完 誰と誰が真実の愛に目覚めたって?

水鳥楓椛

文字の大きさ
7 / 9

世界最大の商会ルカの末っ子

しおりを挟む
「で?あの赤女はどうなりそうなの?」
「赤女って、グレン殿………、………………スカーレット殿下なら国王陛下に縋っていたよ。国王陛下はどうにかしようとしていたけれど、スカーレット殿下を傀儡にして利を得ようとしていた貴族たちにすら見放されたスカーレット殿下は、立ち直ることすら不可能だろうね」
「はっ、当然の報いだ」

 グレンのきらきらした笑みに、オリヴァーは背筋が凍りつくのを感じながらも、未だにグレンの肩を濡らし続けているシャーリーに最大の敬意をこめて、膝を床につき、頭を垂れた。

「ルカ・シャーリーさま。此度のご支援、誠に感謝しております。この御恩は必ずや」
「………………わ、我がルカ商会との、ずびっ、お取り引きを早急にお取り付けいただけると、ずびっ、嬉しいですわ」
「あぁ、分かった。明日にでも書面にしよう」
「ずびっ、よろしくお願いいたします」

 世界最大級の商会を営むルカ家の息女らしい言葉に、オリヴァーは厳かに頷く。

 ルカ商会を敵に回すことは即ち、世界中の商会を敵に回すことに等しい。
 よって、商会の溺愛されている末娘シャーリーの取る一挙手一投足大国の王並みの注目と責任が伴う。

 そんなシャーリーが、先程スカーレットの向かい「もう永遠に出会わないことを願っているわ」と言ったのだ。
 つまり、王太子であったスカーレットに向かい、世界中全ての商いの権限を持っていると言っても過言ではないルカ家が、「2度と表舞台に出てくるな」と言ったのだ。

「まぁ、ご安心ください。グレン殿、シャーリーさま。シャーリーさまがああ言ってしまった時点で、我が国の王侯貴族たちには抗う術などないという訳ですよ」

 肩をすくめたオリヴァーに、シャーリーが「うゃぁぁぁああああ!!」という変な奇声を上げながら、グレンの肩に額を打ち付けた。

「恥ずかしいっ!恥ずかしすぎるわっ!!私如きが何さまっていうお話よねっ!?あぁ!どうしましょう!!どうしましょうっ!!」
「えぇーっと………、」
「あぁ、気にしないで、オリヴァー殿。シャーリーはシャイなだけだから。今更ながらに、自分の格好つけた姿が恥ずかしくて死にそうなんだよ。ほんっと、可愛いよねぇ」

 ぎゅうぅーっとシャーリーの身体を抱きしめたグレンは、にこりと微笑む。
 それからしばらく、色気の全くない話し合いを行なった2組のカップルは、各々の婚約者を連れ自らの部屋に帰って行き、婚約者をベタベタに甘やかしたとかなんとか———。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【短編】将来の王太子妃が婚約破棄をされました。宣言した相手は聖女と王太子。あれ何やら二人の様子がおかしい……

しろねこ。
恋愛
「婚約破棄させてもらうわね!」 そう言われたのは銀髪青眼のすらりとした美女だ。 魔法が使えないものの、王太子妃教育も受けている彼女だが、その言葉をうけて見に見えて顔色が悪くなった。 「アリス様、冗談は止してください」 震える声でそう言うも、アリスの呼びかけで場が一変する。 「冗談ではありません、エリック様ぁ」 甘えた声を出し呼んだのは、この国の王太子だ。 彼もまた同様に婚約破棄を謳い、皆の前で発表する。 「王太子と聖女が結婚するのは当然だろ?」 この国の伝承で、建国の際に王太子の手助けをした聖女は平民の出でありながら王太子と結婚をし、後の王妃となっている。 聖女は治癒と癒やしの魔法を持ち、他にも魔物を退けられる力があるという。 魔法を使えないレナンとは大違いだ。 それ故に聖女と認められたアリスは、王太子であるエリックの妻になる! というのだが…… 「これは何の余興でしょう? エリック様に似ている方まで用意して」 そう言うレナンの顔色はかなり悪い。 この状況をまともに受け止めたくないようだ。 そんな彼女を支えるようにして控えていた護衛騎士は寄り添った。 彼女の気持ちまでも守るかのように。 ハピエン、ご都合主義、両思いが大好きです。 同名キャラで様々な話を書いています。 話により立場や家名が変わりますが、基本の性格は変わりません。 お気に入りのキャラ達の、色々なシチュエーションの話がみたくてこのような形式で書いています。 中編くらいで前後の模様を書けたら書きたいです(^^) カクヨムさんでも掲載中。

あなたの罪はいくつかしら?

碓氷雅
恋愛
 公爵令嬢はとある夜会で婚約破棄を言い渡される。  非常識なだけの男ならば許容範囲、しかしあまたの罪を犯していたとは。 「あなたの罪はいくつかしら?」 ・・・ 認証不要とのことでしたので感想欄には公開しておりませんが、誤字を指摘していただきありがとうございます。注意深く見直しているつもりですがどうしても見落としはあるようで、本当に助かっております。 この場で感謝申し上げます。

安息を求めた婚約破棄

あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。 そして新たな婚約者は私の妹。 衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。 そう全ては計画通り。 これで全てから解放される。 ……けれども事はそう上手くいかなくて。 そんな令嬢のとあるお話です。 ※なろうでも投稿しております。

婚約破棄?から大公様に見初められて~誤解だと今更いっても知りません!~

琴葉悠
恋愛
ストーリャ国の王子エピカ・ストーリャの婚約者ペルラ・ジェンマは彼が大嫌いだった。 自由が欲しい、妃教育はもううんざり、笑顔を取り繕うのも嫌! しかし周囲が婚約破棄を許してくれない中、ペルラは、エピカが見知らぬ女性と一緒に夜会の別室に入るのを見かけた。 「婚約破棄」の文字が浮かび、別室に飛び込み、エピカをただせば言葉を濁す。 ペルラは思いの丈をぶちまけ、夜会から飛び出すとそこで運命の出会いをする──

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

22時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

婚約破棄からの復讐~私を捨てたことを後悔してください

satomi
恋愛
私、公爵令嬢のフィオナ=バークレイはアールディクス王国の第2王子、ルード様と婚約をしていましたが、かなりの大規模な夜会で婚約破棄を宣言されました。ルード様の母君(ご実家?)が切望しての婚約だったはずですが?その夜会で、私はキョウディッシュ王国の王太子殿下から婚約を打診されました。 私としては、婚約を破棄された時点でキズモノとなったわけで、隣国王太子殿下からの婚約話は魅力的です。さらに、王太子殿下は私がルード殿下に復讐する手助けをしてくれるようで…

第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください!

黒うさぎ
恋愛
公爵令嬢であるレイシアは、第一王子であるロイスの婚約者である。 しかし、ロイスはレイシアを邪険に扱うだけでなく、男爵令嬢であるメリーに入れ込んでいた。 レイシアにとって心安らぐのは、王城の庭園で第二王子であるリンドと語らう時間だけだった。 そんなある日、ついにロイスとの関係が終わりを迎える。 「レイシア、貴様との婚約を破棄する!」 第一王子は男爵令嬢にご執心なようなので、国は私と第二王子にお任せください! 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。

最難関の婚約破棄

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
婚約破棄を言い渡した伯爵令息の詰んでる未来。

処理中です...