にして、
「俺がそんなこと、するかよ!」
と恥ずかしがりながら怒った。
その姿が、とても可愛らしくて……。
僕はルーカス様の手を引き部屋に行くと、ルーカス様が深い眠りにつくまで、膝枕をしながら艶やかな金色の髪を撫で続けた。
部屋の中には灯りはなく、うっすらあたりの様子が見えるほど。
ゆっくりと目を開き、ぼやける視界に目を凝らすと、僕の顔を覗き込み髪を掬い上げながら、髪にキスを落とす人影がある。
「サイモン?」
小さな声で語りかけるが、人影は僕を通りこし、別のものを見ているようで何も聞こえていない。
もう一度問いかけようとした時、サイモンはオリバー家の領土に帰って、もうここにはいいない、という真実をお思い出した。
じゃあ誰?
不審者が僕の髪にキスをしているにも関わらず、恐ろしい気持ちは全く起きない。
誰だろう?
よく顔を見ようとすると、
「ミカエル……」
苦しげなルーカス様の声がした。
「どうして、俺の前からいなくなった……」
悲痛な声と共に、僕の頬に水滴が落ちる。
「手紙では言い過ぎた。反省している。許してほしい」
「……」
「もうあんなことは書かない。だからお願いだ。俺のことを嫌いにならないでくれ……」
ぽたぽたとルーカス様の涙が頬に落ちてくる。
ああ、ルーカス様は僕を通してミカに語りかけている。
ルーカス様はミカの死を、まだ受け入れられていない。
ミカに出したあの手紙のことを、後悔されている。
今僕ができること。
それは……。
僕は上半身を起こし、ルーカス様の首に腕を回す。
「ルーカス」
語りかけると、ルーカス様がハッと息をのむ。
「手紙のこと、僕は怒ってないよ」
「本当……にか?」
「うん。だから謝らなくていいし、目には見えなくても僕はいつもルーカスの側にいる。だって僕たち友達でしょ?」
「友達……」
ルーカス様は一瞬遠い目をしてから、
「そうだな。大切な友達だ」
悲しげに微笑まれた。
「この部屋、僕のために作ってくれた部屋でしょ?」
「ああ、気にいるといいんだが……」
こちらの様子を伺うように、ルーカス様がミカだと思っている僕の方をチラリと見る。
「僕の大好きな青をたくさん使ってくれて、とっても嬉しかったし、お気に入りの部屋だよ。ルーカス、本当にありがとう」
そういうと先ほどまで悲しげだったルーカス様の顔が綻ぶ。
僕はルーカス様を抱きしめる腕に力を入れた。
「仲直りの印に、今日はルーカスが眠るまで僕が膝枕してあげる。だからルーカスの部屋に行こう」
その続きに
「あ、でも変なことは絶対にしないでね」
と付け加えると、ルーカス様は頬を真っ赤にして、
「俺がそんなこと、するかよ!」
と恥ずかしがりながら怒った。
その姿が、とても可愛らしくて……。
僕はルーカス様の手を引き部屋に行くと、ルーカス様が深い眠りにつくまで、膝枕をしながら艶やかな金色の髪を撫で続けた。
20
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間
華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。
もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。
だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。
だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。
子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。
アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ
●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。
●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。
●Rシーンには※つけてます。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。
するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。
だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。
過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。
ところが、ひょんなことから再会してしまう。
しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。
「今度は、もう離さないから」
「お願いだから、僕にもう近づかないで…」
βな俺は王太子に愛されてΩとなる
ふき
BL
王太子ユリウスの“運命”として幼い時から共にいるルカ。
けれど彼は、Ωではなくβだった。
それを知るのは、ユリウスただ一人。
真実を知りながら二人は、穏やかで、誰にも触れられない日々を過ごす。
だが、王太子としての責務が二人の運命を軋ませていく。
偽りとも言える関係の中で、それでも手を離さなかったのは――
愛か、執着か。
※性描写あり
※独自オメガバース設定あり
※ビッチングあり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる