【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

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許さない! ①

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 エマが来てから、僕の体調は良くなっていった。
 まだ言葉はでないしエマの前だけだけれど、小さな声で笑えるようになってきた。意地悪な侍女達に出くわさないか怖くて自室から出られないけれど、ルーカス様が僕の部屋に訪れてくださり、一緒に食卓を囲めるようにもなってきた。
 ルーカス様も「最近笑顔が増えたな」と嬉しそうに言ってくださり、僕も嬉しかった。
 赤ちゃんのことを考えると胸が苦しくなるけれど、少しずつ以前のような生活に戻りたいと思っていた。
 なのに……。

 !!
 朝食後、エマが僕の部屋にやってきた時、エマの頬は真っ赤に腫れていた。
ーエマ、その顔どうしたの!?ー
 僕はエマに駆け寄り頬の腫れを見ると、人の手型の形に腫れている。
ー誰にぶたれたの?ー
 視線を逸らすエマと視線が合うように、エマの顔を覗き込む。
「これぐらい大丈夫です」
 エマは少し困ったように笑って見せた。
ーこんなに腫れてそんなはずないよー
 頬の腫れに手を伸ばそうとすると、エマがビクリと肩を上下し目を瞑る。
 こんなに怖がって大丈夫なわけがない!
ー誰にされたの?ー
 心の中で言う。いつものエマなら僕の心がお見通しのように答えてくれるのに、今日は答えてくれない。
ー誰にされたの?ー
「……」
 黙ったままエマは視線を伏せる。
 許さない。僕の大切なエマにこんな事をするなんて!
 僕の大切な人達を傷つける奴は許さない。
 エマにこんな事をした犯人を、絶対に見つけてやる。
 僕の中から怒りが込み上げる。
ー誰がしたの?ー
 もう一度聞いてみたが、何も答えてくれなかった。
ーエマ、僕が思っている事に気付かないふりをするんだねー
 わかった。じゃあ、本当に聞こえるようにしてあげる。
 僕は胃の辺りに全身の力をこめる。そしてそこから力を喉にあげていく。
 力が喉を通り喉仏を通り、口の中に集まってくる。
 今日こそ声を出してやる!
 口をパクパクさせたが声は出ない。
 いつもならここでやめてしまうけれど、今日はやめない。
 また口をパクパクさせる。
 口から空気が抜ける感じがした。
 この感じは、笑った時声が出る時と同じだ!
 出る!声は出る。僕の言葉は出るはず!
 体全体に空気が入るように大きく息を吸い込み、力一杯空気を吐き出すと同時に喉仏に気を集中させた。
「あーーーーっ!」
 大きな声が出た。
 目を伏せていたエマが顔を上げ、目を見開く。
 出せた!大きな声が出た!できる!僕はできる!話せる!話せるんだ!
「誰に……された、の?エマ、答えな…さい」
 途切れ途切れだが、聞きたいことは聞けた。
 エマが答えるまで、僕は一歩の引かないよ。
 強い視線をエマにぶつける。
「……侍女の、サラです」
 エマがポツリと言った。
 侍女のサラ。僕のことを無視して、赤ちゃんが産まれてこなくてよかったといった侍女。
 もう許さない。
 あんなに開けるのが怖かった自室のドアを勢いよく開けて、侍女が集まる調理場に向かう。
「レオナルド様、私は大丈夫です。大丈夫です」
 僕の後ろからエマが追いかけてくる。
 そんな訳ないし、僕が許せない。
 怒りで足が速くなる。
ーバンッ!ー
 ノックもなしに調理場のドアを開ける。

「サラは、どこ?」
 全く話さなかった僕が言葉を発し、調理場にいた使用人が一斉に僕を見た。
「サラ、出てきなさい」
 低い声が出た。
「はい」
 部屋の中央からサラが前に進み出た。
「エマをぶったって?」
「はい」
 サラは反省するどころか、僕を挑戦的に睨みつける。
「歯、食いしばって」
「え?」
 サラがなぜ歯を食いしばるのかわかる前に、
ーパンッ!ー
 調理場に乾いた音がした。
「なっ!」
 サラは床に倒れ、僕にぶたれた頬を押さえる。
「僕の気持ちが変わる前に、ここから出ていきなさい。さもないと……」
 僕がそう言った時、
「何事だ」
 ルーカス様が調理場にやって来られた。
 サラ以外の使用人達は同時にルーカス様に頭を下げる。
 ルーカス様は僕が床に倒れたサラを睨みつけながら仁王立ちしてたところを見て、何かあったと察されたようで、僕とサラの顔を見た。
「エマ、何があった?」
 いつも僕の気持ちを通訳していたエマに、ルーカス様が聞く。
「実は……」
「サラがエマをぶったのです」
 エマが話す前に、僕が言った。
「!!」
 僕が話た途端、ルーカス様は息を呑む。
「だからエマの代わりに、僕がサラをぶちました」
 今まで話せなかったのが嘘みたいに、スラスラ言葉が出た。
「お前の返答次第では今までのこと、ルーカス様にここでこれまでの話をしてもいいんだよ。サラ、気持ちは決まった?」
 僕はギロリとサラを睨みつける。
「はい……。出ていきます……」
 サラは腰を抜かし震える。
「わかった」
 そう言ってから、
「サラ、身の程をわきまえて、人の痛みを知りなさい」
 立ったまま僕は、怯えるサラを上から見下ろした。
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