【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

文字の大きさ
75 / 105

噂 ①

しおりを挟む
 翌日もその次の日も、あの晩あったことなんてなかったように、ルーカス様は僕のことを「お前」と呼び、まともに顔も見ないようにしていた。
 多分ルーカス様の中で、あの夜のことは夢だとされていると思う。

 僕はそれでいい。
 現実では会えないミカだけれど、夢の中でミカに思いを伝えられたと思えば、少しは気持ちが楽になるかと思うから。

 ルーカス様が僕の部屋に訪れることはなく、部屋の外に出てもいいとも言われない。
 侍女も食事を持ってくる時と、湯浴みの湯を用意する時以外、僕の部屋には寄りつかない。基本的な生活はできるので、それだけで感謝している。

 けれど、時々僕に聞こえるように廊下で色々な話をしていく。
 その話の大半が、僕に対しての冷たい視線と噂話。

「レオナルド様って、流行病の高熱で自分のことを『ミカエル様』だと思っていたみたいだけど、本当なのかしら?」
「え~そんなの違うわよ」
「どう違うの?」
「きっと活発で美しいミカエル様に嫉妬して、流行病をいい口実になりかわろうとしていたんじゃない?」
「え~、そうなの!?」
「そうに決まってる。それしか考えられない」
「それにミカエル様に成り代われば、あのサイモン様と結婚できるのよ。こんないいことないじゃない」
「本当にそうね。レオナルド様ってか弱そうな顔して、本当は怖い人なのね」
「本当よ、私達も騙されないようにしないとね」
 毎日、こんな話が繰り広げられている。

 ミカエルになりたいと思ったことも、流行病でミカエルとして生きていくのを選んだのも、サイモンと結婚したいと思ったことも真実。
 どれも本当のことだから、何も言い返せない。
 心の中でミカとサイモンに謝ることしかできなかった。


「レオナルド様、今日も残されるのですか?」
 侍女が呆れ顔で、僕がほとんど手をつけていない昼食を下げる。

「食欲がなくて」
 食材を作ってくれた人にも、僕のために食事を作ってくれた人にも、運んでくれた人にも申し訳ない。

「お腹が空いても食べられない人が、大勢いるんですよ。それを考えたことがありますか?」
「それは……」
 世の中にはお腹いっぱい食べられない人は、大勢いる。
 そんな中、僕はなんて酷いことをしているんだ。

「それに私達も暇じゃないんです。仕事が山積みなんです。そんな中、食べもしないレオナルド様の食事を運び、残飯をとりにくるんです。すごく手間なんです」
「ごめんな、さい……」
「はぁ~。謝れば何とかなると思われるお貴族様は、ホントに困るんです」
 そう言われて、申し訳なさで潰されそうになる。

「じゃあ、何と何だったら食べられるんですか?」
 黙りこくる僕に侍女は問いかける。
「どう言う意味?」
「いつも残されるんだったら、食べられる食事だけお持ちすれば残飯も減ります」
 ああ、そういうことか……。
「パンとスープさえあれば……」
「パンとスープですね。では夕食からメニューを変更してもらえるように、シェフに伝えておきます」
 そういい、侍女は部屋を出た。
しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

処理中です...