オネエな幼馴染と男嫌いな私

麻竹

文字の大きさ
8 / 35

しおりを挟む
あれは確か、庭に連れて行かれた時の事だった。
ジュリアスはあろう事か、嫌がるヴィヴィアーナに無理矢理木登りをさせてきたのだった。
そして案の定、ヴィヴィアーナは木から落ちてしまい、数週間生死の境を彷徨う事になったのであった。

その他にも、魚を見ようと連れて行かれた池で、覗き込んだ拍子に突き落とされたりもした。

ジュリアスのお陰で、散々な目に合っていたヴィヴィアーナであったが、極めつけはジュリアスの誕生日の時であった。

その日ヴィヴィアーナは、ジュリアスに誕生日プレゼントは何が欲しいのか聞いてみたのだ。
するとジュリアスは、ボソボソと呟いた後いきなり顔が近づいてきたかと思ったら、口を塞がれてしまい窒息させられそうになてしまったのであった。

その事がきっかけで、ヴィヴィアーナはジュリアスを怖がるようになってしまったのだった。
そして気付いた時には、男性恐怖症になってしまっていたのである。
そのお陰で外に出る事を極端に嫌がるようになり、社交にも影響が出てしまった。
しかし、家族たちの渾身的な看病と兄の協力を得て、なんとか社交は最低限熟せるようになったのだが……。

――それなのにこいつは、いつもこうやって嫌な事を思い出させようとしてくるのよね!

ヴィヴィアーナは、こちらを見ながらニヤニヤしている婚約者を忌々しそうに見上げたのであった。

「ま、そんなへったくそな物、誰も欲しがらないでしょうから、あたしが貰ってってあげるわ!」

ヴィヴィアーナが睨んでいると、ジュリアスは出来上がったばかりの刺繍を何故か、ひったくってきたのであった。

「ちょっと、あげるなんて言ってないわよ!」

ヴィヴィアーナは、目を吊り上げながらジュリアスに抗議する。

「また作る口実が出来て有難いでしょ~。じゃ~ね~♪」

しかし、そんなヴィヴィアーナの怒りも何処吹く風と、ジュリアスは刺繍の入ったハンカチをサッと懐に仕舞うと、逃げるように行ってしまったのであった。

そんな婚約者に、ヴィヴィアーナは悔しそうに歯軋りする。

「もう、来るな~!!」

と、去って行く背中に向かって叫んでいたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】2人の幼馴染が私を離しません

ユユ
恋愛
優しい幼馴染とは婚約出来なかった。 私に残されたのは幼馴染という立場だけ。 代わりにもう一人の幼馴染は 相変わらず私のことが大嫌いなくせに 付き纏う。 八つ当たりからの大人の関係に 困惑する令嬢の話。 * 作り話です * 大人の表現は最小限 * 執筆中のため、文字数は定まらず  念のため長編設定にします * 暇つぶしにどうぞ

花言葉は「私のものになって」

岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。) そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。 その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。 美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。 青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない

百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。 幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。 ※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。

たろ
恋愛
幼馴染のロード。 学校を卒業してロードは村から街へ。 街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。 ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。 なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。 ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。 それも女避けのための(仮)の恋人に。 そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。 ダリアは、静かに身を引く決意をして……… ★ 短編から長編に変更させていただきます。 すみません。いつものように話が長くなってしまいました。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

処理中です...