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瑠璃色の部屋 ②

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 次に気がついたのは、泣いたまま眠ってしまっていたのか、あたりが薄暗くなりだした頃だった。

 部屋の中には灯りはなく、うっすらあたりの様子が見えるほど。
 ゆっくりと目を開き、ぼやける視界に目を凝らすと、僕の顔を覗き込み髪を掬い上げながら、髪にキスを落とす人影がある。

「サイモン?」
 小さな声で語りかけるが、人影は僕を通りこし、別のものを見ているようで何も聞こえていない。
 もう一度問いかけようとした時、サイモンはオリバー家の領土に帰って、もうここにはいいない、という真実をお思い出した。

 じゃあ誰?

 不審者が僕の髪にキスをしているにも関わらず、恐ろしい気持ちは全く起きない。
 誰だろう?
 よく顔を見ようとすると、
「ミカエル……」
 苦しげなルーカス様の声がした。

「どうして、俺の前からいなくなった……」
 悲痛な声と共に、僕の頬に水滴が落ちる。
「手紙では言い過ぎた。反省している。許してほしい」
「……」
「もうあんなことは書かない。だからお願いだ。俺のことを嫌いにならないでくれ……」
 ぽたぽたとルーカス様の涙が頬に落ちてくる。

 ああ、ルーカス様は僕を通してミカに語りかけている。
 ルーカス様はミカの死を、まだ受け入れられていない。
 ミカに出したあの手紙のことを、後悔されている。
 今僕ができること。
 それは……。

 僕は上半身を起こし、ルーカス様の首に腕を回す。
「ルーカス」 
 語りかけると、ルーカス様がハッと息をのむ。

「手紙のこと、僕は怒ってないよ」
「本当……にか?」
「うん。だから謝らなくていいし、目には見えなくても僕はいつもルーカスの側にいる。だって僕たち友達でしょ?」
「友達……」
 ルーカス様は一瞬遠い目をしてから、
「そうだな。大切な友達だ」
 悲しげに微笑まれた。

「この部屋、僕のために作ってくれた部屋でしょ?」
「ああ、気にいるといいんだが……」
 こちらの様子を伺うように、ルーカス様がミカだと思っている僕の方をチラリと見る。

「僕の大好きな青をたくさん使ってくれて、とっても嬉しかったし、お気に入りの部屋だよ。ルーカス、本当にありがとう」
 そういうと先ほどまで悲しげだったルーカス様の顔が綻ぶ。
 僕はルーカス様を抱きしめる腕に力を入れた。

「仲直りの印に、今日はルーカスが眠るまで僕が膝枕してあげる。だからルーカスの部屋に行こう」
 その続きに
「あ、でも変なことは絶対にしないでね」
 と付け加えると、ルーカス様は頬を真っ赤にして、
「俺がそんなこと、するかよ!」
 と恥ずかしがりながら怒った。

 その姿が、とても可愛らしくて……。
 僕はルーカス様の手を引き部屋に行くと、ルーカス様が深い眠りにつくまで、膝枕をしながら艶やかな金色の髪を撫で続けた。
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