【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

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噂 ②

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 宮殿に来て一ヶ月ぐらい経った頃より、僕の食欲はどんどん減ってきて、最近では殆ど食べられなくなってきていた。

 だから侍女に叱られるのも仕方ない。
 僕はここでも厄介者だ。食べさせてもらえるだけでもありがたいと思わないと……。
 以前は少しだけでも、僕の部屋をのぞいてくださっていたルーカス様も、最近はめっきり来られない。  

 部屋に生けられていた青い花は、早々に枯れてしまい、自室は僕ができる範囲で毎日掃除はしているけれど、美しく清潔だった部屋の中は少しずつ埃が溜まり、シーツのシワが目立つようになってきた。

 下着は清潔だけれど、服はあまり手入れしてくれず、新しい服なんて全く入ってこない。
 なぜルーカス様が僕を妃に選ばれたのか?
 もし僕への罰なら、もっと酷い罰があるはずなのに……。

 大きな窓から、園庭を見る。
 太陽の光を浴び、美しく成長していく草花。 

 少しでいいから、あの庭に出て、花の香りを楽しみたい。
 花に水やりをしたい。
 木々の間にできた木漏れ日で、一人たたずんでいたい。

 ミカもそう思っていたの?

 外は素晴らしく美しいのに、出られない悲しさ。
 ミカは小さい頃から、その悲しさと戦っていたの?

 ごめんねミカ。
 僕がもっと早く気がついてあげられていたら……。
 いつかミカが眠るお墓に行けたら、ミカが大好きな青い花をたくさん持っていくよ。
 ミカが大好きだった本も持って行って、一緒に読もう。

 木漏れ日はどう持って行こうか?
 大きな木は持ち歩けないし……。
 こんな時は、物知りなサイモンに聞けば、いい案を教えて……。 

 そう思った時、優しく微笑むサイモンの顔が思い出される。
 できるだけ思い出さないようにしていたのに、いろいろな場面で、ふと思い出してしまう。

 サイモンは元気だろうか?
 こんなに噂が飛び交う宮廷内でも、サイモンの噂話は聞こえない。
 サイモンのあの優しい笑顔に会いたい。
 熱い眼差し、愛おしげにキスをしてくれる時の唇の柔らかさ。
 求められる時に瞳の奥に見え隠れする、獣のような視線。
 甘えるように後から抱きしめられた時の、温もり。
 繋いだ手から伝わる体温……。

 全てが懐かしくて、全て自分で壊してしまったもの。
 サイモンが恋しい……。
 でもそんなことを思ってはいけない。
 だって僕はルーカス様の妃になる。
 帝国のため。人々のため。僕ができることをしていくんだ。

 僕の役目はルーカス様を支えること。
 あの夜、僕に見せたルーカス様の心の痛みを、僕が少しでも癒せるように、どんなことがあっても……。
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